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失われた“日本の美しい風景”を、作家・藤沢周平の作品に導かれて訪ね歩く。

藤沢周平 心の風景

藤沢周平/著、佐藤賢一/著、山本一力/著、八尾坂弘喜/著

1,512円(税込)

本の仕様

発売日:2005/09/22

読み仮名 フジサワシュウヘイココロノフウケイ
シリーズ名 とんぼの本
発行形態 書籍
判型 A5判
頁数 119ページ
ISBN 978-4-10-602136-7
C-CODE 0395
ジャンル 文芸作品、文学賞受賞作家、ノンフィクション
定価 1,512円

「生まれた田舎の風景がいいことをエッセイばかりか、こっそりと小説の中にまで書き散らして」と語る作家は、故郷・鶴岡を海坂藩として作中世界に昇華させた。作家の「原風景」は読者を魅了し、憧憬の念さえ寄せられている。その魅力の秘密を探しながら、ヴィジュアルに藤沢ワールドに迫る。名作『蝉しぐれ』を歩く旅案内付。

著者プロフィール

藤沢周平 フジサワ・シュウヘイ

(1927-1997)山形県生れ。山形師範卒業後、結核を発病。上京して五年間の闘病生活をおくる。1971(昭和46)年、「溟い海」でオール讀物新人賞を、1973年、「暗殺の年輪」で直木賞を受賞。時代小説作家として、武家もの、市井ものから、歴史小説、伝記小説まで幅広く活躍。『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』、『白き瓶』(吉川英治賞)、『市塵』(芸術選奨文部大臣賞)など、作品多数。

佐藤賢一 サトウ・ケンイチ

1968(昭和43)年、山形県鶴岡市生れ。東北大学大学院でフランス中世史を専攻する。1993(平成5)年、『ジャガーになった男』で、小説すばる新人賞を受賞。1999年、『王妃の離婚』で直木賞を受賞する。ヨーロッパを舞台とした作品で注目を集めたが、近年は日本を舞台とした歴史小説も発表し、活躍の場を広げている。『傭兵ピエール』『双頭の鷲』『二人のガスコン』『オクシタニア』『カポネ』『女信長』『新徴組』『象牙色の賢者』『黒王妃』、「小説フランス革命」シリーズなど、多数の著書がある。

山本一力 ヤマモト・イチリキ

1948(昭和23)年高知県生れ。東京都立世田谷工業高校電子科卒業後、様々な職を経て、1997(平成9)年『蒼龍』でオール讀物新人賞を受賞してデビュー。2002年、『あかね空』で直木賞を受賞。著書に『損料屋喜八郎始末控え』、『欅しぐれ』、『だいこん』、『銭売り賽蔵』、『かんじき飛脚』、『銀しゃり』、『研ぎ師太吉』、『いすゞ鳴る』『人情屋横丁』『くじら組』『八つ花ごよみ』『おたふく』『べんけい飛脚』『千両かんばん』『紅けむり』他多数。

八尾坂弘喜 ヤオサカ・ヒロキ

1951年北海道生れ。1974年東京綜合写真専門学校研究科中退。1984年鶴岡市にてスタジオ「写真工芸やおさか」開設。2003年庄内ゆかりの作家50人をテーマにした写真展「文学のある風景」発表。

目次


藤沢周平生家跡近くから眺める残照の月山と月


はたはたの湯上げ。『三屋清左衛門残日録』で紹介されている


朝の田園風景。奥の金峯山のふもとが藤沢周平が生まれた高坂あたり
グラフ
鶴岡・海坂の四季
文 藤沢周平 撮影 八尾坂弘喜

金峯山は母なる山 藤沢周平
グラフ
古写真に見る鶴ヶ岡城
海坂ミクロコスモス論 佐藤賢一
名作『蝉しぐれ』を歩く
たとえば、橋ものがたり 山本一力

担当編集者のひとこと

藤沢周平 心の風景

 先人の書いたものにひかれて旅に出ることは、ままあることでしょう。〈とんぼの本〉シリーズでも『奥の細道を歩く』があり、現代の作家によるものでは『白洲正子と楽しむ旅』などがあり、『近江路散歩』は司馬遼太郎氏の次の一節に出会わなかったら、はじまらなかったかもしれません。「下り列車が関ケ原盆地をすぎ、近江の野がひらけてくると、胸の中でシャボン玉が舞いあがってゆくようにうれしくなってしまう」(『街道をゆく』)
 私が、藤沢周平氏の故郷・鶴岡へ思いをはせるようになったのは、いつ、どの作品、どの場面からかは、さだかではないのですが、『蝉しぐれ』の冒頭、主人公・文四郎の眼前にひろがる朝の田園風景にひかれたのかもしれません。そして、はじめて訪れたそこは、空が高く、その下にたんぼが豊かにひろがっており、類稀な穀倉地帯を実感しました。
 鶴岡に通い出してから幾度目かの早朝のことでした。寝坊助の私の部屋を、この世の終りとも思えるような轟音と振動がおそいました。とびおきましたが、何が何だかわかりません。窓を打つ雨の音に、日本一の雷多発地帯といわれ、「雷サミット」なるものが毎年開催されている鶴岡が実感されたというわけです。と同時に、ここの風景の秘密がとけた気がしました。今まで横のひろがりばかりにひかれていましたが、その中に垂直のひろがりがかくされていたのです。詳述できませんが、本書中の旅案内の記「名作『蝉しぐれ』を歩く」を出羽三山で終りにしようと考えるようになったのも、この朝ゆえでした。



国宝の羽黒山五重塔

2016/04/27

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