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熱球から始まったこの星はどのように冷え、いかにして生物は生まれたのか?

地球の履歴書

大河内直彦/著

1,296円(税込)

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発売日:2015/09/25

読み仮名 チキュウノリレキショ
シリーズ名 新潮選書
雑誌から生まれた本 考える人から生まれた本
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 220ページ
ISBN 978-4-10-603776-4
C-CODE 0344
ジャンル 地球科学・エコロジー
定価 1,296円
電子書籍 価格 1,037円
電子書籍 配信開始日 2016/03/11

科学の発達とともに、私たちは少しずつ地球の生い立ちを解明してきた。戦争や探検、数学の進歩や技術革新などのおかげで、未知の自然現象の謎は氷解したのだ。海面や海底、地層、地下、南極、塩や石油などを通して地球46億年の歴史を8つのストーリーで描く。講談社科学出版賞受賞のサイエンティストによる意欲作。

著者プロフィール

大河内直彦 オオコウチ・ナオヒコ

1966(昭和41)年、京都市生まれ。海洋研究開発機構生物地球化学研究分野・分野長。東京大学大学院博士課程修了。京都大学、北海道大学、米国ウッズホール海洋研究所などを経て、現職。著書に『チェンジング・ブルー―気候変動の謎に迫る―』(岩波現代文庫、講談社科学出版賞受賞)、『「地球のからくり」に挑む』(新潮新書)などがある。

書評

本物の知がここにある

成毛眞

 著者の大河内直彦さんは海洋研究開発機構生物地球化学部門のリーダーであり、この分野では日本を代表する科学者の一人だ。そのかたわら気候変動や地球科学に関するポピュラーサイエンス、すなわち科学読み物の作家としても出版界では注目が集まっていた。気候変動の謎に迫った『チェンジング・ブルー』が硬派な大部であるにもかかわらず、非常に評価が高かったからだ。
 現役の科学者の本分はもちろん研究そのものであろう。科学読み物などを書いても「科学業界的」に評価されることは少ないはずだ。現役の経営者がテレビのバラエティ番組に出演しただけで、虚業と非難されることと似ているかもしれない。しかし、それでもなお、著者は現代社会を形作ってきた原動力の風景、すなわち科学の現状と背景をおさらいしてみたいと思い、本書の執筆にとりかかったという。
 熱心な大河内直彦ファンとしては、じつに複雑な心持ちだ。なによりも本業の研究をしてもらいたい。しかし、あの流麗だが平易な文章、俯瞰と凝視を織り交ぜた視点、そして品格のある科学読み物も読みたい。ともかく、寝ないでもいいから仕事をしてもらいたい。ここにその我々の願いが結実したというわけだ。
 本書はタイトルのまま、地球の履歴書である。全八章にわたって地球の誕生から、いま日本人がもっとも気にかけている地震の予知などまで、縦横無尽に語り尽くしている。著者にとってはエッセイを書いたつもりなのだろうが、一般の読み手にとっては最良の地球科学の入門書でもある。
 ところで、入門書を書く極意とは読者の関心をかきたて続けることにある。モチベーションのある読者にとっても、論文調の文章ではやがて飽きてしまう。映画のように場面をタイミングよく転換しながら、ときにはモンタージュの技法も入れて、謎ときのための伏線も張って、大団円に導いていくことが必要だ。そのためには、読者が思いもよらない薀蓄も放り込まなければならない。
 本書からその一例を見てみよう。「地下からの手紙」と見出しが付けられた第八章の冒頭は「有馬温泉の不思議」というセクションだ。有馬温泉に不思議なんてあるのか? と逆に不思議に思う読者も多いだろう。しかし、本書ではその何が不思議かを説明する前に、なんと『日本書紀』から舒明天皇と孝徳天皇が有馬温泉を訪れたこと、さらに豊臣秀吉が有馬温泉で茶会を開いたという話が登場するのだ。
 第八章まで読み進めてきた読者は、ここで「ははーん」と思うはずだ。この話題はこの先どこかにリンクするはずなのだ。しかし、この段階では仕掛けがぜんぜん判らない。先に進もう。じつは有馬温泉は泉温が九〇度を超える、非常に高温な温泉だということ。しかも周囲には火山がないこと、しかも千年以上にわたってこの状態が保たれているという稀有な存在なのだということが説明される。ここでやっと冒頭の日本書紀が再登場することになる。
 もちろんこの何が不思議かという説明だけでセクションが終わるわけはない。ここからがその理由であるウラン238の崩壊からはじまる連鎖的な放射壊変、その過程の産物であるラジウムとラドンなどについて語られる。なるほど、全国にちらばるラドン温泉というのはそういう意味だったのかと膝を叩く向きもいよう。
 さらに第八章では「地震の前兆と予知」「玉川毒水」「ニオス湖の悲劇」と続いていく。その過程では、地震の前兆とラドン濃度の異常、田沢湖の人為的な栄枯盛衰、そしてなんとさかなクンが発見したクニマスにまで話題がおよぶ。しかし、そのすべては有機的につながっていて、読者はけっして飽きることはない。
 それにしても最後の話題である「ニオス湖の悲劇」はまったく知らなかった。一九八六年カメルーンで発生した、きわめて珍しいが反復して発生する自然現象のことだ。この時には一七〇〇人もの人が亡くなっている。この驚くべき現象は「湖水爆発」というらしい。日、米、仏、カメルーン共同の科学者チームが特殊な装置を設置したので、これからは安心らしい。どんな激烈な現象で、なぜどのように発生するかについては本書を読まれたい。193ページから200ページまでなので、立ち読みでも大丈夫だ。しかし、立ち読みをしたら最後、間違いなくレジに持っていくであろうから、ムダな抵抗だと断言しておこう。
 大河内作品に共通するのは多くの科学者による、長年にわたる研究の積み重ねへのリスペクトだ。本物の知はそこにある。

(なるけ・まこと 書評サイト〈HONZ〉代表)
波 2015年10月号より

目次

まえがき
第一章 How Deep is the Ocean?
地球創世記/海の広さを知る/永遠に失われた知/先人の足跡/海の深さを知る
第二章 謎を解く鍵は海底に落ちていた
ソナーの登場/海山の謎/ダーウィンとサンゴ礁/地球の表面はジグソーパズル/時代を先取りしすぎた研究/沈む海底
第三章 海底が見える時代
救世主現る/現代のトレジャー・ハンティング/海底に潜む巨大火山/巨大噴火の影響
第四章 秋吉台、ミケランジェロ、石油
白亜の時代/淀んだ海の黒いヘドロ/頁岩から燃料を造る/地球を揺るがす大惨事/温暖化した世界/白亜の終焉
第五章 南極の不思議
神秘の大陸/さまよえる湖、南極編/ライバルたちの大陸/探検家の行く末/新しい時代へ
第六章 海が陸と出会う場所
移ろう海面/生き物が集うホットスポット/氷河時代が過ぎ去って/ノアの洪水/街に隠れた海面変動/人類の足跡
第七章 塩の惑星
戦争や革命も/塩を採る/海の塩/干上がった地中海/死海と塩/塩と生きる
第八章 地下からの手紙
有馬温泉の不思議/地震の前兆と予知/玉川毒水/ニオス湖の悲劇
おわりに
注および引用文献

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