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神武天皇はなぜ、こんな髪型をしているのか?

日本神話はいかに描かれてきたか―近代国家が求めたイメージ―

及川智早/著

1,296円(税込)

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発売日:2017/10/27

読み仮名 ニホンシンワハイカニエガカレテキタカキンダイコッカガモトメタイメージ
シリーズ名 新潮選書
装幀 駒井哲郎/シンボルマーク、新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 222ページ
ISBN 978-4-10-603817-4
C-CODE 0395
ジャンル 宗教
定価 1,296円

明治維新後、天皇による支配の正統性を周知させるべく、『古事記』『日本書紀』がさまざまに図像化されていった。イザナキ・イザナミ神の国生みから、ヤマタノヲロチ退治やイナバのシロウサギ譚、神武天皇、神功皇后の雄姿まで、原典から逸脱・変容しつつも巷にあふれたイメージ群に、「近代日本」の心性と目論見を探る。

著者プロフィール

及川智早 オイカワ・チハヤ

1959年、岩手県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。2017年10月現在、帝塚山学院大学教授。古事記学会理事、上代文学会理事、大正イマジュリィ学会常任委員。専門は日本神話や古代説話及びその受容史。主な論文に「『古事記』底本の変遷―本居宣長『訂正古訓古事記』から真福寺本古事記へ」(『国文学研究』第137集)、「死の起源説明神話における木花之佐久夜毘売と石長比売」(古事記学会編『古事記の神々 上』高科書店)などがある。

書評

驚きの神話図像コレクション

五月女ケイ子

 9年前に、古事記をマンガ化させていただきました。決しておしゃべりではない古事記ですが、その分、人々の想像を膨らませ、文学的にも歴史学的にも様々な説があります。生半可な気持ちじゃできないぞと、受験勉強のようにノートを取り、取捨選択につぐ取捨選択。そして、どうしても埋まらない行間に、現代人にも通じる感情と裏テーマを付け足す作業。気づけば3年たちました。
 もしその時に『日本神話はいかに描かれてきたか―近代国家が求めたイメージ―』を読んでいたら、描く絵が変わっていたと思います。この本は、様々な日本神話の図像を紹介しながら、なぜ近代に神話が重用されて行ったかを紐解きます。イザナキ・イザナミが婚礼博覧会のキャラクターになり、天浮橋はジオラマに、スサノオの絵葉書、神功皇后がパッケージになった婦人病の薬など、神話が、ずっと身近な存在だったことにトキメキました。その盛り上がりは、明治以降の天皇権強化のためだったのです。
 私のマンガ『レッツ!!古事記』はタイトルでお分かりのように、政治的意図は全くありませんが、古事記を広めたいという想いは同じでした。古事記大好きな女子編集者の「若者に古事記を読んで欲しい」との願いから、全力で若者に受けようと描きました。イザナミが腐った姿でパンツを畳み荷造りしたり、黄泉醜女よもつしこめ をヒョウ柄のおばちゃん風にしたり、絵に現代の要素をちりばめたのは、若者の心を掴みたかったからです。
 みづら(耳の横で長い髪を8の字に結ぶ古代の髪型)フェチの編集者の要望で、男の登場人物はみづらで統一しました。ただ同じに見えてしまうので北大路欣也のようにこめかみだけ白髪にしたり、リボンをつけたり、頭頂部を薄くしたり、こちらも現代風にアレンジしました。神様といえばこれという印象の髪型ですが、浸透したのはやはり明治以降だったそうです。「戦い」と「文明化」の象徴として、それまで埋もれていた初代神武天皇が、みづら姿でスポットを浴びたそう。
 掲載されている図像の中でも特に、ワニに乗ったウサギの絵は、インパクトといい神話とのミスマッチ感といい、素晴らしくて、描かなかったことを後悔しました。おなじみの神話「因幡の白うさぎ」に出てくるサメは、古事記の原本では「ワニ」とあり、東南アジアの似た説話にワニが出てくるという説と、昔サメをワニと呼んだという説があります。私が見た絵本ではいつもサメでしたが、それが明治の流れを汲んだ刷り込みだったとは……。ただ、とにかく、ワニのモチーフとしてのポテンシャルに心奪われました。著者の、龍のような想像上の生物としてのワニ説に、すごく納得です。
 近代の神話図像の背景を知り、新たな共感が芽生えました。クライアントの意図、人々を惹きつけるインパクト、純粋に描きたい気持ち。近代の絵師も絵に、色々な想いを詰めこんだのだな。
 そして、著者の研究が「パズドラ」にまで及んでいることにも深く感動しました。いつか拙著も研究対象にしていただけたら、とても光栄です。

(そおとめ・けいこ イラストレーター)
波 2017年11月号より

目次

はじめに
第一章 結婚式の神となったイザナキとイザナミ
日本の神話は変容する/図像化の時代/夫婦道の創造者/大正の婚礼博覧会/天の浮橋の闖入者/セキレイに託されたものとは/神前結婚式という「発明」/定型化から原典回帰へ/様々なる交合伝授
第二章 ヤマタノヲロチ退治の演出法
退治されるのはヲロチか龍か/櫛にならないクシナダヒメ/童女と化すスサノヲ神/角の生えた蛇という伝統/なぜ酒の容器は水中にあるのか
第三章 「ワニ」とはなにをさすのか
日本にもワニはいた/「記紀」のワニたち/爬虫類の鰐として/魚類の鮫として/国定教科書による刷り込み/鰐説の逆襲/戦後のワニ解釈/近代的合理主義を超える存在態
第四章 サルタヒコとアメノウズメは夫婦神か
天孫降臨神話での出会い/魔的な神サルタヒコ/なぜ矛を持つのか/海辺の主役交代/越境するサルタヒコ神/夫婦和合のめでたい図像/排除された性神
第五章 つくられた神武天皇
天皇家は誰を祖先として祀ってきたか/神武顕彰の流れ/一九〇〇年の「ジンムテンノー」/定まらぬ髪型/明治三十年代の変化と定着/埴輪による復元/戦いの象徴としての「みづら」/文化装置としての「みづら」
第六章 戦う英雄、神功皇后
韓国併合と武装の皇后/女性の髪型か、男性の髪型か/弓を持つ姿はどこからきたか/赤子のいる風景/元寇が生む新たな物語/安産の象徴としての役割/脇役から主役へ
終章 そして漂白の現代へ
神話が現実と重なったとき/江戸と近代での享受の違い/現代の日本神話の活況

あとがき

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