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「最期まで自宅で」――そのために私たちができること。日野原重明氏推薦。

聖路加病院訪問看護科―11人のナースたち―

上原善広/著

734円(税込)

本の仕様

発売日:2007/05/17

読み仮名 セイロカビョウインホウモンカンゴカジュウイチニンノナースタチ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 190ページ
ISBN 978-4-10-610215-8
C-CODE 0247
整理番号 215
ジャンル 科学
定価 734円
電子書籍 価格 648円
電子書籍 配信開始日 2011/12/28

たった一人で患者宅を訪れ、医療行為から生活面のケアまで全てをこなす「訪問看護師」。在宅介護や在宅死が大きな注目を集め需要が高まる中、その数は急速に増えつつある。そうした数ある訪問看護ステーションの中でも最先端を走るのが聖路加病院だ。11人のナースたちが昼夜を問わず飛び回る。終末期医療から難病の小児まで――「よりよく生きることとは何か」に正面から向き合う彼女たちの等身大の姿を描く。

著者プロフィール

上原善広 ウエハラ・ヨシヒロ

1973(昭和48)年、大阪府生まれ。大阪体育大学卒業後、ノンフィション作家となる。2010(平成22)年、『日本の路地を旅する』(文春文庫)で大宅壮一ノンフィクション賞受賞。2012年、第18回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞大賞受賞。2017年、『一投に賭ける 溝口和洋、最後の無頼派アスリート』(角川書店)で第27回ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。主な著書に『異邦人 世界の辺境を旅する』(文春文庫)、『被差別の食卓』『被差別のグルメ』『異形の日本人』(いずれも新潮新書)、『私家版 差別語辞典』(新潮選書)、『発掘狂騒史「岩宿」から「神の手」まで』(新潮文庫)、『カナダ 歴史街道をゆく』(文藝春秋)など多数。

ブログ「全身ノンフィクション作家」 (外部リンク)

目次

プロローグ
第一章 訪問看護師という仕事
新人では務まらぬ/八〇歳の母が看る中年息子/ある朝の光景/専属医師のいない科/院内であったトラブル/訪問先でのプレッシャー/退院はない、終わりは死だけ/クレーマー患者との対決/唯一の男性看護師/訪問中に遭った交通事故/障害者の性の問題/七年目看護師の努力/一六〇人の患者を抱え
第二章 カリスマ・ナース
「まるでホステスみたい」/話しているようで引き出す会話術/落第寸前、遊び回っていた学生時代/いじめに耐え切れず脱走/転機となった最初の訪問患者/「一番ハードなところに回してください」/六年目の“出戻り”/独立した科として採算を取れ!/院内での営業活動/押川の「最大のライバル」/対照的な聖路加と淀キリ/必要なのは「センス」
第三章 忘れられないケース・ファイル
四十代母の“癒しの子”/呼吸器を着けた「寅さん」/寝室のバイオリニスト/卵焼き職人夫婦の老老介護
第四章 家で死ぬということ
「最後まで自宅で」/「墓も葬式もいらない」/親の死を前にして何ができるのか/実父を看取った押川の迷い/三〇年にわたる両親のターミナル・ケア/ステーションの立ち上げ/地域格差と課題/最期の時まで、よりよく生きる
あとがき
参考文献

インタビュー/対談/エッセイ

波 2007年6月号より 「日常での死」を見つめる訪問看護の現場  上原善広『聖路加病院訪問看護科―11人のナースたち―』

上原善広

 私は二十代の頃からものを書き、発表してきた。そして周囲の迷惑をかえりみずに自分の興味あることだけを書いてきた。しかし本書を書き終えて、今さらだけれども、どうも自分が興味本位だけで書いてきただけではないようだと、感じている。
 処女作であり、新潮新書での第一冊目でもある『被差別の食卓』は、被差別部落のことについて触れた本だ。私はただ、自分の興味の赴くままその本を書いたのだと思っていた。
 しかし、ここ最近の被差別部落の問題というのは、直接的な差別が少なくなり、あやふやになってきていた。そして同和利権のからむ事件報道により、図らずもこの種の問題に対するタブーも緩やかになった。現在、部落問題というものが過渡期にあることに間違いはないだろう。
 そんなときに出したのが『被差別の食卓』であった。これも時機というか、いま思えば自分の興味だけでない、時代の何かが拘っていたのだろう。
 そして今回の『聖路加病院訪問看護科』である。テーマががらりと変わったように思われるかもしれないが、書き手としての私の中では、人の生き死にというのは、避けられないテーマとしていつも心にあったものだ。
 大学を出てから、人の生き死にの現場に行きたくて、海外のいくつかの紛争地に出かけていた。しかしやがて、非日常的な戦場での生き死にを取り上げるよりも、日本にあるすぐ隣の日常的な生き死にこそ、切実で大事な問題なのではないかと思うようになった。日本語で文章を書いているのだからもっと早く気づけば良いのだが、三三歳になったいま、ようやくそんなことに思い至ったのだった。
 そんなとき、偶然にも聖路加病院の訪問看護師と出会うことになった。そして在宅介護や、自宅での死をみとるための医療分野として、いま訪問看護が注目されていることを知った。高齢化社会が、すでに到来していたという背景もある。
 日常での死をテーマとしたかった私は、こうして訪問看護の取材を始めた。テーマとしたかった人の生き死にと、医療ルポで取り上げられることの少ない看護師について書きたかった結果が、本書であった。
 しかしよく考えてみると、訪問看護師との出会い、そして高齢化社会の到来がなかったら、本書を書き上げることはできなかった。そもそも聖路加病院で一九九二年に訪問看護科が発足したのも、高齢化社会を見越してのことだった。
 だから本書を書き上げてみると、いままで好き勝手にやりたいことばかりやっていたようでも、その時代、時代というものに、自分は強く惹きつけられていたのだということに気づかされる。
 だから今は、書きたいことを書くことがそう悪くはないような気がしている。



(うえはら・よしひろ ノンフィクション・ライター)

蘊蓄倉庫

日本における訪問看護のパイオニア

 日本においていわゆる訪問看護師という存在がきちんと制度化されたのは、案外最近のことです。1992年の老人保健法改正で老人訪問看護制度が作られたのに端を発します。それが今や、在宅介護や在宅死が大きな注目を集める中、需要は急速に高まり、07年春現在、全国にある訪問看護ステーションは約5700、訪問看護師の数も約3万人にも上るとか。これは看護師全体の4%に当たる数字です。
 聖路加病院に訪問看護科が正式に作られたのも、この制度化に伴う92年のことでした。ただ実質上は、それよりもずっと以前から訪問看護活動を行っていたのです。何と関東大震災から4年後の1927(昭和2)年にはもう始められていました。もともと米国の宣教医師によって設立された聖路加では、そのキリスト教精神に基づき組織的な家庭訪問看護を積極的に行っていたのです。いわば日本における訪問看護のパイオニア的存在といっていいでしょう。

掲載:2007年5月25日

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