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凍った地球―スノーボールアースと生命進化の物語―
田近英一

地球はかつて、現代の温暖化とは比較にならないほどの気候変動を経験した。中でも、数百万年にわたり凍りついていたという「全球凍結仮説」は最も衝撃的だ。厳寒がもたらしたものとは? 大気の変化、温暖化プロセス、プレートテクトニクス、太陽の影響、生物進化など、様々な角度から、コペルニクス以来の大仮説が証明されていく。

ISBN:978-4-10-603625-5 発売日:2009/01/23

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凍った地球―スノーボールアースと生命進化の物語―


 かつて地球の表面は完全に氷で覆われていたという驚くべき事実が、ここ十年で明らかになってきた。地球上の生命は、海があり温暖な気候を持つ地球というゆりかごに育まれてきた、というこれまでの地球史観は崩れ去り、生命は大絶滅の危機に瀕するきわめて過酷な試練を何度も強いられてきた、と考えざるを得なくなってきたのである。
 一方で、生命の進化も、こうした地球全体の凍結イベントと深い関わりを持っていたらしいことが分かってきた。私たちがいまここに存在している理由も、地球が凍りついたことと密接な関係にあるかも知れないのだ。
 本書は、この「スノーボールアース仮説」(全球凍結仮説)の成立とそれがもたらした新しい地球史観を分かりやすく紹介することを意図して書いた。
 私たち人類はいま、地球温暖化という目の前の問題に対処するため、国際社会の協調による温室効果ガスの排出削減に向けて努力している。人類活動による化石燃料の消費によって大気中の二酸化炭素濃度が増加する結果、気候の温暖化が確実視されているだけでなく、異常気象の増加や海面水位の上昇による島国や沿岸域の水没など、世界は温暖化にともなってこれから多くの困難な問題に直面することが予想されているのである。
 しかし、過去の地球においては、それを上回る破局的な地球環境変動が、さまざまな形で繰り返し生じてきたことが分かっている。たとえば、超大規模火山活動や地球外天体の大衝突、大気中の酸素濃度の増加や低下、超温暖化などだ。そうした地球環境の生い立ちと振る舞いを理解することは、地球環境の将来を考える上で、有形無形のさまざまな示唆を与えてくれるはずである。
 本書で述べる全球凍結イベントは、そのなかでも史上最大級の地球環境変動だといって過言ではない。全球凍結した地球上では、液体の水が完全に凍ってしまうため、生命が生存できなくなるはずだ。それにもかかわらず、一部の生命はそのような過酷な環境を生き延び、現在の地球上に存在するすべての生物種へと進化したことになる。はたして、生命は氷に覆われた地球上のどこでどうやって生き延びたのだろうか。
 私たち人類を含むすべての動植物の出現へとつながる真核生物の誕生や、多細胞動物の誕生は、実はこの全球凍結イベントと密接な関係にあった可能性があるらしい。だとすれば、全球凍結イベントは、たんなる気候変動ではなく、生命進化史上きわめて本質的な意味を持つ出来事だったことになる。
 さらに、地球全体が凍結するという現象は、太陽系外の惑星系に存在するであろう地球とよく似た「水惑星」に共通した性質である。ということは、全球凍結の研究は、実は、宇宙における地球のような惑星の存在とその気候状態、さらには地球外生命の存在の理解にもつながるような広がりを持っていることになる。
 地球は非常に複雑なシステムであり、ものごとの変化は必ずしも直線的には起こらない。ときには、突然大きな変化が生じたり、もとの状態にはなかなか戻れなくなったりもする。そうした地球システムの挙動を理解するためには、現在の地球を調べるだけでは不十分であり、過去の地球の振る舞いについて詳しく知ることが大事なのだ。
 過去の地球でいったい何が起こったのか。それが生命の進化とどのように結びついていたというのか。この驚くべき地球史をひもとき、明らかになってきた新しい地球史観について考えてみたい。

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