新潮新書


「お通し」はなぜ必ず出るのか―ビジネスは飲食店に学べ―
子安大輔

飲食店には製造、小売、サービス、流通等、あらゆる要素が詰まっている。飲食業はビジネスの原点なのだ。飲食店は本当に儲かるか? 立ち飲みが流行り、ジンギスカンが廃れた理由は? 成功の分かれ道、「少しのビックリ」と「少しのガッカリ」の差とは? 上場すれば成功なのか? 様々なケースを分析することで、成功するビジネスモデルが見えてきた。あらゆるビジネスに通じる「繁盛のセオリー」が明快にわかる一冊。

ISBN:978-4-10-610316-2 発売日:2009/05/18

編集者のことば 立ち読み 書評

735円(定価) 購入

波 2009年6月号より

勝ちに不思議の勝ちなし
子安大輔


 私には昔から長く通っている中華料理店があります。この店の名物は何を差し置いても餃子。ジャンボサイズの餃子は肉汁たっぷりで滅法おいしいのですが、それ以外の料理はと言うと、実は大したことはありません。それでも店はこの餃子一本で、連日大繁盛しています。
 繁盛店の中には、このような名物があるケースが多いようです。「あの居酒屋の、あの煮込み」「あの洋食屋の、あのオムライス」というように、店を代表する名物メニューがあるのです。
 ただし、名物とは必ずしも料理に限りません。「定食屋の女将の優しい接客」だったり、「バーの夜景の素晴らしさ」だったりすることもあります。
 このように、店を語る上で欠かすことのできない「名物」があるというのが、繁盛する飲食店の一つのあり方です。
 一方、それとは異なるパターンもあります。
 例えば、私が定期的に足を運ぶある居酒屋には特に名物はありません。料理はなかなかのレベル、店員の接客もまずまず、そして店内環境もそれなりに落ち着くように仕上がっています。
 この居酒屋は何かが取り立てて素晴らしいと言うわけではないのですが、総合的な魅力という点では非常にまとまっているので、ちょくちょく足を運んでしまいます。
 つまり、高いレベルで「バランス」の取れた店と言うことができるでしょう。ミシュランガイドで星を取っているような高級店の多くは、こちらのタイプに分類することができます。
 世の中の繁盛店をよく見てみると、前者のような名物がある「一点突破型」か、後者の「バランス型」のいずれかにわけることができるはずです。
 ただし、いずれのパターンも、店側が客に愛されるようにと努力を続けた結果として繁盛店になっているという点は共通しています。
 楽天イーグルスの野村克也監督が広めた名言に「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」というものがあります。
 負けに理由があるのは野球も飲食店も同じですが、飲食店においては実は全ての勝ち、すなわち「繁盛」にもきちんと理由があるのです。「たまたま流行った」ということはありません。
 勝負事においてもビジネスにおいても、連戦連勝ということは、現実的ではありません。勝率を少しでも高めていくためには、勝ち負けという結果の後ろに隠れた「理由」や「要因」をしっかりと分析して、次に繋げていくのが必要なのは言うまでもありません。
 本書では飲食業界につきものの、ブームや繁盛、そして倒産などについて、「なぜそうなるのか?」という背景を分析する「視点」を取り上げました。
 こうした「視点」をできるだけ多く獲得し、事象を複眼的・多角的に見ていくことが、日々の仕事や生活にプラスに働くものと信じています。

(こやす・だいすけ 飲食プロデューサー)


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