新潮エンターテインメント大賞



第六回新潮エンターテインメント大賞




受賞作品


「花園のサル」 神田茜



受賞のことば


含み笑いの顔を思い浮かべ
 受賞の電話をいただいたのは、浅草演芸ホールに向かう途中でした。夜席の高座があり、着物の入った鞄を抱えて電車に乗ろうとしている時でした。
 その時はただ嬉しさで舞い上がってしまい、こんなに運のいい日はきっと寄席でもウケるに違いないと勇んで高座に上がり、得意ネタを話しました。何も知らないお客様には、はしゃぎ過ぎた酔っ払いのおばさんにしか見えなかったのか、どっちらけでした。
 いかんいかん、いい年をして、いい気になるとあとでぎゃふんという目にあう。もしかしたら受賞の電話も相手を間違えたかもしれない。いたずら電話かもしれない。そうだ、夫の愛人の嫌がらせかもしれないと、何とか興奮をさまして数日過ごしました。
 新潮社に伺い、受賞が間違いないと確認してからは責任感と今後の不安とで身が縮みあがる思いでおります。
 四十数年、賞など、ましてや一等賞や大賞などはビンゴゲームでさえ当たったことはなく、まったく縁がない人生でした。むしろ運が悪いことをネタにして笑ってもらっていたくらいです。
 今回は、こんなに気弱なことでは選んでくださった三浦しをんさん、この賞に挑戦した多くの方々に失礼だと思い、授賞式に向け鏡の前で笑顔の練習をしたり、数少ない友人に報告して喜んでもらったりして現実感を養っています。


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選評


三浦しをん



候補作品


オーバードース 今葷倍正弥
花園のサル

※「女子芸人」に改題
神田茜
グリフターズ 上田未来
スクランブルトリガー 上田千尋

選考委員


三浦しをん ミウラ・シヲン

1976(昭和51)年、東京生れ。早稲田大学第一文学部卒業。2000(平成12)年、書下ろし長篇小説『格闘する者に○』でデビュー。以後、『月魚』『秘密の花園』『私が語りはじめた彼は』などの小説を発表。『乙女なげやり』『悶絶スパイラル』『ビロウな話で恐縮です日記』『あやつられ文楽鑑賞』など、エッセイ集も注目を集める。2006年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞受賞。他に小説『むかしのはなし』『風が強く吹いている』『仏果を得ず』『光』『神去なあなあ日常』『まほろ駅前番外地』『天国旅行』『木暮荘物語』などがある。

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