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受賞作品
「異郷」 津村節子
「文學界」 平成22年1月号/講談社刊『遍路みち』所収


受賞のコメント

尊敬する川端康成の名を冠した短篇小説に与えられるこの賞は、文壇の大家が受賞する賞であると思っていた。近年になって、ユニークで新鮮な才能溢れる若い女性作家が受賞するようになってきて、この賞に対する想いは遠のいていた。
電話で、賞を受けるかどうかの問い合わせがあった時、一瞬聞き違えかと思ったほどで、有難くいただきます、と返事をしてからも暫くは信じ難い思いが残っていた。十五年間も同人雑誌に短篇を書き続けてきた者にとっては、憧れの賞だったのである。
「異郷」を書いたときは、夫の死後知りびとのいない町に行って暮したいと思いつめ、周囲に気を使うこともなく、煩瑣な問題もない住み心地のよい町が気に入り、これからもずっと誰とも交流せずに暮したい、と思っていた。今思えば、あれは黄泉の国であった。


〔津村節子氏略歴〕
一九二八年福井市生まれ。学習院短大卒業。五三年に吉村昭と結婚。六四年「さい果て」で新潮同人雑誌賞、六五年「玩具」で芥川賞、九〇年「流星雨」で女流文学賞、九八年「智恵子飛ぶ」で芸術選奨文部大臣賞を受賞。

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