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★創刊30周年記念号★

新潮45 2012年5月号

(毎月18日発売)

特別定価901円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2012/04/18

発売日 2012/04/18
JANコード 4910049370520
定価 特別定価901円(税込)
★創刊30周年記念特大号★

【特集】30年前と30年後

◆ミニコミと雑誌の黄金時代/坪内祐三

◆急カーブを曲がろうとしていた 新人類&おたく誕生前夜/中森明夫

◆「本の雑誌」、あるいは酒でいっぱいの冷蔵庫/目黒考二

■■ 私の1982 ■■
・戦後政治の総決算/中曽根康弘
・「おいしい生活。」の頃/辻井喬
・臨調と「前川レポート」に奔走/加藤寛
・アメリカツアー初優勝のあの日/岡本綾子
・女王陛下と「新潮45+」/徳岡孝夫
・「視聴率100%男」の誕生/萩本欽一
・子育てと漫画に忙殺されていた/柴門ふみ
・『蒲田行進曲』が人生を変えた/風間杜夫
・14歳の中学生が一晩でスターに/堀ちえみ
・運命の扉が開かれた年/早見優
・音楽家として栄誉ある賞/外山雄三
・卒論はザミャーチン/島田雅彦
・武者震いした「タイガーマスク」/佐山サトル
・「五月みどり童貞混浴」の大反響/島地勝彦
・ニュージャパンと逆噴射を伝えた写真/田島一昌

◆世界はまだ東西冷戦の真っ直中だった/吉崎達彦

◆国鉄民営化はなぜ成功したのか/屋山太郎

◆大きく変貌した「宇宙」の形/渡部潤一

◆とうに未来を過ぎて/長山靖生

◆人間ほどデモーニッシュな存在はない/石井昻
 「新潮45」のバックボーンとなった言葉


【対談】コンパクトシティと鉄道が日本の切り札だ/藻谷浩介×宇都宮浄人

◆人口学が予測する「二つの不均衡」/鬼頭宏

◆日本人の食卓はどこまで変わるか/岩村暢子

◆原発廃炉には50年はかかる/桜井淳

◆しのびよる「インフラ崩壊」/根本祐二

◆2042・終焉を待つ奇妙な幸福国家/古市憲寿

【対談】テクノロジーへの希望と絶望/濱野智史×古市憲寿



【球春特別対談】
オレ流「プロ野球改革論」/落合博満vs.坂井保之

◆「危機」をめぐる危機/内田樹

◆戦後史の風景[第三回] 米軍基地――沖縄/武田徹

◆「東北学」第二章への道[第三回]/赤坂憲雄

【マスコミが報じない中国】
・大開発ブームに沸く国境地帯/宮崎正弘
・ギリシャ、イタリア、英国……欧州を買い漁る中国/河添恵子

◆反・自由貿易の経済史 揺らぐアメリカの信念/中野剛志

◆AIJ、オリンパスと闇社会をつなぐ「点と線」/一橋文哉

【新連載】
◆浮浪児1945――彼らはどこへ消えたか/石井光太
◆立川談志は名月である/吉川潮

◆医療ドキュメント・ノベル 消滅/里見清一

◆日本八策[第三回] 「発信者」をつくるための教育へ/茂木健一郎

◆弟宮[第八回] 天皇を先取りする弟宮の役割/竹田恒泰

◆名門と国家[第二部 第二回] 会津藩主の役どころ/徳川家広

◆お化け煙突から東京スカイツリーへ[第三回]/山口文憲
 ――下町のランドマークが見てきた昭和


◆石の虚塔[第五回] 明大文学部考古学研究室/上原善広

◆兵士は起つ[第八回]/杉山隆男

◆田老物語 巨大防潮堤と「日本の近代」[第八回]/高山文彦

◆国の死に方[第十一回] 政党テロと農業恐慌の関係/片山杜秀

◆人生の星の時間[第二十四回] 村上華岳/福田和也

◆反・幸福論[第十八回] 1980年代論/佐伯啓思

【達人対談】サメには2本のおちんちんがあった/サメの達人 仲谷一宏vs.ビートたけし

◆[扉]無音飛行/高木亮
◆地球生き物語[第8回] ミサキウマ/福田幸広

◆[巻頭随筆]風が時間を/徳岡孝夫
◆人間関係愚痴話/曽野綾子
◆閻魔堂の吹き流し/山本一力
◆右顧左眄/外山滋比古
◆だまし庵日記/野坂昭如

◆[記者匿名座談会]自民政権なら総理は誰だ?
◆おとこのるつぼ *おやじの年下婚/群ようこ
◆イマイマイズム見聞録 *創価大学オープンキャンパス/今井舞
◆[切り絵パロディ]新世界文学名作選7/高木亮

■Review■
・BOOK
・CINEMA・COMIC
[読書日記]恩田陸
[インタビュー]豊田利晃

編集長から

創刊30周年記念号にあたって

「新潮45」はこの5月号で創刊30周年を迎えます。むろん何周年などというのは作り手の勝手な思い入れであって、世間にとってはどうでもいいことかもしれません。ただ、30年はほぼ一世代が入れ替わる年月であり、リアルな集団記憶が保持されるギリギリの時間でもあります。目の前のことしか考えられなくなっている昨今だからこそ、視点を思いっきり引いて、「30年」というスパンで来し方行く末を俯瞰してみたい。そんな思いから、「30年前と30年後」という特集を組んでみました。
「30年前」編では、坪内祐三、中森明夫、目黒考二、吉崎達彦、屋山太郎の各氏らに当時の社会や文化を振り返ってもらいました。また「私の1982」と題して、総理大臣だった中曽根康弘氏をはじめ、セゾン文化を率いた辻井喬(堤清二)氏、「視聴率100%男」の異名をとった萩本欽一氏、マンガ家として人気急上昇中だった柴門ふみ氏、アイドル「花の1982年組」の早見優、堀ちえみ氏など各界の方々にご寄稿いただきました。
「30年後」編は二つの対談にご注目を。『デフレの正体』の藻谷浩介氏×『鉄道復権』の宇都宮浄人氏。『希望論』の濱野智史氏×『絶望の国の幸福な若者たち』の古市憲寿氏。いずれも射程の長い、刺激的な対談です。30年後もまだ57歳の古市氏には、「2042・終焉を待つ奇妙な幸福国家」というシミュレーション風の論考もお寄せいただいています。
 このほか人口問題やインフラ老朽化など、様々なテーマについて専門家の方々に見通してもらいました。また小誌創刊当時からの編集秘話にご興味の向きは、創刊メンバーの一人で1997年~99年に編集長を務めた石井昂の一文をご覧下さい。
 特集以外にも、ちょうど1982年当時、史上最年少の三冠王に輝いた落合博満氏、西武ライオンズの球団代表だった坂井保之氏による「球春特別対談」も本音炸裂で興味津々の内容です。内田樹氏は30年どころか100年のスパンで世界史を俯瞰し、「危機」という言葉の登場と、「危機」が氾濫する現代の危機的状況について論じて下さいました。
 表紙には1982、2012、2042という年号をあしらい、目次のデザインと本文の紙質を少し変えてみました。厚さを感じさせない366ページの特大号です。

 小誌がなぜ1982年に創刊されることになったのか、今となってはその詳しいいきさつはよくわからないのですが、特集で皆さんが言及されているように、時代が躍動していたのは確かです。日本はあの頃、大きな転換点に差し掛かっていました。
 世界的にはレーガンとサッチャーの全盛期で、東西冷戦は終わるどころか、むしろ真っ直中、プラザ合意以降の円高局面は影さえ見えなかった時代。日本では「戦後政治の総決算」を掲げて中曽根総理が登場し、自民党の政権基盤を安定させつつ、民活という改革路線に踏み出します。そうした状況のなかで、若者文化は百花繚乱、雑誌・ミニコミが続々と登場し、アニメやアイドルが知的色彩を帯び、「おたく」文化が台頭していきます(「おたく」の名付け親は中森氏!)。小劇場、漫才、女子大生、コピーライター、テクノポップ、ニューアカ……いろんなものがブームになりました。
 当時はサブカルチャーという位置づけでしたが、今日につながるこうした文化をもはや誰もサブカルチャーとは呼びません。むしろ1982年前後に登場した文化の形、思考の枠組みは大きな奔流となり、ごく当たり前のものとして浸透しているのではないでしょうか。
 個人的な回想をゆるしていただけるなら、1982年は大学入学のために東京に出てきた年でした。当時の記憶は苦さと恥ずかしさがつきまとう一方で、「確かにいろいろ面白いことがあったなあ」という気がいたします。ただ、当時は当時なりに、今とは違う閉塞感もあったように思います。その最大の要因はやはり東西冷戦構造です。少なくとも18歳の私には冷戦構造は牢固たるものに見え、世の中というのはそう簡単には変わらないだろうと思っていました。ところがこの30年で冷戦は終わり、ソ連は崩壊し、中国は経済成長を遂げ、日本では政権交替が起きたのです。
 世界史的に見れば一瞬ともいうべき、わずか30年で、世界は激変しました。日本国内でも状況は毎年のように変わり続けています。おそらくそれは、今に始まった話ではないのでしょう。「リアルな集団記憶」として継承されないだけで、世界はいつの時代も激変し続けている。言葉を換えれば、人間は本質的な部分ではほとんど学習しない、変わらないということです。
 だからやはり人間は面白いし、興味は尽きない。
 これからの30年も人間はたいして変化せず、いろんな出来事が起こり、世の中は大きく変わり続けるでしょう。「新潮45」が挑むべきテーマは、まだまだいくらでもあるということです。これからも可能な限り、時代と共に歩んでまいりたいと思います。今後ともご愛読のほど、どうぞよろしくお願いいたします。


新潮45編集長 三重博一

バックナンバー

雑誌バックナンバーの販売は「発売号」と「その前の号」のみとなります。ご了承ください。

雑誌から生まれた本

新潮45とは?

「新潮45」の創刊は1982(昭和57)年3月で、創刊当初は「新潮45+」(シンチョウヨンジュウゴプラス)という誌名でした。その名の示すとおり、もともとは45歳以上の中高年層を読者対象に想定した雑誌であり、新潮社にとっては初の総合雑誌への挑戦でもありました。
 3年後の1985年より「+」が取れて、誌名は現在の「新潮45」に変わります。内容も「日記と伝記」を軸にした新たな教養雑誌へとリニューアル。以来、その時々の編集部の方針によってノンフィクションや事件への志向が強まったり、独自の言論に力点を置いたり、誌面は変わり続けてきました。
 しかし、一つだけ変わらない「芯」のようなものがこの雑誌にはあります。
 それは「人の生き死に」について考えるということです。
 扱うテーマや素材は、政治経済から殺人事件、芸能スキャンダルやスポーツ・ドキュメントに至るまで多岐にわたります。叙述の仕方も、論考あり、エッセイあり、重厚なノンフィクションありとさまざまです。けれども雑誌の真ん中には、尽きることのない「人間への関心」がある。
これからも「新潮45」は変わり続けるでしょう。時代に向き合いながら、新しいテーマに挑み、表現の幅も広がっていく。しかし、その「芯」の部分は変わりません。ネットの時代になっても、いやネットの時代だからこそ、「新潮45」は「人間」を書き続けていきます。

 ちょっと危険で、深くて、スリリング。
 死角を突き、誰も言わないことを言い、人の生き死にを考える。
 一度読むとクセになるような「毒にも薬にもなる雑誌」。
 
「新潮45」はそんな雑誌であり続けたいと思っています。

雑誌主催・共催・発表誌の文学賞