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親愛なるどうぶつたちへ。きみたちみんなをぼくの家に招待します。……でも、誰も来なくてもだいじょうぶです。

ハリネズミの願い

トーン・テレヘン/著、長山さき/訳

1,404円(税込)

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発売日:2016/06/30

読み仮名 ハリネズミノネガイ
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 174ページ
ISBN 978-4-10-506991-9
C-CODE 0097
ジャンル 文芸作品、評論・文学研究
定価 1,404円
電子書籍 価格 1,404円
電子書籍 配信開始日 2017/03/24

ある日、自分のハリが大嫌いで、つきあいの苦手なハリネズミが、誰かを招待しようと思いたつ。さっそく招待状を書き始めるが、手紙を送る勇気が出ない。もしクマがきたら? カエルがきたら? フクロウがきたら? ――臆病で気難しいハリネズミに友だちはできるのか? オランダで最も敬愛される作家による大人のための物語。

どういう本?

タイトロジー
(タイトルの意味)
「ハリネズミの願い」は、他のどうぶつたちが彼の家に遊びにきてくれること、のはずですが、でも来てほしいのか、来てほしくないのか……その心の中は単純ではないようです。
メイキング トーン・テレヘンが日本で初めて紹介されたのは2000年に刊行された『だれも死なない』。谷川俊太郎さんが絶賛なさったこの本は、残念ながら絶版に。2013年、この本を「発見」して心を奪われたある女性が、翻訳者の長山さきさんに連絡をしたことから、長山さんと著者のテレヘンさんが再会。本書刊行のきっかけとなりました。
装幀 いかにも内気そうな、ちょっと上目使いでこちらをじっと見ているハリネズミは、祖敷大輔さんが描いてくださった日本版オリジナル。本文にも、手紙を書くハリネズミのほか、ハチミツの瓶を手にした食いしん坊のクマ、テーブルの上の椅子の上のゾウ、歌うナイチンゲールなど12枚の挿絵が。
反響 「取り越し苦労の天才、ハリネズミ君。とても他人とは思えない」とコメントを寄せてくださった小川洋子さんをはじめ、多くの書店員さんから、「ページのあちこちにわたし自身を発見しました」「昔のわたしにそっくり。少しばかり痛いけれど、とても優しい寓話です」など、共感の声が寄せられています。

著者プロフィール

トーン・テレヘン Tellegen,Toon

1941年、医師の父とロシア生まれの母のもと、オランダ南部の島に誕生。ユトレヒト大学で医学を修め、ケニアでマサイ族の医師を務めたのちアムステルダムで開業医に。1984年、幼い娘のために書いた動物たちの物語『一日もかかさずに』を刊行。以後、動物を主人公とする本を50作以上発表し、国内外の文学賞を多数受賞。取材嫌いでメディアにほとんど登場しないが、オランダ出版界と読者の敬愛を一身に集めている。『ハリネズミの願い』は大人のための〈どうぶつたちの小説〉シリーズの一冊。

長山さき ナガヤマ・サキ

1963年神戸生まれ。芦屋で育つ。関西学院大学大学院修士課程修了。文化人類学を学ぶ。1987年、オランダ政府奨学生としてライデン大学に留学。以後オランダに暮らし、現在アムステルダム在住。訳書にトーン・テレヘン『だれも死なない』、ハリー・ムリシュ『天国の発見』『過程』、ヘールト・マック『ヨーロッパの100年』、ディミトリ・フェルフルスト『残念な日々』、ウィレム・ユーケス『よい旅を』、マリット・テルンクヴィスト他『おねえちゃんにあった夜』ほか。

インタビュー/対談/エッセイ

ハリネズミの孤独
特集[トーン・テレヘン『ハリネズミの願い』]

トーン・テレヘン

親愛なるどうぶつたちへ
キミたちみんなをぼくの家に招待します。
……でも、だれも来なくてもだいじょうぶです。
オランダでもっとも敬愛される作家による
深い孤独によりそう本。
イラストレーション・祖敷大輔


撮影 Gerdjan van der Lugt
通訳・翻訳 Saki Nagayama
取材・構成 Rieko Sugai(Shinchosha)
取材協力 Gusto di Casto


ハリネズミは、聖人でも世捨て人でもないふつうのひと。
トーン・テレヘン


『ハリネズミの願い』の主人公は寂しがりやで気むずかしく、自分のハリが大嫌いなハリネズミ。
だれかにあそびに来てほしい、でもやっぱりだれにも来てほしくない――。
頭のなかは、どうぶつたちのオソロシイ訪問でいっぱい……。


 メディアにほとんど登場しないトーン・テレヘンは、自宅から待ちあわせのカフェまで、頑丈そうな黒い自転車に乗ってやってきました。一八〇センチを越す長身に、内気そうな笑顔。アムステルダムの五月は、運河沿いや街路など、街じゅうの楡の新緑が空に映える、もっとも美しい季節です。

――『ハリネズミの願い』がどんなふうにできあがったかうかがうまえに、まず、子ども時代のお話を聞かせていただけますか。
 父は医者で、母はロシア生まれの人でした。祖父の代からロシアに暮らし、ロシア革命の翌年の一九一八年、一家でオランダに引きあげてきた。祖父は沈鬱な人でした。ずっとロシアに帰りたがっていた。でも結局、帰ることはできませんでした。
 祖父母の家にはサモワール(ロシア式の金属の給茶器)もありましたよ。子ども時代、家族でハーグに住んでいたころは、チェーホフなどロシア演劇を上演する劇団がいくつもあって、よくうちのサモワールが舞台にのぼっていたものです(笑)。
――あなたのハリネズミは、お客さんを紅茶でもてなしますね。オランダ人はコーヒーが好きなのにとちょっと不思議だったんです。
 考えたこともなかったけれど、そういえば書きはじめたときから紅茶でした。
――お生まれになったのは、オランダ南部のフォールネ・プッテン島という島ですね。
 一九四五年の夏、三歳半のとき、祖母に連れられてはじめて島を出ました。はじめて電車に乗って、北部に住む叔父夫妻を訪ねたんです。近くに森や沼地があって、アリ塚を探したり、カエルを取ったり。はじめて食べたヨーグルトや祖母と運河のほとりで摘んだブラックベリー……戦時中は食糧事情が悪かったからでしょうね、なんておいしいんだろうと思いました。夜、ベッドに横になっていると、ガタンゴトンと電車の音が聞こえてくる。あの夏の記憶は、いまでも宝物です。

――子どものころから本がお好きでしたか。
 同居していた父方の祖母が本を読んでくれましたが、二人の兄や近所の子どもたちともっぱらサッカーばかりしていました。でも十三、四歳になると、ロシア文学など外国文学をたくさん読むようになりました。
 とくに好きな作家は、チェーホフ、ドストエフスキー、ゴーリキー、ジョイス、ダンテ、フローベールスタンダール、イギリスでは……きりがないですね(笑)。詩はとりわけカヴァフィスとペソア。
 学生時代には鈴木大拙の『禅』も読みました。ぼくはいつでも不条理なこと、奇妙でふつうではない事柄に惹かれてきました。禅もそのなかのひとつだった。
 日本文学では、大江川端三島遠藤周作……ちょうど『ハリネズミの願い』を書いていたとき、オランダ語訳の『源氏物語』を読みました。これまで読んだなかでもっともすばらしい一冊です。源氏が書かれたころ、オランダの国はまだ存在すらしていなかったんですよ。

消え去りたい

――学生時代、医師になるか作家になるか迷われませんでしたか。
 いいえ。十四、五歳のころ、消え去りたいと強く思っていたんです。死ぬのではなく、消え去りたい、アフリカや南アメリカへ行ったきり帰ってきたくないと。医者を志した第一の理由は、じつは遠くへ行ける仕事だったからです。二十八歳のとき、医療不足の地域に医師を派遣する組織を通じてケニアに赴任しました。外科と産婦人科の医師として、妻と息子もいっしょに。娘はナイロビで生まれたんですよ。
――医師と作家を何十年もつづけてこられたのはどんな経験でしたか。
 うーん、ぼくはいつでも第一に医者でした。まず家庭医の仕事があって、執筆は夜やバカンスのときだけ。自分のことを作家だと思ったことはなかった。ひとに職業を聞かれると、医者と答えていました。
――小さかった娘さんに「おはなし! おはなし!」とねだられてつくった物語が、創作の原点だそうですね。
 そう、夜、寝るまえとか、車でどこかに行くときにねだられて、その場で考える。走りだしたときにはじまって、目的地に着いたらぴたりと終わる(笑)。一九八〇年に出た詩集がぼくのはじめての本なのですが、その二年後、バカンスのあいだにどうぶつたちの物語をたくさん書いたと編集者に話したら、出版されることになったんです。ケリド社は児童書の出版社でもありますから。翌年のバカンスでもどうぶつの話をまた書いて、そんなふうにしてこれまでつづいてきました。



手紙のいいところは、書いても出版されないところ。
つじつまがあっていようがいまいが関係ない。
急に話題を変えてもかまわない。



――大人向けの本も書かれていますね。『パブロフスクとオーストフォールネ行きの電車』は、ロシアを懐かしむ祖父から聞いたお話という体裁。
 ぼく自身とても好きな本です。これは特別な方法で書かれた本なんですよ。一九九八年頃、フランス中部の村でバカンスを過ごしたとき、仲のいい作家の友人ケースト・ヘト・ハルト宛の手紙に祖父の話を書きました。バカンスははじまったばかりだったから、あとでまたつづきを書こう、と思った。結局、三週間のバカンスのあいだに、この本のなかの話をぜんぶ書いてしまった。ペン書きでね。
 書き終えた分厚い手紙を郵送するとき、なくならないか急に心配になって、村役場のコピー機を借りてコピーしました。一時間半くらいかかったよ(笑)。それから、オリジナルの手紙のほうを友人に送りました。
――手紙というかたちを使って作品を書くというのが面白いですね。
 ハリネズミもしょっちゅう手紙を書いてるでしょう?
――書くけど、出しません(笑)。
 そうだね(笑)。ほかのどうぶつたちも、ぼく自身も、たくさん手紙を書く。手紙のいいところは、書いても出版されないところ。つじつまがあっていようがいまいが関係ない。急に話題を変えてもかまわない。
――『パブロフスク……』を書いていたとき、本になるとは思っていなかったのですか。
 少なくとも最初は思っていなかった。どうぶつたちの話も、本にするために書いているのではなく、カレンダーにするために書いてるんだ。まあ、本になるんだけど(笑)。
――週めくりカレンダーですね。一枚に一章分のお話があって、下のほうに日にちと曜日。上の二つの穴に赤と白の凧糸を通して結んである。
 ぼくがぜんぶひとりでコピーして、ひとりで綴じてるんだよ! それを毎年、ケリド社の人たちや友人たちに贈るんです。

怒りは不必要な悪?

――ハリネズミは、内気で自信がなく、ああなったら、こうなったら、とよけいな心配ばかりしています。身につまされる人は多いと思いますが、オランダにもこういう人はたくさんいますか。
 アムステルダム以外の人はそうだと思う。ヨーロッパでは、パリ、アントワープ、アムステルダムなど都会の人は田舎の人より自信があるんです。ぼくはアムステルダム出身じゃないからよくわからないけど(笑)。
――どうぶつたちにまじって、突然、ことばがハリネズミの家をたずねてきたりしますね。「いまは」と「まだ」と「ずっと」がダンスをしたり。
 そんなふうになるのは、ぼくが詩も書いているからだと思う。詩を書くときには、ぼくはいっそう自由になる……散文を書くときよりずっと自由です。
――何度か登場するアリが、「怒りは不必要な悪だ」と言います。ハリネズミは、ゾウに家具をつぶされても、せっかくつくったケーキをみんなにまずいと言われても、ロブスターにハリを抜かれて穴だらけにされても、涙は流すけれど怒らない。
 そう、ハリネズミは怒らない。でもアリは怒ることがある。ぼくは怒らない、と自分で言う人は、ほんとうは怒る人だよ(笑)。「不必要な悪だ」とアリは言うけれど、このonnoodzakelijk という言葉は、とても変なオランダ語なんです。「それは必要な悪だ」と言うことはあっても、「不必要な悪」だなんて。
――「フクザツ」な性格のアリらしいですね。
 リスも怒らない。ほかの本で、ゾウがリスの家のランプの紐にぶら下がって、「ぜったいに怒らないの?」と聞くけれど、怒らない。そういえば、ぼくの物語の中心的などうぶつたちは怒らないかもしれないね。ヒキガエルは怒る。そういう性質だから。カラスも性質上怒る。ロブスターも怒る。アリは怒るとシニカルになると思う。『アリの怒り』、これが来年の本のタイトルかもしれない(笑)。
――怒らない人がお好きなんですか。ご自分もあまり怒らない?
 ケニアにいたとき、ぜったいに怒らない神父がいました。とてもやさしい人で、いまは南リンブルフに住んでいる。ぼくの父もほとんど怒らなかった。だいたいいつでもなんでも、それでいい、と思っている人だった。でも怒ったほうがいい状況もある。ぼくは場合によっては怒るけれど、お手本は、人生でいちども怒ったことのないその神父でした。フランス・モル(モグラ)という名前(笑)。これはオランダではふつうの名前なんです。
――どんな目にあっても怒らないという主人公は、いそうでいませんね。
 でもハリネズミはけっして聖人ではないし、世捨て人でもない。ふつうの人なんです。
(二〇一六年五月九日、アムステルダム)



TOON TELLEGEN
1941年、医師の父とロシア生まれの母のもと、オランダ南部の島に誕生。ユトレヒト大学で医学を修め、ケニアで3年間、マサイ族の医師を務めたのち、アムステルダムで開業医に。1984年、幼い娘のために書いたどうぶつたちの物語『一日もかかさずに』を刊行。以後、どうぶつを主人公とする本を50作以上発表し、国内外の文学賞を多数受賞。オランダ出版界と読者の敬愛を一身に集める作家・詩人。


波 2016年7月号より

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担当編集者のひとこと

招待状が届いたら

せっかく書いた招待状に、「でも、だれも来なくてもだいじょうぶです」とつけくわえてしまうハリネズミ。このひとことを読んだだけで、どうしてもこの本を出したくなってしまいました。わたしに招待状が届いたら、ハリネズミが淹れてくれた紅茶をいっしょに飲みたいです。

2016/06/29

つなぐ本×本 つながる読書<広がる世界

心配性のハリネズミの「物語力」。

ああなったら、こうなったら、と取り越し苦労ばかりしているハリネズミ。その「物語力」ときたら……恐れを超えた出会いがもたらすよろこび。

書店員さんの声

まるで変奏曲のようでした。長山さきさんが幸福な時間のなかで翻訳に力を注がれたことが想像できます。

ページのあちこちにわたし自身を発見しました。わたしがハリネズミを訪問したら、想いが膨らみすぎたあげく緊張しておなかが痛くなり、まずはお手洗いをお借りすることになるでしょう。そしてようやくリラックスしたところで、ハリネズミから帰ってほしい、と言われてしまいそうです。

いまアムステルダムに、世界をこんなに愛おしくみつめている人がいるなんて……感激です。

ジュンク堂書店池袋本店 小高聡美さん

〈でも、だれも来なくてもだいじょうぶです。〉の一文に、一気に引きつけられました。臆病なハリネズミが、他人とは思えなかったからです。

一人が好きだけどさびしがり屋、なんて人はわりと多いと思います。友だちを見つける、というよりも、ハリネズミは自分を見つけたかったのかもしれません。みんなに怖がられるハリは、同時に自分の誇りでもあるとだんだんに気付いていきます。

人と人との間で迷ったり疲れたりするなかで、どう自分を見つけ、わかりあえる人と出会うか。現代の命題が動物たちの物語になることで、すっと入ってきて、いつのまにか心がほぐれていました。とてもファニーで素敵な本だと思います。

紀伊國屋書店新宿本店 今井麻夕美さん

私の心の中にも、たくさんのハリがあります。臆病で寂しがりなハリネズミは、昔の私そっくりでした。でも最後に、ささやかだけれど確かな幸せを得ることができて、私の心も救われました。少しばかり痛いけれど、とても優しい寓話です。

鹿島ブックセンター 山田明日香さん

多くの人の背中を押してくれる作品だと思います。不安なとき、一歩踏み出してみてほしい。困っている人がいたら、手をさしのべてみてほしい。ドアは開くものだから。

文信堂書店長岡店 實山美穂さん

人見知りの私には、ハリネズミがとても身近に感じられました。他者と関係を築くうえで不安はつきもので、妄想もするが、それと同じくらい、心通じ合う存在に憧れるし、期待もする。「いったい誰が彼の友だちになるんだろう?」と想像しながら読んでも楽しめます。コンプレックスがあったって、大丈夫だよ……と優しく教えてくれた気がしました。

MARUZEN広島店 小林裕子さん

自分で勝手にマイナスなほうへマイナスなほうへ考えてしまい、傷つくのがイヤで誰にも会いたくないけれど、一人はイヤ……SNSで安心感に浸っている現代の日本人そのものに感じました。読めばきっと視界が広がる物語です。

岩瀬書店富久山店 吉田彩乃さん

ハリネズミの悩みが手にとるようにわかった。友達はたくさんほしいけれど、無理して友達になってもいいことがあるわけではない。自然に自分らしく生きていけば、きっと気の合う人と出会うことができるはず。「また、会おうね。」損得なしでそう言ってくれる人が、きっと本当の友達なんですね。

有隣堂伊勢佐木町本店 佐伯敦子さん

読み終えた後、生きていることは、とてもシンプルなのだ。だから何も恐れることはないのだ。と、不思議なくらいに心の中がほっとしました。大切な人にプレゼントしたいと思います。

ジュンク堂書店旭川店 大野珠生さん

繰り返し、孤独を良しとしては打ち消すハリネズミに、歯がゆさといら立ちを感じつつ、気付けば他者とつながることを全力で肯定している自分がいました。自称・孤独を愛する人、人間関係に疲れた人におすすめしたい物語です。

MARUZEN松本店 斎藤容子さん

泣きながら生まれてきたはずのぼくらは何故、もっと素直にこの一言が言えないのだろう。

さみしい。

我々の生活を取り巻く過剰なまでのサービスはすべてこの感情を埋めるために存在しているといっても過言ではない。囁く愛の一言も肥大化した不満故の罪も、いやきっと飛び交うミサイルや銃弾だって、根底にはこんな気持ちがあるんだ。

ハリネズミがほんとうの孤独を知るのはリスと別れたあとだろう。空間にひとりであることは孤独ではない。そこにいて欲しい誰かを想ってはじめて孤独は訪れる。

そして、その孤独が募れば募るほど、決して多くはない、けれどとっておきの、やさしさだけを用意して僕はきみを待つつもりだ。冬の間中きっと、ハリネズミがそうするように。

星の王子さまのように長く、人の手から手へ渡されていく物語となって欲しい。きっとそうなってくれると信じている。

紀伊國屋書店西武渋谷店 竹田勇生さん

ハリネズミに寄せて

特設ページ公開中「ハリネズミに寄せて」
  • 谷川俊太郎さん
  • 小川洋子さん
  • 江國香織さん
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  • 平松洋子さん

コラム

誕生日には書店でケーキを

パトリシア・デ・フロート ケリド社編集者

 わたしはトーン・テレヘンの担当編集者です。『ハリネズミの願い』など〈どうぶつたちの小説〉シリーズや、昨年刊行された『前の人生』などの小説、詩集も担当しています。
 トーンは長年、お話つきの週めくりのカレンダーを自分でつくっています。それを本にしようというのはわたしのアイディアでした。トーンに頼まれたのは、カレンダーのお話に+か−の評価をつけること。そして二人で、どの話がとてもよく、どの話がもうひとつかを話しあいます。ときには、そこからどんなテーマを引き出せるかも。テーマに沿ってトーンが新たなお話を書き、また+と−をつけて検討する。〈どうぶつたちの小説〉シリーズはそんなふうにして仕上げています。

左上から
『コオロギの快復』
『ゾウの存在』
『アリの出発』
『カエルの運命』
『ハリネズミの願い』
〈どうぶつたちの小説〉



 昨年、わたしたちケリド社は創立100周年を迎えました。その記念に、トーン・テレヘンの本を10万冊つくって、オランダとベルギーのオランダ語圏の本屋さんすべてに無料で配本し、読者へのプレゼントとしました。わたしたちも本屋さんの店頭に立って、読者に直接、トーンの本を手渡したんですよ。
 どうして100周年記念にトーンの作品を選んだかというと、彼ほど幅広い読者に愛されている作家はいないから。子どもたち、哲学的素養のある人たち、純粋に面白い話が好きな人たち。彼の作品はさまざまな読み方ができて、読者層が並外れて厚いんです。トーンなら、ケリド社のすべての作家が彼を選んだ理由を理解でき、嫉妬することもありません(笑)。
 ことしの11月18日はトーンの75歳の誕生日です。その記念に、これまでの作品に出てくるお菓子のレシピを書きおこした『大きなケーキの本』を刊行します。本屋さんがこの本を10冊と、どうぶつたちの小さなプレゼント本6巻を並べられるディスプレイを注文すると、トーンの誕生日に本の表紙とまったく同じケーキが届けられるの。お店で読者といっしょにこのケーキでお祝いしてもらおうというわけです。



左:Boekhandel Minerva Amsterdam
テレヘンの好きな街の本屋さん。ご夫婦と息子さんで経営。
右:『大きなケーキの本』ケーキ。
上部はマジパンでできている。(撮影 Lona Aalders)


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