ホーム > 書籍詳細:骨董の眼利きがえらぶ ふだんづかいの器

美しい、使いやすい、価格もお手ごろ……毎日の食卓でつかいたい現代陶芸家の皿や鉢をご紹介します。

骨董の眼利きがえらぶ ふだんづかいの器

青柳恵介/著、芸術新潮編集部/編

1,296円(税込)

本の仕様

発売日:2002/06/25

読み仮名 コットウノメキキガエラブフダンヅカイノウツワ
シリーズ名 とんぼの本
雑誌から生まれた本 芸術新潮から生まれた本
発行形態 書籍
判型 A5判
頁数 111ページ
ISBN 978-4-10-602091-9
C-CODE 0372
ジャンル 彫刻・工芸
定価 1,296円

毎日の食卓に、手頃な値段の、いい器が欲しい。1800円の皿からハレの席で使う40万円の大鉢まで、古今東西の名器を知り尽くした骨董商4人に、あえて選んでもらった「買えて使える現代のうつわ」。よいうつわとは何か?「うつわ名人」の名に値する作家は? 取扱い店リスト付。

著者プロフィール

青柳恵介 アオヤギ・ケイスケ

1950年、東京生まれ。成城大学大学院博士課程修了。専門は国文学。古美術評論家。成城学園教育研究所勤務。成城大学、東京海洋大学非常勤講師も務める。著書に『風の男 白洲次郎』(新潮社、1997)、『骨董屋という仕事』(平凡社、1999)、『柳孝 骨董一代』(新潮社、2007)、『白洲次郎と白洲正子―乱世に生きた二人―』(新潮社、2008)などがある。

インタビュー/対談/エッセイ

波 2002年7月号より 狸と狐の座談会  青柳恵介・芸術新潮編集部編 『骨董の眼利きがえらぶ ふだんづかいの器』

青柳恵介

目利きって何だろう、とよく考える。真贋を見分けられる目、凡人が見過ごしているものの中から美しいものを拾い上げることのできる人、きわめて個性的な好みを持ちながら一方でそれを他人に伝染させる術を心得ている人等々……と考えていると次第に目利きの定義の範囲が広がって行き、わけがわからなくなってしまう。知識とか教養とかいったものと純粋な感覚としての目の働きとがどのようにかかわるものなのか、その辺で私の頭はいつもこんがらかってしまうのである。
眼力という言葉もある。眼力のある人が選んだものを見ていると、あたかもそのものだけに強い光が当っているかのように浮き上がり、力が溢れ、ぶるぶる唸っているかのように思われることがある。あの感動は何なのだろう。ものの魅力をひきずり出してくる人間の眼力……。私はものに感動しているのか、人に感動しているのだろうか。
「芸術新潮」の編集部から、骨董の目利きに集って貰い、おのおのが現代の好ましき器を選んだ上で互いにそれを眺め合って座談会を催したい、ついてはその司会を担当してくれと頼まれた私は、面白い企画だと思い二つ返事で引受けた。目利きの条件とは何か、眼力は如何にして育まれるのか、そんなことを聞き出せるのではないかと思ったのだ。が、出席者の顔ぶれを聞き、若干の不安を覚えた。京都の柳孝さん、目白の坂田和實さん、日本橋の浦上満さん、荻窪の大嶌文彦さん、いずれも教祖的存在の骨董屋さんで、話がすれ違いに終るのではなかろうか、もしかしたらそれぞれ自説譲らず「私帰らせてもらいます」なんていう人が現れる、そうすると司会が悪いということになるに違いない。意見も好みも思いっきり異なりそうな人選をしておいて、喧嘩の仲裁役を引き受けさせようとは、編集部の菅野さんは虫も殺さぬ善人の如き二枚目でありながら、意地が悪い。しかし意地が悪くなければ、面白い企画など立てられるわけもないし、私にも幾分かは意地の悪さがあったのである。
柳さんは現代日本の代表的な骨董屋さんで超一流、そこに旧来の骨董観をひっくり返そうという新派の教祖である坂田さんがどう切り込んで行くのか。中国古陶磁専門で、ネクタイとスーツ姿しか私は見たことがない学級委員のような浦上さんと骨董界にインスタレーションの風を送りこみ、錆びたドラム缶に似合いそうな風体の大嶌さんとの間に一体どんな会話が成り立つのだろうか。表を見て裏まで見通す二相を悟る目利きが四人集えば、話題は都合八相にわたる座談会、《柳・浦上》対《坂田・大嶌》のタッグマッチとなるというのが大方の予想であろうが、それは浅薄、私は定めしバトル・ロイヤルとなるに違いないと覚悟して、当日リングに上った。
薄暮から深更に及ぶ座談会は、編集部が「このあたりで」の声をかけなければ朝まで続いたであろう。七、八時間、緊張がはりつめていた。一人が発言すると必ずや三人が反応した。発言をしなくとも顔で反応したことが伝わる。ぼけっとした時間は存在しなかった。四人の体力がその反応で確認されるほどに、さすが鋭敏な感受性を持った人々であった。そこで得られた教訓の一つは、眼力も体力のうちということ。人の好い大嶌さんが挑発者に徹してくれたおかげで、司会者がむっとしてしまった場面もあったけれど、四人共焼きものを目の前に置くと、好き嫌いはあってもとりあえず真摯にものを見ようとする、その共通した姿勢に私は何よりも感心したのである。会場の広い座敷に並べられた焼きものを、話題がその器に向けば、軽く腰をあげて丁寧に眺めに行く。目利きはふんぞり返らないというのが、得られた教訓の二つめだ。
四人共に現代の器であろうと骨董であろうと良い物は良いという見解であったが、新しいものの多くが古いものの良さに及ばないのは何故かという問題を、せっかくの機会だったのだから、もっと掘り下げるべきだったと司会者が反省したのは、座談会が果てて坂田さんと大嶌さんと二次会の居酒屋で飲み直してのことだった。大嶌さんは柳さんのことを「やっぱり狸だ」と言ったけれど、二次会で飲み始めるやいなや、「青柳さん、僕等のような反体制と飲んでていいの」と言った坂田さんも(やっぱり狸だ)と私は口では言わなかったけれど心に思ったことだった。

(あおやぎ・けいすけ 古美術評論家)

青柳恵介・芸術新潮編集部編
とんぼの本『骨董の眼利きがえらぶ ふだんづかいの器』は、発売中

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