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今月の表紙の筆蹟は、伊福部昭さん。

波 2024年2月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2024/01/29

発売日 2024/01/29
JANコード 4910068230249
定価 100円(税込)
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[対談]片山杜秀×岡田暁生/ゼロ地点の音楽

宮島未奈『成瀬は信じた道をいく』
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マルコ・バルツァーノ、関口英子 訳『この村にとどまる』(新潮クレスト・ブックス)
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赤川次郎『暗殺』
藤田香織/赤川次郎の手強さ

ポール・ホールズ、ロビン・ギャビー・フィッシャー、濱野大道 訳『異常殺人―科学捜査官が追い詰めたシリアルキラーたち―』
村井理子/執念の捜査官の顔と、繊細な心を持つ男性の顔

山野千枝『劇的再建―「非合理」な決断が会社を救う―』
藤吉雅春/「劇的再建」の裏側にある狂気と成長のドラマ

金沢百枝『キリスト教美術をたのしむ 旧約聖書篇』
穂村 弘/「嘘! 可愛い!」の世界

寺澤行忠『西行―歌と旅と人生―』(新潮選書)
ピーター・J・マクミラン/「歌人・西行」の文化史上の意義

オードリー『オードリーのオールナイトニッポン トーク傑作選2019-2022―「さよならむつみ荘、そして……」編―』
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【短編小説】
北村 薫/不思議な時計 中篇
【私の好きな新潮文庫】
ナツノカモ/いつか再読する日のために
 宮部みゆき『本所深川ふしぎ草紙
 保坂和志『ハレルヤ
 木田 元『反哲学入門

【今月の新潮文庫】
キャスリーン・フリン、村井理子 訳『「ダメ女」たちの人生を変えた奇跡の料理教室』
村井理子/読者に丸鶏を買わせ、料理人にする料理本
【コラム】
三枝昴之・小澤 實/掌のうた

山口亮子『日本一の農業県はどこか―農業の通信簿―』(新潮新書)
山口亮子/食卓を支える生産現場のゆくえ

[とんぼの本]編集室だより

三宅香帆/物語のふちでおしゃべり 第23回

崎山蒼志/ふと、新世界と繋がって 第17回
【連載】
椎名 誠/こんな友だちがいた 第2回
エリイ(Chim↑Pom from Smappa!Group)/生時記 第18回
近藤ようこ 原作・梨木香歩/家守綺譚 第17回
梨木香歩/猫ヤナギ芽ぶく 第12回
橋本 直(銀シャリ)/細かいところが気になりすぎて 第16回
内田 樹/カミュ論 第23回
坪木和久/天気のからくり 第6回
川本三郎/荷風の昭和 第69回
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟は、伊福部昭さん。

◎年末、帰省の飛行機の機内番組は神田伯山「中村仲蔵」。十二月だから忠臣蔵所縁の演目なんですね。これは苦労して名題になった仲蔵が忠臣蔵(五段目)の定九郎役で画期的な役作りをし、遂には名優として名を残すという噺。役作りのヒントになったのは、大雨の日に蕎麦屋で出会った貧乏旗本で……。
◎十一月には春風亭一之輔の「中村仲蔵」も聞いていました。落語でも講談でも、仲蔵と旗本のやり取りが聞かせ所ですが、一之輔師のは旗本が名を名乗り、伯山先生のでは名乗らないままです。気になって山中貞雄の脚本「中村仲蔵」を読むと、あの破れ傘をさして月代がのびた旗本の名は此村大吉。しかし一之輔師の噺では「俺は三村伸次郎という旗本の端くれで、此村大吉の屋敷へ寄合いに行くところだ」と宣った筈。
◎マキノ雅弘に「此村大吉」という映画もあったなとか、いろいろ調べたら、どうも「中村仲蔵」の古い型には此村が定九郎のモデルにされたのを怒って、仲蔵を強請る場面もあった様子。成程、柳家さん喬師の口演では、あの大雨の日、旗本が怒り出すのへ蕎麦屋が割って入る演出がありました。
◎此村の物語は長篇講談「旗本五人男」になっている由。伯山先生はSNSで「此村大吉がどういう人間かと知ると、講談の厚みがますよね。なぜあの蕎麦屋で仲蔵がみたのかと、そこらへんを中心に」と呟いています。この二つの世界を巧く綯い交ぜにしたのが山中貞雄で、彼の脚本では旗本は仲蔵を強請りません。戦後これを原作に映画化した(「朱鞘罷り通る」)際の脚色は山中の盟友三村伸太郎。彼の名前から落語の(強請らない)旗本は此村改メ三村伸次郎になった……そんな映画マニアみたいなことはやりませんよね。
▽次号の刊行は二月二十七日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。