新潮社

村上龍『MISSING 失われているもの』

{ 著者からのメッセージ }

短い「あとがき」ただし、連載

更新:2020年4月3日

05

 母は美人でした。「でした」と過去形にすると、まだ存命なので、ちょっと変ですが、とにかくきれいな顔をしていました。佐世保市の教職員の間でも有名だったそうです。子どものころは、母が美人だとわかりません。高校になっても、わかりませんでした。考えてみれば、気づいたのはつい10年ほど前です。父が亡くなって、母が故郷からアルバムを持ってきました。母とのツーショットなど、写真が痛んでいたので、スキャンして残そうと思いました。スキャンしているうちに、気がつきました。しかも、母はじぶんが美人であることに気づいていませんでした。
『MISSING』を書きながら、美人で、しかもそのことに気がついていない母親に育てられた息子はどういう女性観を持つかなどと考えたりしましたが、結局わかりませんでした。

村上龍

(不定期更新)

本作品の全部または一部を、無断で複製(コピー)、転載、改ざん、公衆送信(ホームページなどに掲載することを含む)することを禁じます。