第13回R-18文学賞 大賞
「とべない蝶々」仲村かずき

 
――このたびは受賞おめでとうございます。最終候補作すべてが一人称という偶然の中で、三浦しをんさんが「語り手の内面の成長と変化が一番あると思った」と評されていました。分かりやすいハッピーエンドではないけれど、タイトル通りどこか飛翔するイメージのあるラストでしたね。
ありがとうございます。短いお話なので、最後ははっきり明確に「変わる」瞬間を書きたいと思っていました。

――主人公の女の子が好きになる相手は、密かに女装の趣味を持った同性愛の男の子です。どうしてこのような設定を選ばれたのでしょうか。
好きになってはいけない相手、を書きたかったんだと思います。最初は女性同士の話を書こうと思っていたんですが、過去の受賞作に同じようなテーマで書かれた作品があると知り、ここにたどり着きました。きっと永遠に受け止めてはもらえないけれど、意味のある告白というか、「好きでいていいんだな」と感じる結末が描きたかったんです。でもなぜそういうテーマなのかと訊かれると……うーん、何でだろう(笑)。

――実ったり報われたりはしないけれど、最後に二人が海辺を歩くシーンはとても刹那的でありながらも希望が光り、新鮮でした。小説はいつごろから書かれていたんですか。
中学生くらいから書いていました。純文学に憧れがあって、作家になりたいという気持ちは当時のほうが強かったかもしれないです。もともと江戸川乱歩の少年探偵団が好きで、中学に入ってから乱歩が大人向けの小説も書いていると知って読むようになったんですね。あとは、月並みですが太宰治の『人間失格』でがーんとなって。小説ってこんなに面白いんだと気づかされた原体験です。あとは、京極夏彦さんなど推理小説をよく読んでいた気がします。

――中学生以降も執筆はされていたんですか。
そうですね、ずっと真似事みたいなことはしていました。高校のときに2回、純文系の賞に応募したこともあります。大学では文芸サークルで……って、そんなに真面目に活動していませんでしたが(笑)。賞への応募は高校生以来で、正直まったく今回の受賞は想定していませんでした。一次選考に残ったとき、「あれ?!」と思いました……。僭越ながら、どこか習作のつもりで書いていたんです。

――なぜR-18文学賞にご応募してくださったんでしょうか。
締め切りや枚数が、私には現実的でした。30年間あまりにもふらふら生きてきてしまって、アルバイト生活の中でずっと「何かしなきゃ」と思っていたんです。周りの友人は結婚して子どもを産んだり、やりたい仕事をしてキャリアを積んだりしている。そういう人たちと会うのが、一時期気後れするくらいの自分から、それこそ「変わり」たかったんですね。

――これから作家として書いていきたいことはありますか。
いま自分が苦手に思っているジャンルにも、ちゃんと向き合っていけるようになりたいですね。書いてきたものがわりと内省的な話が多いので、すごくプロットが動くような、例えば群像劇みたいなものは挑戦してみたいです。けれど、今回の主人公二人もそうなんですが、弱い人、不器用な人、生きることをうまく出来ない人は、書き続けていきたいと思っています。何故かって……私が器用な人間じゃないんです(笑)。そこから逃げないで、これからも書いていきたいと思っています。