第14回R-18文学賞 読者賞
「くたばれ地下アイドル」小林早代子

 
――このたびは受賞おめでとうございます。受賞の連絡をお聞きになってどのように思われましたか。
 連絡を聞いて、それはもちろん嬉しかったんですけど、なんだか大変なことになったな……という気持ちになりました。受賞の連絡を聞いたのは就職する前日だったので、「今年はいろんなことが起こるな」と。
――ご就職もおめでとうございます。小林さんが小説を書くようになったきっかけや、この賞に応募された理由などをお聞かせください。
 小説を書き始めたのは、小学生の時に綿矢りささんと金原ひとみさんが芥川賞を受賞されたのを見て、触発されたのがきっかけです。15歳で商業デビューする方もいて、子供ながらに、「才能プラス若さというインパクトがないとダメだ」という焦りの気持ちがありました。特に、女子はそういう気持ちになった人が多かったんじゃないでしょうか。
 実際に小説を書いてみたのは高校生になってからですが、当然、綿矢さんみたいに書けるわけがなく。「りさすげぇ」となって撃沈して(笑)、そこからしばらくは書いていませんでした。綿矢さんには相当影響を受けたと思います。
 大学では評論サークルに入って、大学2年生ぐらいまでずっと評論ばかり書いていました。創作は一人でも出来るけれど、評論は一人では出来ないと思ったのが理由です。そのせいか、今こうして小説を書いていても、「これで評論を書くならどこを抜くかな、テーマは何かな」と考えたりすることがあります。
 大学3年生になって、堀江敏幸先生のゼミに入ったのをきっかけに創作を再開しました。応募当時、私は若手の女性作家の小説の批評を専門ということにしていたのですが、そのうちに、私自身も「女性の感性」に沿った文章というものを書いてみたいと思い始め、そこでこの賞を知りました。応募規定も以前のように官能寄りでなくて良いということに変わったのもありがたかったです。「あ、この賞はなんだか面白そうだ。しかも副賞が“体重計”ってなんだ、ちょっとよく意味がわからないぞ!(笑)」と。このわけわかんなさがいい!と思って応募しました。
――受賞作「くたばれ地下アイドル」という作品を書いたきっかけは?
 この作品には男性地下アイドルが出てきますが、もともと私はアイドルという存在が好きで、いつか書いてみたいなと思っていました。でも、女性のアイドルについての作品はいっぱいあるので、じゃあ、男の子にしてみよう。あと、SNS文化というのは現代ならではのものだと思うので、そういうものも上手く絡められたら面白いかなと。一番の動機は「男性地下アイドルの作品は読んだことがないから書いてみよう」ということです。もちろん、こんな風に自撮りする男子なんて私の周りにはいないですが(笑)。
 今回この作品の他に2作品を応募しておりまして、自分としては「この作品ならいけるんじゃないか?」という本命だった作品は、正直に言うと実はこれじゃなかったんです。でも締め切り間際になって、もう一本ぐらい書けるかな~と思って勢いに任せて書いたこっちの作品が結果的に通って、もう、びっくりしましたね。勢いの勝利というか。応募は上限3作品までという中で枠が一つあまっていたので、去年落ちてしまったものもこっそり合わせて応募しましたが、そっちは当然ダメで、本命は一次は通過しましたが二次で落ちてしまいました。
――勢いに任せて書いたという、その原動力はなんだったのでしょう。
 本当に勢いに任せて書いてしまったので上手く言えないのですが、私はまだ自分が中高生だったときの、「かっこわるいもの」「ダサいもの」というものをひどく憎んでいた頃のことを覚えていて、最近になってようやく「高校生だったなぁ……」と落ち着いて思い返すことができるようになりましたけれど、今こうして生々しく自分の中に残っているうちに書いておきたかったんだと思います。ダサいものが嫌だ、っていうこと自体がダサいんですけどね。
 作品の中で一番ダサいシーンだな~と自分でも思うのは、原宿でストリートスナップに撮られたい主人公がスナップスポットをうろうろした挙句美容師のキャッチにしか引っかかんなくて奇抜な髪型にされるとこですかね。もう、死ぬほどダサい。ダサいものを追求しようと思って書きました。
――何ともない会話で終わるラストや、自身のことは饒舌に語るくせに恋心については一切語らない主人公の描き方など、ダサいどころかものすごくかっこいいと思ったのですが……。
 ありがとうございます。普段から小説を書くときには「書き始め」と「書き終わり」がすごく大事だなと思っていて、特に意味がないならないで雰囲気の良い終わりにしようと決めていたので、ああいった終わり方にしました。余韻のある終わりにしたいとはいつも思っています。
 もっと淡々として落ち着きのある文章が書きたいという気持ちはあるんですけど、饒舌な一人称というのをやりがちで、ついこうなってしまいます。
 あと、恋心……ですか。主人公が内田くんに抱いている感情は、恋心なんでしょうか……。恋と思って書いてはいません。少なくとも主人公は、これは恋だと思っていないと思います。全体的に恋愛は意識せずに書きました。主人公は「こんな男に恋なんてしたくない」という自意識が先立っている気がします。相手の男がダサいせいで(笑)。恋心を認められないというのもたぶんあると思います。「くたばれ地下アイドル」というタイトルにもそれが現れているのではないかと。
 先ほどこの作品は昔の私に寄せて書いたと述べましたが、私自身は中高時代をベタな青春時代として送ってきたなと思っているので、主人公たちのこういった拗らせ方は多くの方に通じるものがあるのではないかと思っています。
 でも、本当はこういう自意識剥き出しのハズカシイ感じではなく、あっけらかんとした感じの話を書きたいんですよ。今は就職活動での恨み辛みを作品に昇華出来ないか試行錯誤しています。