女による女のためのR-18文学賞

新潮社

第4回 受賞作品

王冠ロゴ 読者賞受賞

松田 桂

「宇宙切手シリーズ」

松田 桂

――今回応募は初めてではなかったのですね?

 4年くらい前からいろいろな賞には応募はしていたんですけど、実は2年前に一度「R-18文学賞」に応募したことがあるんですよ。でもだめでした(笑)。一次にも残らなかった。

――そうでしたか。この作品は何作目の小説なんですか。

 10作くらいですか。サスペンス調の300枚とか、自分の中で何が合っているのかわからなかったので、その次は青春ぽい200枚くらいのもの、それから「群像」の新人賞にもチャレンジしつつ、でも、コバルトにも出したこともあるんです(笑)。

――じゃあ、書いたものは必ず応募していたんですね。

 年に2回ぐらい応募しようと決めていたんです。こつこつと書いて、せっかくできたから、ちょっと宝くじ気分で応募してみようという感じですね。

――それは昔からですか、小さいときから。

 そうですね。子供のときからちょっと空想癖があって。漫画家さんに当時はなりたかったんですよ。実は一度佳作いただいたことがあったんです、10年ぐらい前なんですけど。でもそのときは、それで満足してしまって、続けなかったんですよ。

――それで、4年前からまた小説に取りかかったのは、何かきっかけがあったんですか。

 ちょうど三十歳前で、仕事も独立しようかなと考えているときだったんですよね。それはそれとして、でも本当に好きなものに一生懸命になったことないなと思ったんですよ、そのときに。だから、どこまで行くかわからないけども真剣にやってみて、だめならだめでまた違う道に、と考えたのがちょうど4年くらい前だったんです。

――2年前に応募なさったときは、偶然知ったんですか。

 友人が日向蓬さんの『マゼンタ100』を貸してくれたんですよね、これおもしろいよという感じで。実際読んで面白くて、ネットでいろいろこの賞のことをみていました。

――今度のストーリーというのはパッと思いついたんですか。それとも、きっかけになるエピソードとかが実際にあったとか。

 女性による女性のための性愛小説っていうのはおもしろいなとはずっと心にはひっかかっていたので、よし、また「R-18文学賞」に応募しようと思ったとき、何となく浮かんだ話だったんですよ。本当はもっとなまめかしいものにしたかったはずなのに、気がつけばさっぱりした感じになっていて、でも、とりあえず息抜きに読んでもらえたらいいかなという感じで、本当に一次とかも残るとは思っていなかったです。

――確かに選考会でも、エロ度が足りないという意見がありまして。

 そうですよね。自分でも本当にこれでいいのかな、という感じで。書いたきっかけは、気づけば、周りで同じぐらいの年代で、恋人もいなくて、もちろん結婚もしていないという人がすごく多かったんですよね。で、そういう人を書いてみたいなと思ったんです。ちょっと自信がなくて、でも年はとっていて。

――でも、別に派手な恋愛をしているわけでもなく、結婚の見通しもなく。

 そんな人が出会うのがすごく格好いい男の人とかだったら出来過ぎかなとはちょっと思ってしまって。そうしたら、こんなことになってしまった(笑)。でも、書き終わって、何かすごく足りないなとは思っていたんです。角田光代先生がおっしゃって下さった、もっと男性の老いみたいなものをリアルに描ければよかったのに、と思いました。

――やっぱり読んでもらって、何か言ってもらうというのはすごく刺激になりますよね。松田さんは読む方もお好きですか。何が一番印象的な作品でしょうか。

 本を読むのは大好きで、高校時代ちょっと暗いかもしれないんですけど、高野悦子さんの『二十歳の原点』という作品にものすごく感化してしまって……。小説もノンフィクションもかなり何でも読みます。最近はみうらじゅんさんにはまっていたり、でも翻訳のものも結構好きで、今好きな作家はと聞かれたら、ジュンパ・ラヒリさんというインド系の作家の方。『その名にちなんで』では、すごく好きな場面とかは附せんを張って、その3行だけにすごく泣いたり。この作品の入っている新潮社のクレスト・ブックスシリーズがすごく好きなんですよ。あのちょっとやわらかい手ざわりの造本も好きなんですよね。
あとは本当に何でも。角田光代さん山本文緒さんも好きですし、男性では村上春樹さんとかも。

――今回、受賞した感想は。

 今もちょっと信じられない感じではありますね。物すごくぼんやりしております。
でも今後はできる限り書いてみたいなという気持ちはあります。

――この先はどんな作品を書きたいですか?

 この作品はエロ度が低かったんですけれど、今後はむしろ官能を入れ込んだお話を書いていきたいなという気持ちはあります。本当は愛憎劇みたいなものを読むのはすごく好きなんですけど、実際、自分が書こうとなると、ちょっとやっぱり筆不足みたいなところがちょっとあるんですね。

――ほのぼのした感じですよね。でも、それが好感を持たれたところはすごくあると思いますよ、これからもがんばってください。

 ありがとうございました。