第9回R-18文学賞 優秀賞
「溶けたらしぼんだ。」木爾チレン

 
――このたびは優秀賞受賞、おめでとうございます。色々とお話をうかがわせてください。ではまず、小説を書き始めたのはいつ頃だったのでしょうか?
 中学生の時です。私、当時、とっても好きだった男の子に16回も振られていて、けど、その恋心をなんとか成就させたくて、小説を書き始めたんです。主人公は彼と私。「実は彼も私のことを好きだった」という設定で、もちろん両想いです。片想いをしていた友達の分も、作中では両想いになってもらおうと、小説を書いてプレゼントしたりしていました。
 そうしたら、創作そのものもどんどん楽しくなり、暇さえあれば書いていたんですが、19歳の時に初めての彼氏が出来ると、リアルに満たされたからか、途端に全く書かなくなったんです。妄想の世界に逃げ込む必要がなくなったんでしょうねぇ……。しかし、彼の就職で遠距離恋愛になると、むくむくと創作意欲が湧いてきて、気がついたらまた小説を書いていました。けど、完成した作品がびっくりするくらい下手で(笑)。原因は読書体験の乏しさだろうと、本を読み始めたんです。

――読書を始めたのは比較的最近なんですね。執筆するにあたり影響を受けた作家の方はいらっしゃいましたか。
 吉本ばななさん、川上弘美さん、山崎ナオコーラさんです。吉本さんの本を初めて読んだ時は、なんて感覚的な小説だろうと驚きました。川上さん、山崎さんも同じようなインパクトを受けて……。お三方の作品を読んでから、私も作中では面白い描写がある小説を目指すようになりました。

――ご自身で切磋琢磨しながら、今日まで順調に執筆を続けてきたわけですね。では、数ある文学賞の中で、「R-18文学賞」に応募された理由を教えてください。
 前々から、私の小説に深みや面白さを増すためには、性的なシーンは必要不可欠だと思っていたのです。けれども、そういう作品を地方公共団体が主催している公募の文学賞に応募しても、相性が悪いのか受賞には至らず……。そんな時に「R-18文学賞」のことを知ったんです。賞の枠組みと私の方向性が見事に一致していたので、これだと思い、それまで以上に意識的にセックスシーンを書き込んだ「溶けたらしぼんだ。」という作品を応募しました。

――他の賞にも応募されていたのなら、喜びもひとしおだったのでは?
 喜ぶどころか、救われたと言いますか……。応募した時、私は大学4年生だったんですが、卒業したら付き合っている彼と結婚し、同時に何かしらの文学賞を受賞して作家デビューする予定だったので、就職活動とか、全くしていなかったんです。ばかですよね(笑)。けど、卒業式の前日に彼に振られ、卒業式当日になってもどの賞にもひっかかっておらず、本当に人生お先真っ暗、不安で不安で、ただただ泣いていたら、その翌日、見ず知らずの番号から着信があり、「R-18文学賞」を受賞したと聞いたんです! 命の恩人です!

――そういっていただけると私たちも嬉しいです(笑)。では、具体的に執筆にかかる時間やプロットを作るかなど、執筆スタイルを教えていただけますか。
 受賞作は、4日くらいで書きました。私は深夜から明け方にかけて書くんですが、ライティングハイになっているのか、執筆中のことをよく覚えていないんです。頭を使って小説を書くというより、指から文字が出てくるというか……。はっと気がついたら小説が出来ていた、ということも多々あります。プロットに関しては、今のところ主人公たちに勝手に動いてもらった方が、楽しい作品になるような気がするので作っていません。
 でも、ちょっとしたキーワードは設定します。受賞作だったら、「女の子2人の同棲」「チョコレートミント」「芸術大学」みたいな。

――そういうキーワードは突然、浮かんでくるんですか?
 ケースバイケースですね。「チョコレートミント」は、妹がチョコミントのアイスを食べている姿を見て、私はとても嫌いな味だなと思っていたら、「そうだ、チョコミントを好きな女の子を小説に出そう!」とひらめいたんです。「女の子2人の同棲」は前々から興味があって、「芸術大学」は、私自身が通いたかったから、そういう設定にしたかった(笑)。

――受賞作に登場する主人公が初めてセックスをする相手である透は非常に魅力的な人物ですが、彼にはモデルはいるんですか? かつて好きだった人、とか?
 透の人物像を作るにあたり影響を受けた人はいます。大学3回生の時に受講していた芸術系の講座の先生です。かっこよくて、けど芸術大学にいそうなちょっと変なところのある人で……。展覧会やおしゃれな本屋さんを紹介してもらったり、いろんなことを教えてもらったんです。憧れの存在ですね。この小説は、先生に出会えたから書けたと思っています。透の外見は、大学で見かけた男の子をモデルにしています。気味悪がって、みんなから避けられていて、絶対に彼女なんて出来そうにないタイプなんですが、こういう人が恋をしたらどうなるのか興味があって! そう、私、変人好きなんです。いや、私自身が変人なのかもしれませんが、ジャニーズ系のキラキラしたカッコイイ男の子とセックスするより、ちょっと気持ち悪いくらいの変人とセックスしたいなと思ってしまうんです。ちなみに私の理想の結婚相手も、まず背が高くてぶさかっこいいのが前提で、後は、宇宙語のような数式が説けたり、超高度なプログラミングができたり、そして、私のことをすごく愛してくれて、なおかつキスが上手いと最高! という感じですから。

――そうですか……。では、受賞作の中で、最初のセックスは教室で行われますが、これも実体験?
 そういうわけではありませんが、普通のベッドより、病院とか電車とか、ちょっと違うシチュエーションでセックスしたいという願望はあるので、それが現れたのかもしれませんね。ただ、セックスシーンで、栞のいろんな感情がぐちゃぐちゃになっている様子を書いたのは、私自身が、セックスの最中に色々考えてしまうからです。「あー、あんたの声、うるさい!」みたいな(笑)。だけどあんまりそういう小説やドラマはみたことがないから、それをどうしても伝えたくて書きました。また、栞が透の絵を見て感動する場面は、実際に展覧会で自分が受けた衝撃をもとに書いています。

――今後、書いていきたい小説のテーマはありますか?
 とにかく、変な人を書きたいです。美男美女ではなく、一見普通かもしれないけれども人間らしい人たちを登場させたい。変さの中には、リアルがあると思うので、それを伝えていきたいですね。あとは、やはり同棲もの。一緒に暮らす相手と家族のように親しくなるけれども、どこかでいつかは別れてしまうという想いを抱えながら生活しているという小説を書いていきたいです。けど、とにもかくにも、おしゃれな本屋さんに並べられるような素敵な本をたくさん作りたいです!