第15回R-18文学賞 友近賞選評―友近氏

 最終候補6作はどれも面白く、楽しんで読ませていただきました。それぞれに異なる魅力があって迷いましたが、最終的には、地方出身者である私がもっとも印象に残った、『県民には買うものがある』を選びました。
 この作品の舞台は滋賀ですが、ここに書かれているような女の子たちの感情や行動原理は、愛媛出身の私にとっても「こういう子、いたいた」という感じで、すごくよくわかります。私の地元でも、狭いところでいろんな人とエッチする子はいましたし、遊びに行く場所がいくつかしかないというのも一緒。地元にいると、車に乗っている男女を見ても、彼らが恋人同士なのか、テレクラでついさっき知り合ったのか、はたまたセックスだけの関係なのか、よくわからないんです。それは、相手との関係性によって行く場所を変えるだけの選択肢がそもそもないから。作中では琵琶湖周辺でしたが、そうやってみんなが同じところを、ぐるぐるまわっている。そこにずっといると、狭くて深いコミュニティができあがります。それがいいとか、悪いとかではなく。
 ただ、18の子が、そうやって同じ場所でいくら楽しいことをしても、あるいはエッチをしたとしても、どこか空虚で、満足感がないんですよね。終わったあととか、家に帰ったあと、すべてが罪悪感に変わるというか。「なにやってるんやろ」っていう気分になって、少しも気持ちが晴れない。作中、主人公の女の子は、ラブホに行く前に寄ったコンビニでエクレアを買って、それをホテルの冷蔵庫で冷やしておきます。でも、エッチが終わったあと、「薄暗いオレンジ色の灯りに照らされたエクレアを見ると何となく食べる気が失せてしまい、やはり家へ持ち帰ることに」する。この描写、うまいなあ、と思いました。そういう、田舎に住んでいる人特有の「抜けきれない欲」がとても細かく描かれているところが、すばらしかったです。
 もう一作、最後まで迷ったのは、『金魚鉢、メダカが二匹』。仕掛けのある小説で、読んでいて楽しかったですし、その仕掛けがわかってからも、もう一歩のめり込める。読む人を惹きつける作品でした。たとえるなら、『金魚鉢、メダカが二匹』は二時間くらいの映画として、映画館で観たい作品。『県民には買うものがある』は、オムニバスドラマのような感じですね。有名人はひとりも出てこなくて、色がついていない役者さんたちが、リアルに演じるような……。
 ほかに、『夜の西国分寺』も、導入部分ですごくひきこまれました。続きを読みたくなる、すばらしい「入り」だと思います。
 結果的には、もう一度読みたい、と思ったこの二作も、それぞれ大賞、読者賞を受賞されたと聞き、嬉しく思っています。受賞者の方の今後のご活躍を、心から楽しみにしています。

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