選評 第17回R-18文学賞 選評―友近氏

小学4年生の主人公に共感

 読みやすく情景が浮かび、物語がするすると入ってきた「You Can Use My Car」、「卒業旅行」との3作で悩んだ結果、「アップル・デイズ」を選びました。特にドラマチックな展開がある訳ではないですが、じわっと感動する。44歳になっても、小学校4年生の主人公に共感できる。そんなことがあるんだなと思いました。
 主人公のキラは、ませているというか、少し冷めた部分があって、周囲の人をよく観察し、いろいろなことを思っています。読みながら、普段は思い起こすこともない自分の松山での小4時代に、知らず知らず思いを馳せていました。キラと似ていたというわけではないのですが、そういえばあのときの自分も、存外いろいろなことを考えていたな、と。人って、その頃にはもうある程度、つくられているものなのかもしれません。キラのことを助けてくれる優しくてフラットな同級生の男子も、よかったです。こういう男の子って、しっかりしているし、一見好きになりそうなタイプだなと思うけれど、たぶん、長じてもキラとは恋愛関係にはならないんでしょうね。
 環境で人は変わる、ということが描かれたこの小説は、けれどキラキラした部分だけを書いているわけでもありません。書かれているのはあくまでただの日常であり、変わっていく母子の姿に対して、父はひとり取り残されていく。まさにこれが現実の社会だと感じます。それでもなお、清々しく爽やかな読後感を失っていないこの作品に、一人の読者として拍手を送りたいと思います。


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