選評
第24回R-18文学賞
選評―東村アキコ氏
言葉の海に灯る五つの光
R-18文学賞の選考委員をやらせていただいて今年で4年目になります。毎年、女性の小説家の卵たちの、紡ぎたての物語をみなさんより一足早く楽しませていただいてます。
まず「17(セブンティーン)」を最初に読みまして、物語の立ち上げ方のうまさにぐいっと引き込まれ、2回目の17歳という設定も軽やかで、漫画家の私からすると「これ漫画にしたら面白いだろうなあ〜」という、エンタメ的な、キャッチーなストーリーが心地よかったです。流行りの歌を上手く取り入れてたり、読みやすさも抜群でした。
驚いたのは、主人公の言葉遣いが、読者にはわかりやすく理路整然としてるのに、学生時代勉強は出来なかったちょっとバカな子、という雰囲気もちゃんと残っているところ、矛盾した二つの要素を読者が気がつかない感じで書ける筆力といいますか……素晴らしい才能です。ラストの展開は好みが分かれるかもしれませんが、私はわりと楽しめました。あえて選考委員として難を言うとすれば主人公の娘のキャラクターの解像度をもう少し上げたらもっと良かったかなと思いました。
「女の檻」は理系女子が、生物学的な知識で自分が恋に落ちた時の脳の興奮物質ドバドバ状態を冷静に分析してるという、めちゃくちゃ面白いストーリーで、これは今までになかったぞ、というワクワクする読み心地で大変楽しませていただきました。私の中でこの主人公の見た目がすぐ浮かんで、実験室でマウスに注射をしている姿がすごくセクシーで、本能を押し殺してる感じで、でもそれに抗えない感じ、すごく良かったです。こんなに楽しませてもらっておいて、またまた選考委員としてちょっとケチをつけるとすれば、檻という表現を、なんか、マウスが入っている小さいプラスチックの入れ物、とかにして、なんかこう、理系女子ならではのモノにしたらカッコよく決まったかなと思いましたが、まあでも実際マウスも檻なのかな? ちょっとその辺が分からないんですが、なんかこう、ラブホのものと、実験の器具で何か繫がるものがあったらよかったかな? と思いました。まあ好みの話ですが。
「みどりごを抱く」は、タイトルがすごく素敵で、わあ、どんな話だろうと思いながら読みました。しっとりした文体で、品がよくて、面白く読みました。転校生の碧子が出てきて、話はどんどん展開していくのですが、碧子のビジュアルの説明がなかったので、この子が美人なのかどうか分からないまま読み進め、後半で、あ、たぶん美人だったのかなと思いましたが、髪の毛はどんな感じで、顔は、スタイルはどんな感じだったのだろうと気になりました。そこがあったらラストもまたかなり良くなったかなと思いました。でも全体に漂う雰囲気はすごく良かったです。
「海を蹴る」は私がものすごく好きな感じの世界観で、うわ〜いいな〜と思いながら読み進めました。どのシーンも情景が浮かびました。こういう日本的なちょこっとファンタジーの小説はものすごく需要があると思うし、このジャンルで鍛錬を積んで面白いものがどんどん書けるようになればとんでもない売れっ子になれるのではと思いつつ、人魚の女の子のキャラクターというか、設定がちょっと曖昧でそのせいか、この子はなんか、自分が人魚なことで悩んだりとかはないのかな? と思ってしまいました。主人公の叔父さんが「あさぎと海に入ったのか」と問い詰めるシーンがなぜかすごく、良くて、なんだろう不思議な書き方する人で、何作も書いてこのノリを極めて欲しいなと思いました。またこのかたの小説を読んでみたいです。
「笑うワーキングレディ」は、これはもう、本当に完成された面白い小説で、大賞を取るのにふさわしい、なんのひっかかりも、違和感もない、ただただ楽しませてもらったな、と。主人公が本当にいい。全員のキャラクターが浮かぶ。登場人物が多いのに、読んでて全然混乱しない。テーマも、それを逆手にとった? 展開も、心地よくて、無理がなくて、本当に現実社会に起こりそうでいて、でも楽しいエンタメ群像劇のショーになってて、面白かったです! 爽快でした!
以上、今年の選評ですが、今年は本当に全部面白くて、好みで、色々なシーンやセリフでたくさんときめきました。おかげさまで自分の創作意欲も湧きまして、いい気分で漫画の世界に戻れそうです。
