女による女のためのR-18文学賞

新潮社

選評

第24回R-18文学賞 
選評―友近氏

魂売ったなぁ~と思う時

友近

 最終候補作は、どれもとても読みやすかったです。これまで作品によっては小説の世界に入り込めず、何度も作品を読み直すこともあったのですが、今年は5作を一気に読み終えました。
「みどりごを抱く」も好きな作品でした。ただ、転校生の抱いていた赤ちゃんが彼女の弟なのか子供なのか、真相を測りかねたり、でもまたそれが物語に重みを持たせているのかなとか、うまいこと振り回されました(笑)。「17(セブンティーン)」は、私は芸人さんや俳優さんとお仕事をご一緒することが多く、みなさん実際の年齢とは違う役柄を見事に演じるので、34歳が17歳のふりをするという設定については、特に違和感を覚えることもなく読み進めました。ただ、主人公がパパ活で知り合うおじさんと、かつて出会った飯塚という教師が同一人物なんかも、とか自分の読解力がないのか、読んでいて少し混乱してしまいました。でも、物語の展開に驚きがあって、深みを感じました。「女の檻」は不倫をする男の能天気さや、そういう男性に振り回される女性、という男女の妙がとてもよく書かれていて、映像が目に浮かびました。「海を蹴る」は人魚という生き物が実際に存在してるんじゃないかな? と思えるほど描写がリアルでした。主人公の海向は人魚のあさぎに結局恋しまくってるのかなと。
 読んでいてすぐに「これはハマるかも!!」と、ピンときた作品が「笑うワーキングレディ」です。私は人の言動を真似るネタが多く、見る人に「分かる!」と思ってもらえるか、ということを常に意識しているので、友近賞の選考をする上でも、自分が「分かるわあ」「こういう人いるよなあ」と共感できるかどうか、というのはひとつの基準になっているのですが、「笑うワーキングレディ」はそれを満たした小説でした。
 誰にでも愛想が良く、好かれるタイプの人が実は無理をしていて、体の不調を訴えるという、現代社会の問題が反映された小説だったと感じました。私がまだ愛媛にいたころ、誰の誘いも断らない、いつも笑顔で感じのいい方が、ある日ぱたっと現れなくなって、みんなで心配していたら、実は病気になっていた、ということがありました。この作品の岩橋さんと同じような状況です。私自身は、噓をつくことが苦手で、思ってないことは言わない、愛想笑いも苦手なので笑う所の寸前でどっかに行くようにしているのですが(笑)。テレビって、もちろん笑顔の方がワイプで抜かれやすかったり、お仕事を頂きやすかったりしますが、本当の気持ちを偽って笑うことで露出が増えて、なんだかその後、あれ? 魂売ったなぁ~と思う時はあるんです(笑)。いいことなんですけどね! どんな環境でも、そういうことはあるんじゃないかなと思います。
 斉藤さんは、人の心の裏を描くのがお上手なので、次作は華やかな芸能人のパーティーに集まった人たちが、実際のところどう思っているのか……というような、みんなの隠された本音を炙り出すような小説なんてどうでしょう、と思っています。(談)