選評
第25回R-18文学賞
選評―友近氏
母娘の関係性は十人十色
今年の最終候補作は、自分の身近なことと結びつけて読むことができて、ある種の親近感を覚えました。年々、作品のレベルが上がってきているように感じていて、友近賞として一作を選ぶのが難しかったです。
その中で、今回友近賞に選ばせていただいたのは白木凛さんの「曇る母へ」です。この作品は、亡くなった母のことを想う娘の視点で描かれているのですが、この母娘関係の絶妙な距離感がリアルで、思わず自分と母の関係を思い起こしました。私は母にはあまえもあってそんなに心配もしないし、どこか反抗的な態度を取っちゃいます。でも私の姉は母のことをいつも心配していて、私より近い距離感で接しているように思います。ひとことで母と娘と言っても、その関係性って十人十色なんですよね。主人公が送るギリギリの生活のひりつきも、お母さんが新月に救いを求めるという、ちょっとスピリチュアルな考え方をしているところも、すべてリアリティを持って迫ってきました。
「タコのハナシ」は夫婦のあるあるを見事に描いていて、著者の筆力の高さを感じました。私も夫婦をテーマにしたコント作品をすることがあるので、そういった点でも惹きつけられました。
「取り憑かれトリッパー」は、今回の作品の中で唯一ぶっ飛んだ設定がある小説でした。幽霊が出てくるので身近なテーマというわけではないのですが、なぜか「あり得る」と感じさせられる、ユーモラスで素敵な作品でした。
「夜明けとマヨネーズ」は、とにかく人物の描写が素晴らしかったです。こんな風にデリカシーのない人間いますよね。彼氏が死んで悲しむ女性という読み方を裏切る展開も面白かったですが、とにかく人物の描き方に注目して読んでいました。
「水を得にゆく魚」は、登場人物の誰がいい人で、誰が悪い人なのか、読んでいて感情を揺さぶられる面白さがありました。いろんな価値観や倫理観が絡み合っていて、善悪の判断をつけることの難しさを感じました。個人的には、これってリアルなんかな? 実際にこんなことあるんかな? と、考えさせられる作品でした。
どの作品も甲乙つけがたく、読むタイミングによっては違う作品を友近賞に推していたかも、と感じるほどでした。皆さん本当に素晴らしい作品でした。是非映像化してほしいですね。(談)
