第4回R-18文学賞 選評―山本文緒氏
毎年、最終候補作は僅差な本賞だが、今年も例に漏れずどの作品も才気溢れるものでした。ですが、官能小説の賞にしてはエロスの描写が全体的に低く、残念な思いをしました。


「青ざめる雪」は綿密に書かれた力作と言えると思います。ただ綿密に書かれているが上に筆が滑ってしまった部分が目立ってしまった。私には「オヤジ」や「逆ギレ」という言い方や、「えきねっと」などの具体的な単語が裏目に出てしまったように感じた。本作も官能小説という点から見ると弱かった。ストーリー性がきちんとあり、人物造形もテレホンカードなどのエピソードはとてもよかっただけに残念な結果となってしまった。

「グレープフルーツのしずく」は三年ぶりに会う幼なじみの男の子とのエピソードから始まり、前半は可愛らしいヒロインの心情に感情移入できたのだが、後半、「一緒に歩くには申し分のない先輩」とセックスしてしまうあたりから、物語に入り込めなくなってしまった。最近の若い女の子のリアルがここにはあるのかもしれないが、奸計で動く彼女をどうにも好きにはなれなかった。文体は読みやすく、爽やかで、力量はあると思う。二十歳の作者の作品なので、今後の作品に期待したいと思います。

「うみはひろいな、おおきいな」は日常から離れた場所で物語が綴られるという点では新鮮だったが、カヌーやキャンプ用語を殊更使うことに意味があったか疑問である。自然の中の人間、という問いかけはよかったが、性的なトラウマをもったヒロインが冗談でも無人島で青年と二人、裸で過ごそうと提案するという点がリアリティーに欠けた。

「宇宙切手シリーズ」は選考をする上で困ってしまった作品だった。ノスタルジックで微笑ましい大変いいお話で、アイディアも良く、ラストもほのかに明るい印象を残していて、一読後、この秀作が受賞作になるかもしれないとまで思った。だが本賞が官能小説の賞である限り、この作品ではあまりにも艶っぽさが足りず、受賞には至らなかった。

「夏がおわる」が今回の受賞作となったわけだが、私は本作を2番目に推していた。一人の男性に一途なあまり他の不特定男性とセックスを繰り返してしまうヒロインの、切迫感がよく出ていた。段落が少ないのに読みやすく、この作風においては細部の書き込みも生きていたと思う。言葉にして伝えること、伝わらないことの虚しさが私には手に取るようにわかった作品だった。

「カササギ」を実は私は一番に推していた。古風な雰囲気が全体に漂っていて、破滅的な男に惹かれるヒロインの心情も納得できるものがあった。本賞にふさわしくエロスが満載に描かれていて、足袋に生理の血がついたり、手編みの赤い手袋で包丁を持ったりする件にもエロスを感じた。しかしタイトルのカササギの使い方がやや強引だったり、文学風に持っていき過ぎているのではとの指摘を受けて点を落とし、残念ながら受賞にあと一歩で至らなかった。今後の作品を心待ちにしています。