第6回R-18文学賞 選評―唯川 恵氏
今回から参加させていただきます。
個人的にとても注目していた文学賞なので、緊張しつつも楽しみに選考会に臨みました。期待通り、バラエティに富んだ作品が集まり、議論も熱気に満ちたものになりました。


「ラムネの泡と、溺れた人魚」
これをいちばん最初に読んだのですが、とても好きな小説でした。学校の雰囲気もよく出ているし、ラムネと人魚の話もうまく絡み合っている。セックスシーンも迫力があり、「十七歳でこんなこと……」と、ちょっとたじろぐところもあったのですが、好きというシンプルな気持ちもよく伝わって来る。私は○を付けました。ただ、物足りなさも残ります。擬音が多い、幼馴染みものはありがち、そんな部分が引っ掛かりました。次回に期待したいです。

「朝の訪れ」
話の展開に無理がありそうで、ぎりぎりのところで持ちこたえている面白さがあります。一緒に夕食を食べる契約をする、というのもなかなか憎い発想です。どんでん返しもあって、小説を作るという姿勢も感じられます。ただ、工藤の姿の描写が細かく、却って想像しにくくなってしまい、私は物語にすんなり入れませんでした。読み手の側の想像力も計算に入れた方がいいかもしれません。

「シーズンザンダースプリン♪」
一歩間違えば、とても不愉快になる話を、うまく持ちこたえ、最後まで引っ張ってゆく力は、たぶんこの方独特の才能なのではないかと思います。水面を気楽に泳いでいるようで、底の見えない怖さがあります。主人公は小学生なので当然にしても、登場人物がみなどこか幼稚に感じられたのは私だけかもしれません。「この人たちはみんな大丈夫かなぁ」などと、心配になったりもしましたが、良くも悪しくも、そこが魅力的な小説だと言えるでしょう。

「かたばみ荘の猫たち」
登場人物が魅力的です。鴇田さんという存在も好感が持てます。指が冷たいエピソードなど秀逸です。ユリエさんや片桐さんも存在感があります。ただ私には、この枚数に話を詰め込み過ぎたという印象がありました。逆に言えば、もっと長く読みたいということでもあります。今度は、その辺りのバランスも考慮してみたらいかがでしょう。

「珍蝶」
可笑しいのだけど、どこか悲しい。グロテスクなのだけど、清潔感がある。文章が巧みで、読み手の気持ちを惹きつけて離さず、時には声を上げて笑ってしまいました。面白かったです。意表をつかれました。私はこれを推したのですが、他にどういうものを書くのだろうか、という意見もでて、そう言われると少し不安が残りました。結果的には、今回は見送る、ということに納まったのですが、ぜひ、再チャレンジを。それと、タイトルは考えた方がいいです。これだといずれ飛び立っていくことが、最初にわかってしまいます。

「旅館みなみ屋」
ロマンチックで可愛い話、母親たちの身勝手さも憎めない、ところどころ心惹かれる文章もあります。けれども、こうなるだろうというところが、ちゃんとそうなってゆくので、意外性に欠けます。ふたりでホテルに行くのも、展開に無理があり、読み手を説得するのは難しいでしょう。もう少し、書きたいものを煮詰めた方がよさそうです。


最後に。
私としては、大人の女性が主人公のエロティック小説を読みたいです。