第1回R-18文学賞 受賞者対談
日向 蓬×豊島ミホ

――まず、どのようにして「R-18文学賞」をお知りになったのでしょうか?

日向:「作家になりたい」というほど明確なものではなかったのですが、ここ二年ほど、漠然と「書きたい」と思っていました。それで何か目標が欲しくて、インターネットで「文学賞」で検索してみたら出てきたのがこの賞で。テーマも、まさに私が愛してきたジャンルだったので、運命的なものを感じました(笑)。

豊島:私は、夏休みの宿題に追われていてそれから逃避したくて、「よーし! 文学賞に応募するぞ」と(笑)。やはりネットで出版社のホームページをいろいろ回って、「幻冬舎NET学生文学大賞」とこの賞の二つが見つかった。でも、「学生文学大賞」は締切が近すぎて間に合わなかったので、こちらにしました(笑)。でも「R-18」は、テーマも、ただの文学賞より面白いと思いました。

――書くのは初めてだったのですか?

日向:初めてです。この賞に背中を押されたという感じ。

豊島:この賞がなかったら書かなかったでしょうね。

日向:でも、自信は全然無かったです。送ったあと読み返して「あちゃー!」っていうところがいっぱいあったし。最終候補に残っただけで、もうびっくり。で、最終選考の六作を読んだとき、みんなテーマが斬新で、私のが一番平凡というか古典的というか。「ああ、あかんわ、私の」と思ってました。

豊島:私は最後の一行を書き上げた瞬間、「賞金はもらった!」と思った(笑)。でも次に読み返した瞬間、「やっぱ、駄目じゃん」(笑)。でも、「もう駄目でもいいや、十万円欲しいし」という感じで送りました、はい。

日向:幸せなことに、私は、ちょうど書きたいことと、この賞のテーマが一致していました。ただ、いわゆる「官能小説」は読んだことはないんですけれど。辛うじて団鬼六先生ぐらい。

豊島:団鬼六先生! 私は図書館で恥かしくて借りられなかった(笑)。私、実はそれほど小説は読んでいないんです。文学部だから、周りの人に馬鹿にされない程度にいろいろ読もうとするんですけれど、最初の三行でまだムリだと思った、泉鏡花とか。

日向:三行、それは早い(笑)。私も、読むのは好きですが、広く、浅く、ですね。好きなのは、ありきたりですが、谷崎潤一郎と三島由紀夫。文章がきれいですね。

豊島:そうそう、「痴人の愛」は、授業中に隠れて読んじゃうぐらい面白かった。「仮面の告白」も。でも私、実は愛読書は漫画なんです。特にかわかみじゅんこさんは本当にファンで、『青空チェリー』の本のカバーの絵を描いてもらったのは、もう、感動でした。

日向:私も愛読書は「ゴルゴ13」。小さい頃は「りぼん」とか「なかよし」、高校生ぐらいだと「別冊マーガレット」を愛読してました。

豊島:「別マ」! 私、「別マ」に投稿したんですよ、落ちたけど(笑)。

日向:「青空チェリー」は、漫画的というか、コマが浮んでくるような。 豊島さんが漫画家志望だったと聞いて、なるほどな、と思いました。

豊島:「チェリー」は、ちゃんと頭の中でコマ割りして書いたんですよ。この辺には書き文字が入る、とか。

――初めての小説は、どうやって書いたのですか?

日向:賞に応募するということを決めた時に、タイトルの「マゼンタ100」と最後のシーンはぱっと思い浮びました。骨組み、つまりエピソードや人物像は、すでに自分の中に漠然とあったので、それに肉付けと味付けをしたという感じ。本にする時の書下ろしも、まずキーワードやタイトルがぽっと浮んで、それに引っ張られて話が出てきた。引っ張られすぎて深みにはまってしまう、ということもありましたが(笑)。

豊島:「チェリー」は、予備校に通ってた時に、通学の電車から見える別の予備校があって、隣に何か建ったらそれがラブホテルだったんです。こんな環境で勉強なんかできるのかよ、と思ったエピソードから話を広げていった。でも書下ろしの「ハニィ、空が灼けているよ。」はタイトルからです。9.11があったから書こうと思った、なんていうんじゃないんです。

日向:ぱっと頭に浮んだエピソードやキーワードを忘れないように、賞をいただいてから、ネタ帖を持ち歩くようになりました。

豊島:私もネタ帖、書いてますよ。新潮文庫の「マイブック」を使って、もう三年目です。「マイブック」の前は、落書帖にメモったり。その頃は、漫画用のネタでしたけれど。やはり役に立ちますよね。毎日、寝る前に絶対広げて書きます。

日向:着想があって、それを小説にしていくうちに、違うものになってしまうこともある。どこでどう変ったのかな、という時に、元のネタを見られるのは意味がある。

豊島:それまでに書いた分で、何か問題があったとする。ここがなんでこうなったのか説明を加えなくちゃいけない、それを今日メモっておけば、明日「さあ、書くぞ」という時にそこから始められるし。

――本が出来るまではいかがでしたか?

日向:苦し楽しかったです。苦しいけれど、充実していたというか。本のための締切というのは、生まれて初めて感じるタイプの、大きなプレッシャーではありましたけれど、楽しかった部分もあります。私は働いているので、まとまった時間がなかなか取れないのが哀しいところでもありましたが。週末、まとめて時間が取れるときに、骨組みを作っておいて、平日に肉付けをしたり、推敲してちょこちょこ直したり。でも会社の周りの人も、応援モードでいてくれますんで、助かります。本が出来た気持ちは、なんとも言えないですね。もちろん嬉しいのはほんとにほんとに嬉しいのだけれど、実感がないというか……。

豊島:私が本を見て一番に思ったのは、「カバー可愛い!」(笑)。前に漫画を描いていた時間を小説に当てるようになっただけなんで、生活にはあまり変化はないです。

――これから応募する人たちへ、一言お願いします。

日向:この賞の「女のための」という言葉を、「ソフトな」と単純に取り違える男の人もいるだろうけど、そうではない、女ならではの切り口が絶対あると思います。男性からも「なかなかやるやん!」と思わせるものを、女がどんどん出していって、流れを作っていきたいですね。

豊島:「青空チェリー」、実は最初のタイトルは「発情期」だったんです。でも万が一、本になったら、女の人が買いにくいのではないかと思って、変えました。この賞では特に、女の人に気を遣って書くことも、必要かもしれません。

――では、今後の抱負を。

日向:賞をいただいて、道具を持たされたサルみたいな気がします。まだ、その道具を使いこなせてはいなくて、はたから見たらこっけいだろうけれど、本人は楽しくて仕方がない。これからも、書きます。テーマは、いのちとエロティシズム。

豊島:第二回、第三回と、新しい受賞者がどんどん出てくるじゃないですか。その人たちに、絶対負けたくないですね。

――ありがとうございました。