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「小説新潮」創刊70周年記念号

作成者:小説新潮編集部

「小説新潮」2017年9月号
「小説新潮」2017年9月号

 昭和22年、わずか64ページで創刊した「小説新潮」は「古希」を迎えます。その道のりを113ページにぎゅっと圧縮。小説誌の多彩な魅力をご堪能下さい。 「まとめ」では、新潮文庫『日本文学100年の名作』で今も読める作家の作品から、冒頭の一行を引用しました。

件 内田百閒

黄色い大きな月が向うに懸かっている。

くるま宿 松本清張

柳橋に近い、“相模屋”という人力車の俥宿くるまやどだった。

塩百姓 獅子文六

大河のような入江に沿って、街道と人家があり、一方は山で、山の頂上まで畑になってる。

寝台(ねだい)の舟 吉行淳之介

むかし話を一つ、します。

ベトナム姐(ねえ)ちゃん 野坂昭如

占う気持はてんからなく、ただ、「アイスメルシャンプー、アイスメルシャンプー」と酔ったあげくにわめきたて、泣きじゃくっていたジュニアの、ひざまくらのままようやく寝入ったらしく、その所在なさに、机の一輪ざしの、ほこりまみれの造花の花片、一つ一つむしりとり、むしるうち思いがけず、「スキ、キライ、スキ、キライ」拍子とるように口をついてでる。

長崎奉行始末 柴田錬三郎

長崎奉行・松平図書頭康平ずしょのかみやすひらは、格式ぶらぬ人物であった。

唐来参和(とうらいさんな) 井上ひさし

御奉行所の御紋所のある黒の丸羽織に着流し、御腰にはお刀と緋房ひぶさの十手、そしてバラ緒の雪駄せった……、八丁堀の定廻じょうまわりの同心だんなでございますね。

夫婦の一日 遠藤周作

妻がだまされた。

鮒 向田邦子

「あ、誰か来た」 つぶやいたのは長女の真弓である。

掌(て)のなかの海 開高健

もし、今、どこかの退屈しきった雑誌編集部からアンケート用紙が送られてきて、ロンドンについて何でもいいから忘れられないことを三つ書いて下さいと、あったとする。