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絲山秋子「作家の超然」(100枚)

新潮 2010年9月号

(毎月7日発行)

特別定価996円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2010/08/07

発売日 2010/08/07
JANコード 4910049010907
定価 特別定価996円(税込)

◆作家の超然(100枚)/絲山秋子
東京を捨て、一人だけで生きることを決めた小説家の体に腫瘍が芽生えた時、世界と言葉の終焉劇が静かに始まる。生と創造の極北へ。

◆Shit, My Brain Is Dead.(100枚)/舞城王太郎
日系アメリカ人海兵隊員がイラクの砂漠で見た井戸底の闇。地下水脈から現れたのは、出会うはずのない人間だった。

◆幻影のゆくえ(120枚)/大城立裕
砲弾と死者が犇めく戦場で、剥き出しになった人間の姿を少年は凝視する。著者永遠のテーマ「沖縄戦」の総決算!

◆きことわ(160枚)/朝吹真理子
幼年期の夏を共有した二人だけの時間が、もう一度流れ始める。25年の封印を解かれ、今日から明日へ――。超大型新人が描く「生と時間」の輝き。

デカルコマニア〈短期集中連載・II〉/長野まゆみ

■連載小説
・爛(五)/瀬戸内寂聴
・空に梯子(八)/角田光代
・マザーズ(九)/金原ひとみ
・フィルムノワール/黒色影片(九)/矢作俊彦
・還れぬ家(十八)/佐伯一麦
・幸福の森(三十三)/加賀乙彦

■■クロス書評 福田和也『現代人は救われ得るか――平成の思想と文芸』■■
・女たちの欲望と「大逆」/すが秀実
・操作のリアリズム/椹木野衣

◆竹田出雲よりも黙阿弥よりも
 ――井上ひさしを偲ぶ会で/丸谷才一

◆太陽・フランチェスコ・傷痕/高橋英夫

◆茶匠たちが作り上げたもの
 ――磯崎新『建築における「日本的なもの」』をめぐって
 /フレドリック・ジェイムソン  訳/鈴木圭介

■新潮
・新訳『ブリキの太鼓』の響き方/中森明夫
・舞台の原理 その二/岡崎乾二郎
・セロリ/藤代 泉
・格差問題で思うこと/萱野稔人

■本
・柄谷行人『世界史の構造』/山城むつみ
・島田雅彦『悪貨』/苅部 直
・高樹のぶ子『甘苦上海〈完結版〉』/稲葉真弓
・トマス・ピンチョン『メイスン&ディクスン(上・下)』/木原善彦

■連載評論・エッセイ
・アメリカスケッチ2.0 ウェブと文化の未来を考える(五)/池田純一
・屋根裏プラハ(十二)/田中長徳
・生き延びるためのアメリカ文学(三十)/都甲幸治
・明治の表象空間(四十七)/松浦寿輝
・見えない音、聴こえない絵(七十九)/大竹伸朗

◆第43回《新潮新人賞》応募規定

編集長から

絲山秋子の超然
 絲山秋子氏「作家の超然」(100枚)の主人公は地方在住の女性作家で、後遺症が懸念される腫瘍摘出手術を受けようとしている。《ちょうど、小説によっておまえが「生かされている」と感じたように、今は病気がおまえを「生かしている」》。主人公を突き放すように「おまえ」と呼ぶ語り手が、天から垂直の視線を女性作家に注ぎ、冷酷に運命を告げる。まるで手術台の上から患者を見下ろす執刀医のように、彼女の内面をテキストの上に曝け出す。そのメスは、作家とその作品の自家撞着を切断し、ひいては、創作という行為にまつわるロマン主義的な幻想さえ、容赦なく切り刻む。デビューから七年をかけ、絲山氏はこの作品に到達した、そう言いたくなるような力作だ。
 今号では舞城王太郎氏、大城立裕氏、そしてデビュー作「流跡」で話題を呼んだ新鋭・朝吹真理子氏も読み応えのある中篇を発表。

新潮編集長 矢野 優

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

新潮とは?

文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。

■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。

■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。

■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。

雑誌主催・共催・発表誌の文学賞