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The Shincho
Monthly
June
2000
【表紙のことば】
「香川千穂(5)」藤原新也
 女の顔を表紙にする雑誌の女写真はおしなべて女をただのパッケージとして捉える。新潮の表紙ではそういったただの飾り窓のような女を撮ることをやめて、パッケージでありながらその女性の存在、そして心の内にある深みを表現するという矛盾した試みを行っている。この試みには賛否が伴う。女をただの“お飾り”として慣れ親しんできた目には刺激が強すぎるのである。とくに昨今女の身体性に畏れを抱くオタク的な感性の持ち主にこの傾向があるのが面白い。逆に写されるという受動的行為がこんなにも能動的(その人の表現)になりうるのかという驚きの声も聞かれる。


新潮5月特大号目次
蛇 行      唐 十郎

三七〇枚一挙掲載!
大都会の暗渠に蠢く幼児性愛者(ペドファイル)の影。緑の鱗光が引き寄せた「少女」が背負うヤオハン潰滅。少年の無垢が彫った足型が辿る地獄巡り――特異な構想力で、神なき現代の罪と罰を問う戦慄の反使徒行伝。

小実昌さんのこと 追悼 一〇六枚  保坂和志

短期集中連載〈第二回〉
笑いオオカミ             津島佑子

〈21世紀への対話・5〉
日本語と世界文明 大野 晋 柳瀬尚紀

〈エッセイ〉
ぼくの日本語遍歴          リービ英雄
日本語の離散、日本語への移住    今福龍太
英語という鏡に写して        片岡義男
特殊語から普通語へ         尹 相仁
小さな地球儀            佐々木瑞枝
「女手」(おんなで)の言語、「男手」(をのこで)の言語 石川九楊

午後のパレット(5)
ブルートレイン           森内俊雄

発掘 川端康成・耕治人 往復書簡
(解説・川端香男里)

願い甘え無心する新人作家と応え励まし突き放す師――。
書簡が赤裸々に示す交流記録

ナバホ国への旅        河合隼雄

平均台上の重量挙げ      杉本秀太郎
――『木村蒹葭堂のサロン』を読む

◇2000年文学の旅◇
エステルハージのこと        沼野充義

富小路禎子             高橋順子

文芸時評              曾根博義

◇発言◇
森が壊れていく   立松和平

◇ 本 ◇
司修『版画』            笠原 淳
高樹のぶ子『百年の預言』      清水良典
多和田葉子『ヒナギクのお茶の場合』 武村知子
E・ホワイト『燃える図書館』    野崎 歓
J・グリーソン『マイセン 秘法に憑かれた男たち』 宇月原晴明
◇連載◇
場所――第五回 眉山        瀬戸内寂聴
郊外の文学誌(五)         川本三郎
東大講義「人間の現在」(三十三)  立花 隆
雲の都(五)            加賀乙彦
秘事(十)             河野多惠子
天の夜曲(十)           宮本 輝

新潮◆FORUM
Special 97歳、元小誌顧問・河盛好蔵氏逝く
A Noh Dance 瀬戸内寂聴作新作能「夢浮橋」
Lecture 車谷長吉氏の文学講演
Poet   安藤元雄氏の多彩な活動
New Book シェイマス・ヒーニー訳「ベーオウルフ」
Retrospective 井上靖展開催
Theatre ホフマンの「黄金の壺」が「尿瓶」に変わり

編集長から