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The Shincho
Monthly
October
2000
【表紙のことば】
『奥村貴久美』藤原新也
 奥村君は本当に目の綺麗な子だった。
 壊れやすいビードロガラスのような目である。
 それが壊れないように、じっと何かに耐え、時には怒りの狼煙を上げる。彼女は一体何から自分を守ろうとしているのか。撮影中、私は時々そのことを考えた。目に映ったものとして、ただひとつ理解できることは、彼女は自分のそのビードロのように透明で純粋な目を、この社会や家庭の理不尽なものから守ろうとしているのだろうということである。撮影して一年が経つが彼女はいまだあのビードロの目を維持しているだろうか。


新潮10月特大号目次

葬送 平野啓一郎 長篇大作・第一部一挙五五〇枚!

作曲家ショパン、小説家ジョルジュ・サンド、画家ドラクロワ――三者の交流と齟齬・確執を通して炙り出される繊細な心理のアラベスク。愛、芸術、孤独、死。七月王政末期のパリで火花を散らす天才芸術家たちの運命を華麗な筆致に描くデビュー第三作。ついに発表開始!


リンデンバウム通りの双子  小川洋子

水の舳先  玄侑宗久   新人投稿・一七〇枚
臨済宗現役僧侶の大型新人が、祈りを込めて描く死への臨み。

父の肖像  辻井喬  新連載
一代にしてコンツェルンを築き上げた父。ついに経営者に成り切れなかった詩人・小説家の息子。長きに渡る愛憎を超えて描く傑物の素顔。

◇発言◇
介護と俳句  ねじめ正一

◇新潮◇
量のこと、質のこと          勝又浩
漱石倫敦下宿の謎           武田勝彦
遺跡から廃墟へ、廃墟から遺跡への旅  楠見朋彦

午後のパレット 10
空にはメトロノーム   森内俊雄

◇Books in my life◇
読みの年月  竹西寛子

特別企画 英米ゴルフ小説ベスト5  翻訳・解説 芝盛行

「ゴルフは人生」――。巨匠から新鋭まで、練達の筆がゴルフをめぐって人生の機微を描き出す。本邦初、ゴルフ・ファン必読の特別アンソロジー。


ザ・プロ        ジョン・アップダイク
カスバートの一撃    P・G・ウッドハウス
ミスター・フリスビー  リング・ラードナー
幻のカード       ジョン・ケンドリック・バングス
私達がお互いを知る年  イーサン・ケイニン

第三十二回新潮新人賞予選通過作品発表

「浮き舟」の構想をめぐって   辻佐保子
――書かれなかった辻邦生最後の作品

富小路禎子  第七段――神から鬼へ  高橋順子

〈21世紀への対話 10〉
日本よ、どこへ行く  谷川健一 内村剛介 桶谷秀昭

◇2000年文学の旅◇
幽霊譚としての『青白い炎』  柴田元幸

◇本◇
吉村昭『島抜け』               大河内昭爾
黒井千次『羽根と翼』             増田みず子
村田喜代子『夜のヴィーナス』         梅原稜子
伊井直行『濁った激流にかかる橋』       大鋸一正
萩原朔美『「演劇実験室 天井棧敷」の人々』  正津勉

◇文芸時評◇  川端香男里

◇連載◇
場所 ――第十回 西荻窪     瀬戸内寂聴
郊外の文学誌(十)        川本三郎
東大講義「人間の現在」(三十八) 立花隆
雲の都(十)           加賀乙彦

新潮◆FORUM
Special      『決定版 三島由紀夫全集』刊行開始
Memorial      田村隆一・三回忌
Poetry recitation 朗読者と阿波踊り
Return       〈流竄の天使〉齋藤愼爾・全句集

編集長から
第三十三回《新潮新人賞》応募規定
 

 
このホームページでは、月刊文芸雑誌「新潮」の内容紹介と記事の一部抜粋をご覧頂けます。「新潮」10月号は定価950円(税込)で全国書店にて発売中です。書店に在庫のない場合は、小社営業部読者係(電話03-3266-5111)までお問い合わせください。