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特集:世にも怖い物語

小説新潮 2009年9月号

(毎月22日発売)

特別定価859円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2009/08/22

発売日 2009/08/22
JANコード 4910047010992
定価 特別定価859円(税込)

【特集:世にも怖い物語】

◆平山夢明/鏡穴
――ある日、息子サトシのうなじに穴が開いていた。きっと俺が轢き殺して埋めた、あの奇妙な躰の老婆のせいに違いない

◆坂東眞砂子/新しい一日
――妻と別れ、会社も辞めて生家へ戻ってきた。悠々自適の新生活に浮き立つ男。唯一の気掛かりは、墓地に座り込むあの女

◆加門七海/夏陰
――夏の気配が、怖い――異様に怯える同僚は、闇夜の奥に何を見る

◆福澤徹三/骨
――従業員の不幸が続く百貨店。その建設前、私が偶然見たものは

◆雀野日名子/枕木嘔吐
――ほら、耳を澄ませてごらん。枕木があなたの鼓動を呼んでいる……

◆長島槇子/熱海
――馴染みの芸者と逢瀬を重ねた温泉街。今日は初めて妻と行く

【第二十一回日本ファンタジーノベル大賞決定】
大賞:遠田潤子/月桃夜(抄)
大賞:小田雅久仁/増大派に告ぐ(抄)
選評:荒俣 宏/井上ひさし/小谷真理/椎名 誠/鈴木光司

【特別寄稿】
◆野坂昭如/戦争童話 石のラジオ
――爆撃から少年は逃げる。お父さんが作った鉱石ラジオを持って

【祝・直木賞受賞!】
◆北村 薫/講演採録 伝わる言葉
――平安の和歌から新作落語まで。さまざまな言葉に光を当て、表現の本質を導き出す

【傑作読切】
◆真山 仁/ミツバチが消えた夏
――数百万匹が瞬く間に消えた。地元の豪農は、国は何を隠している?
◆江上 剛/狎れあいの果て
――金利自由化を目前に、談合を仕切る健たちは他行の反発に遭う
◆井上荒野/艶の通夜 最終話 松生艶を看取った看護師 芳泉杏子
――病み衰えた艶には、それでもなおどこかに美しさが残っていた
◆北原亞以子/旅路 慶次郎縁側日記
――慶次郎は無性に会いたかった。運命から逃げられなかった男に

【集中連載】
海堂 尊/マドンナ・ヴェルデ
中路啓太/豊国神宝 第四話 祟り神

【新連載開始】
◆佐藤 優/落日の帝国 私のイギリス物語
――若き著者を外交官へと育て上げた、イギリスでの濃密な12ヶ月

【特集:城山三郎の夏】
【同窓対談】一橋以来のわが道
◆大平正芳×城山三郎/「無」という政治
――昭和49年秋――一橋大OBの作家と蔵相が縦横無尽に語った、総理のあるべき姿、官僚の動かし方から学生時代の思い出まで

【単行本未収録エッセイ】
◆自作の周辺――「城山三郎全集」月報集成
――城山文学を織りなす人物たちの魅力の源泉とは。凜として生き、読者を誇りとした作家の素顔とは。名エッセイを一挙掲載

【評伝】
◆森 史朗/城山三郎が遺したもの
――作家はなぜ戦争を描いたのか。軍国少年時代、海軍での失望、妻との日々…。『指揮官たちの特攻』へと連なる執筆の原点

【ドラマの現場】
◆江上 剛/「官僚たちの夏」に熱き男たちの闘いを見た
――戦後日本の復興にかけた通産官僚──今夏、豪華俳優陣で城山作品が映像化。当時を克明に再現した収録現場を作家が訪ねた

【好評連載小説】
赤川次郎/子子家庭の同姓同名 後編
北森 鴻/鏡連殺
高橋克彦/鬼哭鬼九郎
西村京太郎/岐阜羽島駅25時
楡 周平/虚空の冠
貫井徳郎/灰色の虹
宮部みゆき/ソロモンの偽証
櫻井よしこ/母と過ごす至福の日々

【連載エッセイ】
阿刀田 高/イソップを楽しむために
嵐山光三郎/文士の舌
太田和彦/居酒屋百名山
柴門ふみ/恋のタネ
山田詠美/ライ麦畑で熱血ポンちゃん
山本益博/マスヒロのあくび指南
河口俊彦/盤上の人生 盤外の勝負
フジモトマサル/終電車ならとっくに行ってしまった

第五回「新潮エンターテインメント大賞」最終候補作発表
第六回「新潮エンターテインメント大賞」募集要項
川柳うきよ大学/小沢昭一
次号予告

編集長から

城山三郎の夏、怖い夏
 城山三郎氏が世を去って三度目の夏を迎えた。折から城山氏原作のドラマ「官僚たちの夏」が好評である。題名の「夏」は官僚の人事の季節を指すと同時に、高度成長に向かう「日本の夏」でもあっただろう。
 泳ぎが好きだった城山氏にとっても、夏は好きな季節だったという。今月の特集「城山三郎の夏」で一挙掲載する単行本未収録エッセイの中で、氏はそう記している。大平正芳氏との秘蔵対談では、総理の条件、官僚の操縦法にまで話が及んだ。軍国少年だった戦中から、『指揮官たちの特攻』『そうか、もう君はいないのか』を遺した晩年まで、城山氏の戦争と死生観が浮かび上がる森史朗氏の評伝、江上剛氏のドラマ撮影現場ルポと併せて読み応え十分の筈。
 小説特集は「世にも怖い物語」。平山夢明氏、坂東眞砂子氏を始め、怖過ぎる小説を六編。さらに夏が来る度に読み返したくなる名作「火垂るの墓」の野坂昭如氏が、精魂傾けた戦争童話も必読。


小説新潮編集長 高澤恒夫

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小説新潮とは?

 小説新潮は戦後まもない一九四七年に創刊されました。以来、文学史に名をとどめる作家で、小説新潮に登場したことのない名前を探すほうが困難なほど、数多の文豪、巨匠、新進気鋭による名作、名シリーズが誌面を飾ってきました。

 時代は変わり、新しい作家、若い書き手も次々に現れます。変わらないのは「小説を読む楽しみ」を大切にすること。現代小説、時代小説、ミステリー、恋愛、官能……。ジャンルにこだわらず、クオリティの高い、心を揺り動かされる小説を掲載していきます。

 小説と並ぶ両輪が、エッセイと豊富な読物です。小説新潮では、毎号、ボリュームのある情報特集や作家特集を用意しています。読み応えは新書一冊分。誰かに教えたくなる情報が、きっとあります。

 目指すのは、大人の小説、大人の愉しみが、ぎっしり詰まった雑誌です。経験を重ね、人生の陰翳を知る読者だからこそ楽しめる小説、今だからこそ必要とされる情報を、ぎっしり詰め込んでいきたい。

 言葉を換えれば、「もうひとつの人生を体験する小説誌」。時には主人公たちの息遣いに寄り添い、またある時には人生の新たな側面を見つけるささやかなヒントになれば――そう願っています。
 ほんの少しかもしれませんが、小説新潮で毎月の生活がきっと変わるはずです。

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