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特集:大人のための青春小説「あの頃を遠く離れて」

小説新潮 2010年10月号

(毎月22日発売)

943円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2010/09/22

発売日 2010/09/22
JANコード 4910047011005
定価 943円(税込)

【特集:大人のための青春小説】
「あの頃を遠く離れて」

以前、ある人と青春小説について話していたとき、ふいに「『青春』とは、どういう時期を差すと思いますか?」と訊かれ、返答に窮した。
すると、目の前の人はゆっくりと口を開き、「何者かになりたくて足掻いている時期を、『青春時代』と言うんじゃないかと思うんですよ」と答えた。
もう何者にもなれないんだと諦めてしまったら、そこで青春は終わる。一方で、何者かになってしまっても、やはり青春は終わる。そのときは、ひどく残酷に聞こえたが、その残酷さが、青春の本質なのかもしれない。それ以来、ことあるごとに、自分は今、青春を生きているのだろうか? と自問するようになった。
この特集がきっかけで、青春について改めて考えていただけたら、とても嬉しい。

◆川島 誠/はじめての夏
──ある朝、すべてが違って見えた。ぼくは何でもできるような気がした

◆橋本 紡/
──都心で遭遇した激しい雨の中で、長らく忘れていたものを僕は見つけた

◆三羽省吾/俺、もうオナニーだけでいいや。
──俺たち童貞の目標は一つだけ。でも、アイツのひと言が波紋を呼んで…

◆久保寺健彦/パパはドラキュラ
──ゴミと空想に守られた世界で、修業中のオオカミ人間と過ごした四日間

◆井口ひろみ/おんなじ羽のゴジラがいる
──強面な柔道部員が唯一のファン仲間って。俺の高校生活、どーなんの!?

◆小島達矢/同居人
──三人が六畳間に揃った17時。秘密は暴かれ、理不尽な現実が動き出す

【新連載エッセイ】
◆松井今朝子/江戸のもてなし
──祇園の料理屋の娘でもある著者が、江戸の「食」を楽しく語る

【新鋭連作スタート】
◆大崎 梢/絵本の時間 ふたつめの庭
──にぎやかな保育園で美南が出会う、誰かのため息と切ない謎

【人気読切連作】
◆北村 薫/割れても末に 飲めば都
──明日は彼の両親に会う大事な日…でもわかって、私は編集者なの!
◆重松 清/サンタの寄り道
──誰も笑顔で迎えられなかった、家族4人初めてのクリスマス
◆安住洋子/桜の風 小石川診療余話
──養母の病、養生所への不満、悩み多き医師・淳之祐の新しい患者は

【人気連作 完結】
◆江上 剛/男たちの遺言
──不正融資事件に捜査のメスが。健は銀行崩壊の危機に直面する

【12ヶ月連続 総天然色付録】しゃばけ花札

【連載第二回】

◆沢木耕太郎/なりすます ポーカー・フェース
──勘違いからニセ有名人まで。人が別人になりすます理由とは?

◆小路幸也/荻窪 小助川医院
──シェアハウスのメンバーを救うため、僕に与えられた秘密の役割

◆原田マハ/夢をみた J'ai reve
──NY近代美術館の下っ端学芸員・ティムに、突然届いた謎の手紙

【グラビア連載第二回】
福田 浩・松下幸子/江戸のもてなし

【連載エッセイ】
柴門ふみ/大人の恋力
酒井順子/徒然草REMIX
佐藤 優/落日の帝国 私のイギリス物語
山田詠美/ライ麦畑で熱血ポンちゃん
河口俊彦/盤上の人生 盤外の勝負

櫻井よしこ/母と過ごす至福の日々

【好評連載小説】
あさのあつこ/たまゆら
荒山 徹/蓋島伝――長宗我部元親秘録
飯嶋和一/星夜航行
池井戸 潤/鋼のアリス
石田衣良/明日のマーチ
大沢在昌/冬芽の人
今野 敏/転迷 隠蔽捜査4
佐々木 譲/警官の条件
谷村志穂/尋ね人
西村京太郎/阪神間三十六・九キロの殺人
楡 周平/虚空の冠
宮部みゆき/ソロモンの偽証
山本一力/べんけい飛脚

第九回「小林秀雄賞・新潮ドキュメント賞」決定発表
第七回「新潮エンターテインメント大賞」募集要項
川柳うきよ大学/小沢昭一
編集後記

編集長から

「青春時代」とはいつか、と聞かれたら
 突然だけれども、「『青春時代』とは、いつからいつまでを差すか?」と問われたら、何と答えるだろうか。年齢なのか、気持ちなのか、見た目なのか――。
 ある人は、「何者かになろうと足掻いている時期」を、「青春時代」と呼ぶのだと言った。
 何者にもなれないと諦めてしまったら、そこで青春は終わる。また、何者かになってしまっても、やはり青春は終わる。聞いたとき、なるほど、と思った。そして、ならば死ぬまで青春時代でいることも可能ではないか、と嬉しくもなった。
 ただし、足掻き続けるのは、容易なことではない。ただ単に何者でもない状態、というのとは訳が違う。明確な目標をもって、それに向かって努力する、ということだ。思えば、十代の頃は、目的の大小を問わず、そんな日々の繰り返しだった。
 そんなことを考えながら、今回は青春小説の特集を組んだ。単なる「若い人たちの物語」、を青春小説と言うのではない。その中にある「足掻き」が、剥き出しであればあるほど、青春は鮮度を持って届くのだと思う。
 渦中にいなければ分からない青春もあれば、過ぎ去ってみなければ分からない青春もある。どちらの立場に居ても楽しめる特集になったと自負している。


小説新潮編集長 新井久幸

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 目指すのは、大人の小説、大人の愉しみが、ぎっしり詰まった雑誌です。経験を重ね、人生の陰翳を知る読者だからこそ楽しめる小説、今だからこそ必要とされる情報を、ぎっしり詰め込んでいきたい。

 言葉を換えれば、「もうひとつの人生を体験する小説誌」。時には主人公たちの息遣いに寄り添い、またある時には人生の新たな側面を見つけるささやかなヒントになれば――そう願っています。
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