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特集【Kwaidan 2011】

小説新潮 2011年8月号

(毎月22日発売)

943円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2011/07/22

発売日 2011/07/22
JANコード 4910047010817
定価 943円(税込)

特集【Kwaidan 2011】

日本人ほど、怪談が好きな民族はないだろう。
修学旅行、キャンプ、部活の合宿、
仲間が集う夜には必ず怪談があり、
何人か寄れば、一人くらいは怖い話の得意な人間がいたはずだ。
話し上手にかかると、聞いたことのある内容でも怖かったし、
自分も真似して誰かを怖がらせてやろうと思ったものだ。
日本の怪談の大きな特徴は、この「語り」にあるだろう。
誰かに聞いた話、を自分なりの言葉に替えて、新たに伝えていく。
小泉八雲は、そういった民間伝承を集めて独自に脚色し、
「Kwaidan(怪談)」という本にまとめた。
今日我々が知っている有名な怪談の多くは、この本に依っている。
そして、「語り」であるが故のもう一つの特徴は、
聞き手との関わりの中で生まれるということだ。
つまり、怪談は一人では成立しないのである。
仲間内で行う夏の夜の楽しみを再現してみたくて、
今回の特集を企画した。
編集部と一緒に怪談をしている気分になってもらえたら、
と願っている。

◆稲川淳二/【インタビュー】怪談の作法
──怪談界の第一人者が明かす、子供時代からの怪体験、怪を語る秘訣とは
◆稲川淳二/【2011 新作怪談】憑いてるタクシー

◆竹本健治/鬼ごっこ
──廃墟の洋館。ここに入っていかねばならない。それが僕らの使命だ――

◆三津田信三/夢の家
──うちにお寄りになって……男が見る夢で、女は微笑みながら手招きする

◆堀川アサコ/カストリゲンチャ
──敗戦から5年。ジンタの音にかぶさる号外の声、真夏に氷漬けの死体?

◆中山市朗/怪異蒐集談 屍女
──「僕の彼女って死んでるんでしょうか?」不意の電話が、怪を呼び寄せる

◆長江俊和/原罪SHOW
──殺人見学ツアーに潜入したテレビディレクターを待っていたのは――

◆鈴木光司/樹海
──人生の最期ぐらい自分で幕を引きたい。男は富士の麓に向かった――

【好評シリーズ読み切り】
「慶次郎縁側日記」待望の復活!

◆北原亞以子/乗合船 慶次郎縁側日記
──人生は乗合船。行き先を見失っていた俺の船に、あいつがぽんと乗り込んできたんだ……北原節絶好調、「慶次郎縁側日記」満を持しての再開

【連載エッセイ】
阿刀田 高/源氏物語を知っていますか
柴門ふみ/大人の恋力
嶽本野ばら/地嶽八景亡者戯
山田詠美/熱血ポンちゃんから騒ぎ

【江戸のもてなし】最終回
巻頭グラビア/福田 浩・松下幸子
連載エッセイ/松井今朝子
──様々な日記や記録をもとに、江戸の宴会を再現する好評連載

【連載第二回】

◆大崎善生/赦しの鬼 団鬼六の生涯
──相場と女、そして夜逃げ。青年となった鬼六を、奔放な父が翻弄する

◆佐藤 優/落日の帝国 プラハの憂鬱
──あるチェコ人神学者との邂逅。その時、若き日の著者に転機が訪れる

◆高橋秀実/僕たちのセオリー 実録・開成高校硬式野球部
──東東京予選でベスト16まで勝ち進んだ名門進学校。その強さの秘密とは

チャリティ同人誌「文芸あねもね」刊行に寄せて

──「R-18文学賞」出身の作家たちが電子書籍を作った。東北のために
山本文緒/豊島ミホ

第三回さくらんぼ文学新人賞決定発表
【選評】唯川 恵/北上次郎
【受賞作】記憶 中村玲子
──じいさんが死に、妻は壊れて入院した。全てを失くした俺の前に、じいさんの語った戦時中の光景が蘇り、過去と現在が交錯する

【好評連載小説】
赤川次郎/月光の誘惑
浅田次郎/赤猫異聞
荒山 徹/蓋島伝――長宗我部元親秘録
飯嶋和一/星夜航行
池井戸 潤/鋼のアリス
柴田よしき/さかさまの物語IV 名前のない古道具屋の夜
白川 道/神様が降りてくる
西村京太郎/サンライズ出雲殺人事件
橋本 紡/ハチミツ 最終回
蜂谷 涼/鬼の捨て子
葉室 麟/春風伝――高杉晋作・萩花の詩
本多孝好/魔術師の視線
宮部みゆき/ソロモンの偽証
山本一力/べんけい飛脚

第二十三回「日本ファンタジーノベル大賞」候補作発表
第七回「新潮エンターテインメント大賞」中間発表
第八回「新潮エンターテインメント大賞」募集要項
次号予告/編集後記

編集長から

共に怪談の一夜を
 子供の頃から、怖い話が好きだった。しかし自分には霊感の類がないらしく、見たり感じたりした経験はない。たまに友人から、知人の話として怪談を聞いたりすると、軽い嫉妬を覚えたりしたものだ。とはいえ、大抵の場合、知人といっても〈知人の知人〉だったりして、直接の知り合いだった試しはない。
 日本の「怪談」の特徴の一つは、この「語り」にあるのではないか。「友だちに聞いた話なんだけど」で始まる、伝聞と口伝によって形成された物語だ。そこで聞いた話を、次は自分が同じ前口上で伝えていく。その過程で物語は少しずつ熟成され、脚色されていく。それが「怪談」の面白みと醍醐味ではないかと思う。
 その「怪談」の悦びを再現できないかと思い、今回の特集を企画した。ご寄稿いただいた書き手の方々と、あるいは我々編集部員と、共に車座になって、夏の夜を過ごしている気分になっていただけたら幸いである。


小説新潮編集長 新井久幸

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小説新潮とは?

 小説新潮は戦後まもない一九四七年に創刊されました。以来、文学史に名をとどめる作家で、小説新潮に登場したことのない名前を探すほうが困難なほど、数多の文豪、巨匠、新進気鋭による名作、名シリーズが誌面を飾ってきました。

 時代は変わり、新しい作家、若い書き手も次々に現れます。変わらないのは「小説を読む楽しみ」を大切にすること。現代小説、時代小説、ミステリー、恋愛、官能……。ジャンルにこだわらず、クオリティの高い、心を揺り動かされる小説を掲載していきます。

 小説と並ぶ両輪が、エッセイと豊富な読物です。小説新潮では、毎号、ボリュームのある情報特集や作家特集を用意しています。読み応えは新書一冊分。誰かに教えたくなる情報が、きっとあります。

 目指すのは、大人の小説、大人の愉しみが、ぎっしり詰まった雑誌です。経験を重ね、人生の陰翳を知る読者だからこそ楽しめる小説、今だからこそ必要とされる情報を、ぎっしり詰め込んでいきたい。

 言葉を換えれば、「もうひとつの人生を体験する小説誌」。時には主人公たちの息遣いに寄り添い、またある時には人生の新たな側面を見つけるささやかなヒントになれば――そう願っています。
 ほんの少しかもしれませんが、小説新潮で毎月の生活がきっと変わるはずです。

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