ホーム > 雑誌 > 雑誌詳細:小説新潮 > 雑誌詳細:小説新潮 2012年6月号

【特集】医療小説新世紀 海堂 尊/久坂部 羊

小説新潮 2012年6月号

(毎月22日発売)

特別定価1,047円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2012/05/22

発売日 2012/05/22
JANコード 4910047010626
定価 特別定価1,047円(税込)

【特集】医療小説新世紀

昨年の十一月号で「医療小説」を特集した際、そのエンターテインメントとしてのレベルの高さをご紹介したばかりだが、今年から新たな文学賞として「日本医療小説大賞」が創設された。その第一回の発表を行えることを、とても光栄に思う。
読み切り作品と受賞作の抄録だけでなく、医療小説のブックガイドも備えたので、このジャンルの幅の広さを、実作共々実感していただきたい。

◆海堂 尊/健康増進モデル事業
――目指せ健康日本一! お国の手紙一通で俺の生活は急変した

◆久坂部 羊/深夜の病棟
――父親の死因を巡り食い違う、医師たちの証言。真実はどこに

◆「第一回日本医療小説大賞」決定発表
――受賞の言葉/選評/創設にあたって/ブックガイド「医療小説」事情

受賞作(抄録)
帚木蓬生/蠅の街(『蠅の帝国 軍医たちの黙示録』より)

【特集】Athlete Seller――スポーツ小説の誘惑

今夏のロンドンオリンピックを楽しみにしている方も多いだろう。そこで今回は、スポーツ小説の特集を組むことにした。全体を俯瞰するダイナミックな見方は、テレビ中継には敵わないかもしれない。だが、競技者の視点に立ち、心理的な駆け引きを丁寧に描くことは、活字でしか味わえない楽しみのはずだ。また、実際にやったことのない競技を経験した気分にさせてくれるという疑似体験の要素もある。この特集が、スポーツとの新しい出会いになれば幸いである。

◆吉野万理子/ブレイクチャンス
――全豪ベスト8を掴んだ季里乃は、勢いでプロ宣言するが

◆須藤靖貴/組み手きびしく
――丈史ら柔道部員にとって、あのオヤジの命令は絶対だった

◆川島 誠/高村と運動
――はじめて官能小説を書いた高村にスポーツ小説の依頼が

◆平山 讓/四十歳のジャン
――衰えを感じ始めた将人。競輪選手として生き残る道は……

【新連載スタート】
◆はらだみずき/ここからはじまる
――プロサッカー選手になりたい――父子の夢の向かう先にあるものは

◆西村京太郎/十津川警部 新宮に徐福伝説の謎を追う
――刺殺事件の現場に残された私家本が、十津川を伝説の地へと導く

【連載第二回】
◆宮城谷昌光/随想 春夏秋冬
――懸命に書店営業に勤しんだ遠い夏。出会いが人生を変えていった

◆中野 翠/いちまき ある家老の娘の物語
――曾祖母・みわは家老の娘だった! 彼女が幕末になめた辛酸の日々

◆誉田哲也/ドンナ ビアンカ
――誘拐事件の捜査本部に招集された久江。被害者は男性が……二人?

【連載ノンフィクション】
◆大崎善生/赦しの鬼 団鬼六の生涯 最終回

【好評連載小説】
赤川次郎/月光の誘惑
飯嶋和一/星夜航行
井上荒野/ほろびぬ姫
熊谷達也/海峡の絆
近藤史恵/キアズマ
今野 敏/宰領 隠蔽捜査5
佐々木 譲/獅子の城塞
柴田よしき/貯められない小銭IX 名前のない古道具屋の夜
白川 道/神様が降りてくる
新城カズマ/島津戦記
田口ランディ/サンカーラ――この世の断片をたぐり寄せて
野中 柊/波止場にて
葉室 麟/春風伝――高杉晋作・萩花の詩
坂東眞砂子/Hidden times
藤田宜永/風屋敷の告白 還暦探偵
本多孝好/魔術師の視線
真山 仁/沈黙の代償
向田邦子 原作 烏兎沼佳代 構成/続・寺内貫太郎一家
山本一力/べんけい飛脚
米澤穂信/リカーシブル

【好評読み切り連作】
◆大崎 梢/発熱の午後 ふたつめの庭
――カツミと二人きりで出かけた美南は、思わぬ告白をされて

【連載エッセイ】
阿刀田 高/源氏物語を知っていますか
北村 薫/うた合わせ
柴門ふみ/大人の恋力
佐藤 優/落日の帝国 プラハの憂鬱
高山なおみ/今日もいち日、ぶじ日記
嶽本野ばら/地嶽八景亡者戯
ペリー荻野/ちょんまげ ザ・バトル
山田詠美/熱血ポンちゃんから騒ぎ

第三十一回「新田次郎文学賞」決定発表
次号予告/編集後記

編集長から

「日本医療小説大賞」創設
 近年、医療に携わる人を主人公にしたフィクションが増えてきた。小説だけでなく、漫画やテレビドラマでもよく目にする。生死にかかわる局面が多い分、ドラマが生まれやすいということもあるだろうが、おそらくはそれだけ医療そのものに関心が寄せられているということであり、医療現場が精神的に身近になってきた、ということでもあるだろう。
 そういった機運を背景に、今年から新たな文学賞が創設された。「日本医療小説大賞」である。その設立の経緯や受賞作は、ぜひ誌面でご確認いただきたい。広い意味で捉えた「医療小説」のブックガイドも掲載しているので、お手元で活用していただければ幸いである。
 また、ロンドンオリンピックを前に、「Athlete Seller」と題し、スポーツ小説の特集も同時に企画した。活字でしか表現できないスポーツの妙味を、じっくりと味わっていただけることと思う。


小説新潮編集長 新井久幸

バックナンバー

雑誌バックナンバーの販売は「発売号」と「その前の号」のみとなります。ご了承ください。

雑誌から生まれた本

小説新潮とは?

 小説新潮は戦後まもない一九四七年に創刊されました。以来、文学史に名をとどめる作家で、小説新潮に登場したことのない名前を探すほうが困難なほど、数多の文豪、巨匠、新進気鋭による名作、名シリーズが誌面を飾ってきました。

 時代は変わり、新しい作家、若い書き手も次々に現れます。変わらないのは「小説を読む楽しみ」を大切にすること。現代小説、時代小説、ミステリー、恋愛、官能……。ジャンルにこだわらず、クオリティの高い、心を揺り動かされる小説を掲載していきます。

 小説と並ぶ両輪が、エッセイと豊富な読物です。小説新潮では、毎号、ボリュームのある情報特集や作家特集を用意しています。読み応えは新書一冊分。誰かに教えたくなる情報が、きっとあります。

 目指すのは、大人の小説、大人の愉しみが、ぎっしり詰まった雑誌です。経験を重ね、人生の陰翳を知る読者だからこそ楽しめる小説、今だからこそ必要とされる情報を、ぎっしり詰め込んでいきたい。

 言葉を換えれば、「もうひとつの人生を体験する小説誌」。時には主人公たちの息遣いに寄り添い、またある時には人生の新たな側面を見つけるささやかなヒントになれば――そう願っています。
 ほんの少しかもしれませんが、小説新潮で毎月の生活がきっと変わるはずです。

雑誌主催・共催・発表誌の文学賞