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特集【Fantastic Fantasy~Fantasy Seller 2012】勝山海百合/小田雅久仁/里見 蘭/石野 晶/岩下悠子/日野俊太郎/宇月原晴明

小説新潮 2012年9月号

(毎月22日発売)

特別定価1,047円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2012/08/22

発売日 2012/08/22
JANコード 4910047010923
定価 特別定価1,047円(税込)

特集【Fantastic Fantasy~Fantasy Seller 2012】

遠い昔、はるかかなたの世界で――、
というような物語ももちろんいいが、
現実のとなりにぽっかりと口を開けた、
「あり得たかも知れない未来」も、
一つのファンタジーとは言えないだろうか。
「あの時、ああしていれば」という後悔は、
誰でも一度は経験があるだろう。
日常積み重なる無数の分岐を考えれば、
今自分が立っている場所は、
無限の可能性の中のたった一つである。
そしてまた、
一つの選択が新しい世界の扉を開けようとしている。
「小説新潮」を手に取った方の世界へ、ようこそ!

◆勝山海百合/鳥語不同
――鳥のさえずりには一つとして同じものはない――再訪できない「むら」に魅入られた人々の行く末に、待ち受けているものは

◆小田雅久仁/少女が重みを返すとき
――あの人は、“息”を使って手品のようなものをやった。少女の前でタンポポの蕾に“息”を吹きかけると、ふわっと花が開くのだ

◆里見 蘭/邦子さんのチャンピオン
――「質問はなしで、私を三日間監視して下さい」探偵・多良見に舞い込んだ不可解な依頼。彼女は何を知りたがっているのか?

◆石野 晶/スノーボール
――初夏に降る雪の下、懐かしいその瞳に出会った時、音もなく私の時間がまき戻る――。彼が世界の全てだった、少女の頃に

◆岩下悠子/熄えた祭り
――ほんの出来心だったのに――幼時のトラウマに悩む女性監督・美山は、新ドラマの撮影に打ち込もうとするが上手くいかず…

◆日野俊太郎/嵯峨野線レイルローデッド
――同級生を見返したいけど、良い写真が撮れない。でも、夕暮れの踏み切りで聞いた謎の声のおかげで、奇跡の一枚が撮れたんだ!

◆宇月原晴明/桜の森の満開の島
――かの国の春の景色が今も眼裏に浮かびます。龍の末裔の美しい王子と、わが師である花の上人が出会ったのも桜の頃でございました

【第二十四回日本ファンタジーノベル大賞決定】

【優秀賞】関 俊介/ワーカー(抄)
――突然変異したアリが、ヒト社会を支える!? 驚天動地の超現実!

【優秀賞】三國青葉/朝の容花(抄)
――魑魅魍魎てんこ盛り。掟破りの時代活劇、ただいま開幕!

【選評】荒俣 宏/小谷真理/椎名 誠/鈴木光司/萩尾望都

【シリーズ読み切り・最終話】
◆朱川湊人/そら色のマリア
――突然逝ってしまった君は、何を想っていたのかな? 事件の真相を追う内に浮かび上がったのは、孤独な殺人者の後ろ姿で……

【好評連載小説】
赤川次郎/月光の誘惑
飯嶋和一/星夜航行
乙川優三郎/脊梁山脈
熊谷達也/海峡の絆
近藤史恵/キアズマ
今野 敏/宰領 隠蔽捜査5
佐々木 譲/獅子の城塞
柴田よしき/底のないポケットIII 名前のない古道具屋の夜
白川 道/神様が降りてくる
新城カズマ/島津戦記
西村京太郎/十津川警部 新宮に徐福伝説の謎を追う
野中 柊/波止場にて
坂東眞砂子/Hidden times 最終回
藤田宜永/風屋敷の告白 還暦探偵
誉田哲也/ドンナ ビアンカ
真山 仁/沈黙の代償
向田邦子 原作 烏兎沼佳代 構成/続・寺内貫太郎一家
山本一力/べんけい飛脚

【連載エッセイ】
阿刀田 高/源氏物語を知っていますか 最終回
北村 薫/うた合わせ
柴門ふみ/大人の恋力
佐藤 優/落日の帝国 プラハの憂鬱
高山なおみ/今日もいち日、ぶじ日記
中野 翠/いちまき ある家老の娘の物語
ペリー荻野/ちょんまげ ザ・バトル
宮城谷昌光/随想 春夏秋冬
山田詠美/熱血ポンちゃんから騒ぎ

第八回「新潮エンターテインメント大賞」最終候補作発表
次号予告/編集後記

編集長から

「小説新潮」のある世界
 ファンタジーと聞いて思い浮かぶのは、人それぞれだろう。映画やゲームの影響で、剣と魔法の世界をイメージする人が多いかもしれない。だが、非日常の物語ということで言えば、「現実ではない世界」は、すべて幻想の産物としてのファンタジーとは言えないだろうか。
 重要な選択をした後で、「あのとき別の決断をしていれば」という後悔は、大なり小なりあるものだ。日常生活は、程度の差こそあれ、そうした決断の積み重ねだから、無限の分岐の果てに、今立っている場所がある。小さな選択が出会いを呼び、それが大きな運命の扉を開けることがある。それは、選んで進んでみないと分からない。卑近な例で言えば、「小説新潮」を読む選択と、読まない選択がある。今まで手に取る機会のなかった方には、是非この機会に新たな選択を、とお薦めしたい。そこには、今までの生活にはなかった、何か新しい出会いや刺激が待っているはずである。


小説新潮編集長 新井久幸

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小説新潮とは?

 小説新潮は戦後まもない一九四七年に創刊されました。以来、文学史に名をとどめる作家で、小説新潮に登場したことのない名前を探すほうが困難なほど、数多の文豪、巨匠、新進気鋭による名作、名シリーズが誌面を飾ってきました。

 時代は変わり、新しい作家、若い書き手も次々に現れます。変わらないのは「小説を読む楽しみ」を大切にすること。現代小説、時代小説、ミステリー、恋愛、官能……。ジャンルにこだわらず、クオリティの高い、心を揺り動かされる小説を掲載していきます。

 小説と並ぶ両輪が、エッセイと豊富な読物です。小説新潮では、毎号、ボリュームのある情報特集や作家特集を用意しています。読み応えは新書一冊分。誰かに教えたくなる情報が、きっとあります。

 目指すのは、大人の小説、大人の愉しみが、ぎっしり詰まった雑誌です。経験を重ね、人生の陰翳を知る読者だからこそ楽しめる小説、今だからこそ必要とされる情報を、ぎっしり詰め込んでいきたい。

 言葉を換えれば、「もうひとつの人生を体験する小説誌」。時には主人公たちの息遣いに寄り添い、またある時には人生の新たな側面を見つけるささやかなヒントになれば――そう願っています。
 ほんの少しかもしれませんが、小説新潮で毎月の生活がきっと変わるはずです。

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