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特集【その夏の日の怪】北村 薫/日和聡子/さやか/海猫沢めろん/前川知大/恩田 陸

小説新潮 2014年8月号

(毎月22日発売)

947円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2014/07/22

発売日 2014/07/22
JANコード 4910047010848
定価 947円(税込)

特集【その夏の日の怪】

 ひと夏の恋、ひと夏の思い出、夏のよばなし等々、「夏」にまつわる言葉には、特定、あるいは特殊な記憶を喚起させるものが多い。夏以外に起きた出来事も多々あるだろうに、季節を他に置き換えると、途端に趣がなくなってしまう。
 それは、夏休みという長期休暇が思い出作りに適してるからであろうし、強烈な陽射しと暑さが、気分を開放的にさせるからでもあろう。
 そしてもう一つ、夏ほど「あの」とか「その」という言葉が似合う季節もない。誰しも反射的に思い浮かべる特定の夏の光景が、一つや二つあるだろう。それが、幸せな景色かどうかは別として……。
 今年の八月号も、ちょっと変わった趣向で、あなたに最新の「夏」をお届けする。

◆日和聡子/渓谷
――振り回されながらも男の才能に惹かれる女。逃避行めいた旅の終着は

◆北村 薫/誕生日(アニヴエルセール)
――輝かしい兄と影のような俺。人生は名づけられた時に決まるのか

◆さやか/うしろの、正面
―――――――――――――――――――ねえ、誰かそこにいる?

◆海猫沢めろん/破落戸(ごろつき)の話
――偶然再会した半グレの友人。強面の彼が語り出した歪な思い出とは

◆前川知大/ヤブ蚊と母の血
――あの日からアユムの生活は一変した。母の残した菜園には秘密が?

◆恩田 陸/あまりりす
――でっかい声出すんでない。呼ばれたら、あまりりすはすぐに来るぞ

【新連載】
◆今野 敏/去就 隠蔽捜査6
――ストーカー対策班を作れ! 警察庁からの命に大森署署長の竜崎は

【連載第二回】
◆飯嶋和一/翼人のかたみ
――評定所へ箱訴された郡上藩主の悪政。源吉は自分の境遇を重ね――

【特別読み切り】
◆赤川次郎/あるVIPの日々(後編) シリーズ「闇からの声」
――ごく普通のOLに、ある日突然SPがついた。その理由は――

◆宇月原晴明/大盗袴垂(だいとうはかまだれ)の災難
――悠々と都に帰還した天下の大泥棒を待っていたのは、二人の鬼だった

◆村山由佳/バタフライ
――女社長に持ち掛けられた期間限定の愛人契約。俺の体が好きと言うが

◆唯川 恵/轆轤首(ろくろくび) 異譚
――夏の夜、安宿を訪れた男。懐の膨らみ具合に女主人の目が光るが

【シリーズ「しゃばけ漫画」】
◆萩尾望都/十二ノ巻 うそうそ 箱根の湯治についての仁吉と佐助の反省談議(ミーティング)
――兄や達が消え、若だんなに迫る剣呑な輩たち……。超豪華コラボレーション、32Pを大掲載!!

【好評グラビア】
◆グラビア 青山裕企/お仕事ちゃん
――子供が親の職場で働いてみたら? 大人気の写真家が写し出す親子像

【連載コラム】
◆本の森
――新刊文芸書の中から、選りすぐりのお薦めを紹介
〈仕事・人生〉吉田大助/〈医療・介護〉東 えりか/〈ホラー・ミステリ〉村上貴史

【好評連載小説】
阿刀田 高/花を訪ねて 絵のない肖像8
伊東 潤/死んでたまるか
江上 剛/鬼忘島 金融検査官・伊地知の密命
小川 糸/サーカスの夜に
木内 昇/球道恋々
京極夏彦/ヒトでなし
柴田よしき/最後の選択III 名前のない古道具屋の夜
杉山隆男/メイのいない五月
中脇初枝/川にすむ神は水にくすぐられてわらう
西村京太郎/金沢が歴史を創った日
乃南アサ/水曜日の凱歌 最終回
葉室 麟/鬼神の如く 黒田叛臣伝
原田マハ/暗幕のゲルニカ
森 達也/チャンキ
山本一力/マックでよい

【連載エッセイ】
北村 薫/うた合わせ
柴門ふみ/大人恋愛塾
佐藤 優/落日の帝国 プラハの憂鬱
椎名 誠/じいじいのヨロコビ
ペリー荻野/ちょんまげ ザ・バトル
山田詠美/時計じかけの熱血ポンちゃん

第一回「新潮ミステリー大賞」候補作発表
第二回「新潮ミステリー大賞」募集要項
次号予告/編集後記

編集長から

虚と実の合わせ鏡
 八月号は、毎年恒例の「怖い話」特集をお贈りする。去年に引き続き、企画そのものにちょっとした趣向を凝らしてある。
 この「小説新潮」八月号は、七月の二十二日から店頭に並び始め(一部、遅れる場合もあります)、八月の二十二日に九月号が出るまで、つまり八月二十一日までの一ヶ月間、店頭に並ぶことになる。
 今回の特集は、ご寄稿いただいた皆さんに数日ずつ分担いただいて、その一ヵ月間の出来事が描かれている。その気になれば、実際の日付と同じ日に、リアルタイムで楽しむことができる。各編の扉に日付があるので、ご参照いただきたい。
 物語の中とはいえ、自分が生きている現実の今日と、活字の中の虚構の一日が一緒になるなど、そう起こることではない。
 真夜中の合わせ鏡ではないが、こうした日付の合わせ鏡に身を置くことで、虚実のあわいに落ちてゆく快感を味わうことができるかもしれない。
 それこそが、楽しみとしての怪異、と付き合う方法なのだと思う。


小説新潮編集長 新井久幸

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

小説新潮とは?

 小説新潮は戦後まもない一九四七年に創刊されました。以来、文学史に名をとどめる作家で、小説新潮に登場したことのない名前を探すほうが困難なほど、数多の文豪、巨匠、新進気鋭による名作、名シリーズが誌面を飾ってきました。

 時代は変わり、新しい作家、若い書き手も次々に現れます。変わらないのは「小説を読む楽しみ」を大切にすること。現代小説、時代小説、ミステリー、恋愛、官能……。ジャンルにこだわらず、クオリティの高い、心を揺り動かされる小説を掲載していきます。

 小説と並ぶ両輪が、エッセイと豊富な読物です。小説新潮では、毎号、ボリュームのある情報特集や作家特集を用意しています。読み応えは新書一冊分。誰かに教えたくなる情報が、きっとあります。

 目指すのは、大人の小説、大人の愉しみが、ぎっしり詰まった雑誌です。経験を重ね、人生の陰翳を知る読者だからこそ楽しめる小説、今だからこそ必要とされる情報を、ぎっしり詰め込んでいきたい。

 言葉を換えれば、「もうひとつの人生を体験する小説誌」。時には主人公たちの息遣いに寄り添い、またある時には人生の新たな側面を見つけるささやかなヒントになれば――そう願っています。
 ほんの少しかもしれませんが、小説新潮で毎月の生活がきっと変わるはずです。

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