第4回 受賞作品
大賞受賞
――小説を書き始めたのはいつからですか?
中学生ぐらいのときから書いていました。大学ノートに思いついたことをバーッと書くみたいな感じです。高校に入ってワープロを買ってもらって、割と整理できるようになったんですけど、でも完成させるところまではいかなくて、短大に入ってちょっとやめちゃって、1~2年ぐらい前からまた書き始めました。それで少し前に、小説って書いたら賞に応募するものだ、ということにやっと気づいて(笑)。この作品は応募3作目です。
――大学のときは短歌をやっていたんですよね。小説を書くのに影響ありましたか?
短歌をやっていた2年間に教えてもらったことの影響ってすごくありますね。短歌って比喩をたくさん使ったり、擬音語みたいなものをちょっと工夫したりするじゃないですか。「わはは」って笑うんじゃなくて、「ずずず」って笑うにすると変わるとか、そういう表現ですね。細かいところを学んだというのは大きかったかもしれないですね。
――なぜ「R-18文学賞」に応募して下さったんですか。
1年前に再び書き始めたとき、官能小説を書いていたわけじゃないんですけど、テーマが今回書いたのと似たようなものが多くて、セックスがテーマに重要にかかわってくるようなものを書いていたんですね。それでこの文学賞のホームページを見つけて、書きたいものと合っているかなと思って。高校生のとき書いてたものはそうでもなかったんですけどね。あとは、枚数が短かったんで、すぐ書けちゃうかなと思って(笑)。
――やっぱり読むのも好きですか、特に好きなのは?
はい。乱読系ですけど。すごく印象的だったのは、中学校2年生のときの夏休みに三島由紀夫を6冊ぐらい、内容とか忘れちゃった部分はあるんですけど、必死に読んでいたということだけは覚えていますね。おしりにあせもができたんですよ、ずっと座って読んでいたから(笑)。そのぐらい一生懸命読んだというのが。
――じゃあ、好きな作家と聞かれたら、三島由紀夫?
うーん、今は余り読んでいないんで、今好きな作家と言われると……桐野夏生さんが最近すごく好きですね。
――桐野さんの作品のどういうところが好きなんですか。
やっぱり登場人物や主人公が格好いいところです。ハードボイルドですもんね。
――受賞作の『夏がおわる』は、登場する小さい男の子がかなり秀逸だという声が多かったんですが、彼はパッと思いついたんですか。
思いついたというより、書いていたら何となく出てきたみたいな感じでしたね。普通の男の子だとつまらないから、何か方言をしゃべらせようか、でも方言っていったら自分の地方の言葉しかしゃべれないんで名古屋弁になったんです。
――この作品はスラスラ書けましたか。それとも苦労して書き上げたという感じですか。
スラスラ。自分の実体験じゃ全然ないんですけど(笑)。いろんな人と遊んじゃうというところは本当につくり話なんですけど、それ以外の部分は結構そのとき体験していたことに近い部分もあるので、スラスラ書けたといえば、そうですね……。「本当の日記じゃないの」とこの間知り合いに言われちゃって、その部分もなきにしもあらずというか。
――日記体にしようというのは、意識した作戦でしたか。
物語の起承転結というのがあるというよりも、どこを読んでも何だかエッチ、みたいな感じのものを書いてみたかったんですよ。毎日毎日エッチなことを考えている人を書こうと、きょうはどこそこで一人でエッチしたとか、次の日はだれそれとエッチしたとか、そういう感じのものを最初は書き始めたんですけど、書いてみたら自分の実体験がまざってきちゃって、ちょっと違う感じになっちゃいました。
――今回、受賞なさったわけですけど、自信はありましたか。
いや、全然なかったですね。最終候補に残ったのもしばらく気づかなかったんですよ。たまたまホームページを見て「あっ、載ってる」って。自分の家とかそのまま書いちゃったんで、人に読まれるということを考えていなくて。困ったな、と。
――賞をとったときの御感想は。
すごくびっくりしましたね。最初、何で新潮社から電話がかかってくるんだろうと思って不思議でしたね。
――これからもっと書いてデビューしていくという可能性があるんですけれども、今はどんなお気持ちですか。
今の気持ちとしては、そんながっついている感じじゃないんですよ。なので、これがだめでも、またじゃあ次頑張ればいいやというか。ずっと形にならなくても、書きたいと思ううちは書いていたいので。書くことはずっと続けていきたいですね。
――がんばってくださいね。ありがとうございました。