第15回受賞作品
受賞の言葉
大賞受賞
受賞の言葉
プロフィールにもある通り、コーヒー好きです。
お気に入りの豆は、苦みの強さが特徴のマンデリン。まずはミルで中挽きにし、少しだけお湯を注ぐ。蒸らすこと一分。豆が膨らんでから、回すようにゆっくりお湯を注ぐ。この時、豆の表面を覆う細かい泡を壊さないように注意を払うのが大事。そしてきっちりマグカップ一杯分の量を入れる。飲む時はブラックで。これが私のベストな入れ方です。
豆の種類や量、蒸らし時間は独自で研究しました。ああでもないこうでもないと言いながら、自分の好みに擦りあわせていく過程はとてもとても長かったです。その結果、今ではおもてなしの際には、自信を持ってコーヒーをお出しできるようになりました。しかし、頂く感想は両極端です。美味しいと言われるけれど、同じくらい苦いと評価されるし、ミルクや砂糖で口当たりを調節するのは個人差ですが、時にはお湯を足されることもありました。
豆選び、焙煎具合など拘ろうとすればコーヒーはどこまでも奥深く、そこまでの知識はまだ持ち合わせていません。造詣の深い方から見れば初心者の域を出ていないでしょう。万人を文句なしに唸らせるなどは理想の先です。けれど、今現在の私が作れる自信の一杯であることに揺らぎはありません。
小説も同じです。私は、私なりの書き方で、今一番美味しいと思えるものを書きました。それが今回、想像していた以上の方々に『美味しい』と評価して頂けました。なおかつ素晴らしい賞まで頂けたことは、この上ない喜びです。このコメントを書いている今でも、信じられない思いでいっぱいです。
選考委員の先生方、新潮社の皆様に深くお礼を申し上げます。WEBで読んで下さった読者の方々にも、併せてお礼を申し上げます。これを成長できる大きなきっかけとし、これまで以上の精進を重ね、一人でも多くの人に美味しかったと言って頂けるものを作り続けたいと思います。