女による女のためのR-18文学賞

新潮社

第23回受賞作品
受賞の言葉

王冠ロゴ 友近賞受賞

「君の無様はとるにたらない」

神 敦子(じん・あつこ)

1977年、神戸市出身。青山学院大学卒。情報誌・専門書の編集を経て、現在は教材等の執筆・校正。大体毎日、自分で作った服を着ています。気楽でよいです。

受賞の言葉

最終選考では漫才を

 最終選考まで残ったと連絡をいただいた夜、「最終の選考では漫才を披露しなければならない」という恐ろしい夢を見ました。
 電器屋のテレビが一斉に舞台を映し、それを見ているにもかかわらず、その画面の中の壇上にもわたしは立っており、ひとりで何か披露しなければならないのでした。
 夢だからといって笑いのスペシャリストになっているわけではなく、なぜこの素人がここに呼んでもらえているのか。まわりは舞台裏で何か打ち合わせたりしているというのに、やるべきことがわからず恐怖でおののきました。
 ひとりというのがいけなかった。せめて、「困ったね」と言える相手がいれば、もうすこし心持ちが違っていたでしょうに。でも、女が寄りあうと嫌がられるので。いや、いいじゃないか、寄りあったって。寄りましょう寄りあいましょう、この賞に応募すると決めたとき、そういう話を書きたいと思いました。
 この甘っちょろい物語に大切な時間を割いてくださったすべての方に、拾ってくださったすべての方に、それから、「君はいつまで書いてんのだ」と呆れることなく見守り続けてくれたわたしのまわりに今もいるもういない方々に、深く感謝申し上げます。
 いただいた評を謙虚に受けとめ励んでまいります。