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三十年近く前の夏の朝、まさに天才だった作家Aさんから、ガルシア=マルケスの新作の英訳が届いたそうだが、と電話。読んだと答えると、一時間後には箱根の山荘への車に乗せられていた。細部の面白さに大笑いするかと思うと、要約して、次のヤマ場に行けと催促する。翌日の夕暮、Aさんは静かに満足して、二十世紀最良・最大の、南米に根ざしながら世界の時代を描く男!
といった。私らは共感こめて大酒を飲んだ。 |
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他12篇 高見英一、桑名一博、井上義一/訳
敵視と中傷にさらされたまま、男は死んだ。男をかばい続けた老人、老人の娘、娘の息子。男の棺を前にした彼ら三代の独白(モノローグ)が浮かびあがらせるのは、束の間の繁栄、永遠の荒廃、町が演じた悲喜劇。表題作はじめ、物語の可能性を手探りで確かめながら、生の明滅を凝視して、かの蜃気楼の町マコンド創造に至る、若き日の作品群。
●2007年2月刊/四六判変型/334頁/ISBN:978-4-10-509009-8/定価:
3,080円
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他9篇 高見英一、桑名一博、内田吉彦、木村榮一、安藤哲行/訳
血の粛清から、ようやく立直りかけた町。殺した者。遺された者。没落に怯える者。成りあがり者。恨みを深く潜ませた者。それぞれの心に、誰の仕業とも知れぬ中傷ビラが不穏な火を放つ時――。そして、届くあてのない手紙を待ち続ける老人も。死してなおマコンドに君臨する太母も。物語が虚実の間に浮びあがらせる人世の裸形。
●2007年6月刊/四六判変型/486頁/ISBN:978-4-10-509010-4/定価:
3,080円
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鼓直/訳
蜃気楼の村マコンドの草創、隆盛、衰退、そして廃墟と化すまでのめくるめく百年を通じて、村の開拓者一族ブエンディア家の誰彼に受け継がれた孤独の運命は、絶望と希望、苦悩と悦楽、現実と幻想、死と生をことごとく呑み尽くし……。20世紀後半の世界文学の行方を決定づけた怒濤の人間劇場が、新世紀への幕を開ける。
●2006年12月刊/四六判変型/494頁/ISBN:978-4-10-509011-1/定価:
3,520円
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他6篇 鼓直、木村榮一/訳
宴席には反逆者の丸焼き。荷厄介な子供二千人を乗せて沈んだ船。売却されたカリブ海。国母たるお袋の剥製。でもお袋よ、わしが望んだことなのか? 「百年の孤独」と並ぶ高峰「族長の秋」に連なる山系。純真無垢な娼婦が、年をとりすぎた天使が、正直者のぺてん師が、人好きのする死体が、運命の混沌の糸で織りあげる人間模様。
●2007年4月刊/四六判変型/446頁/ISBN:978-4-10-509012-8/定価:
3,520円
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野谷文昭、旦敬介/訳
町中の誰もが充分に知っていた。しかも、当の犯人たちを含めた誰もが阻もうとしていたのだ。その朝、彼が滅多切りにされることを。たった一人、彼だけを除く誰もが……。運命という現実。その量り知れぬ糸模様の全貌に挑む、熟成の中篇。さらには、人生という日々の奇蹟。その閃光をまざまざと映し出す、鮮烈な十二の短篇。
●2008年1月刊/四六判変型/350頁/ISBN:978-4-10-509013-5/定価:
2,860円
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木村榮一/訳
夫を不慮の事故で亡くしたばかりの女は72歳、彼女への思いを胸に独身を通してきた76歳の男から、突如、愛を告げられた。記憶と期待と不安が交錯する二人を乗せた蒸気貨客船が、コロンビアの大河を悠然とただよい始めた時――。内戦が疫病のように猖獗した時代を背景に、愛が愛であることの限界にまで挑んだ、かくも細緻、かくも壮大な物語。
●2006年10月刊/四六判変型/526頁/ISBN:978-4-10-509014-2/定価:
3,850円
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木村榮一/訳
幾多の激戦の末にスペイン軍を打ち破り、ついに中南米の諸国を独立へと導いた英雄シモン・ボリーバル。理想に燃えてひた走った将軍が最後に踏み入らざるを得なかったのは、失意の迷宮だった。〈解放者〉と称えられた輝ける男が暗然と下りゆくコロンビアの大河――死への旅路、その七カ月を巨細に描き切った、「栄光」の偉大なる陰画。
●2007年10月刊/四六判変型/366頁/ISBN:978-4-10-509015-9/定価:
2,860円
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旦敬介/訳
18世紀半ば、スペイン王国領だったコロンビアの、城壁に囲まれた町で。狂犬に咬まれた侯爵の一人娘に、悪魔憑きの徴候が。有為の青年神父が悪魔祓いの命を受ける。激しく対峙した二人は、やがて激しく惹かれ合い……。大作『コレラの時代の愛』と近作『わが悲しき娼婦たちの思い出』の架け橋とも言うべき、うるわしき哀歌。
●2007年8月刊/四六判変型/246頁/ISBN:978-4-10-509016-6/定価:
2,200円
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木村榮一/訳
作者七十七歳にして川端の『眠れる美女』に想を得た今世紀の小説第一作。 満九十歳を迎える記念すべき一夜を、処女と淫らに過ごしたい! これまでの幾年月を、表向きは平凡な独り者で通してきたその男、実は往年、夜の巷の猛者として鳴らした、もう一つの顔を持っていた。かくて昔なじみの娼家の女主人が取り持った、十四歳の少女との成り行きは……。悲しくも心温まる、波乱の恋の物語。
●2006年9月刊/四六判変型/142頁/ISBN:978-4-10-509017-3/定価:
2,200円
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(1927-2014)1927年コロンビアの小さな町アラカタカに生まれる。ボゴタ大学法学部中退。自由派の新聞「エル・エスペクタドル」の記者となり、1955年初めてヨーロッパを訪れ、ジュネーブ、ローマ、パリと各地を転々とする。1955年処女作『落葉』を出版。1959 年、カストロ政権の機関紙の編集に携わり健筆をふるう。1967年『百年の孤独』を発表、空前のベストセラーとなる。以後『族長の秋』(1975年)、『予告された殺人の記録』(1981年)、『コレラの時代の愛』(1985年)、『迷宮の将軍』(1989年)、『十二の遍歴の物語』(1992年)、『愛その他の悪霊について』(1994年)など次々と意欲作を刊行。1982年度ノーベル文学賞を受賞。 |
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自伝
旦敬介/訳
何を生きたか、ではない。何を記憶し、どのように語るか。それが人生だ――。
祖父母とその一族が生きぬいた、文字通り魔術的な現実。無二の仲間たちに誘われた、文学という沃野。ジャーナリストとして身をもって対峙した、母国コロンビアの怖るべき内政紛乱……。作家の魂に、あの驚嘆の作品群を胚胎させる動因となった、人々と出来事の記憶の数々を、老境を迎えてさらに瑞々しく、縦横無尽に語る自伝。
●2009年10月刊/四六判変型/678頁/ISBN:978-4-10-509018-0/定価:
3,960円
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木村榮一/訳
伝えに来たのです。皆さんに是非とも伝えなければならないことだけを――。
かくして、大のスピーチ嫌いで知られるこの作家が、生涯に22回だけ、文学、友情、軍隊、独裁者、教育、ジャーナリズム、祖国、ラテンアメリカ、世界人類が抱える切実な課題を、具体的なエピソードと数字を挙げて、真摯かつ自在に壇上から語りかけた。宿命的なその人生模様と、思想上の確固たる信念をにじませる全講演の記録。
●2014年4月30日発売/四六判変型/208頁/ISBN:978-4-10-509019-7/定価:
2,200円
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