ホーム > 新潮文庫 > 新潮文庫メール アーカイブス
新潮文庫メールマガジン アーカイブス


「とても面白かった! 最後にほろり」と恩田陸さんも絶賛の新シリーズが発売となりました。笹木一『鬼にきんつば─坊主と同心、幽世しらべ─』(新潮文庫)です。
 鬼のようなコワモテ同心と美しすぎるイケメン僧侶の最強バディが活躍する大江戸人情あやかしミステリーです。きんつば、落雁、豆大福、粟おこし、幾世餅......美味しそうな江戸のスイーツもたくさん登場します。
 本作は日本ファンタジーノベル大賞の最終候補。選考委員の恩田陸・森見登美彦・ヤマザキマリの3氏ともが絶賛した注目作です。「のっけからするりとお話に入れ、いきいきとしていて引き込まれ、とても面白かった。甘いもの好きのおっかない顔の同心と、綺麗な顔してシビアな坊主、という組み合わせも楽しい――恩田陸」「とにかく読み心地がよくて、エンターテインメントの書きぶりとしては文句のつけようがない。シリーズ化すれば人気作になりそうだ――森見登美彦」「読み始めから最後までアワードの応募作品だということを忘れて読み耽ってしまった。何より本文に出てくる和菓子が美味しそうで、選考会の翌日には豆大福を調達した――ヤマザキマリ」(いずれも「日本ファンタジーノベル大賞2025」選評より)
 日本ファンタジーノベル大賞の最終候補で、江戸あやかし物語と言えば、アニメ化決定で話題、いまやシリーズ累計1000万部、畠中恵さんの「しゃばけ」も、じつは日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞受賞作としてスタートしたシリーズです。「坊主と同心、幽世しらべ」シリーズの今後にもご期待ください。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2025年06月15日   今月の1冊


「ぼぎわん」(刊行時『ぼぎわんが、来る』に改題)で、第22回日本ホラー小説大賞を受賞した澤村伊智さん。その後、2017年に『ずうのめ人形』が第30回山本周五郎賞候補に選出。2019年には「学校は死の匂い」で第72回日本推理作家協会賞短編部門を、2020年に『ファミリーランド』で第19回センス・オブ・ジェンダー賞特別賞を受賞しました。
 そして、この度、"小説"ならではの技巧をこらした大どんでん返し恐怖短編集『怪談小説という名の小説怪談』が新潮文庫より発売されます。
 デビュー以来、ホラー小説界の最前線に立ち、ホラーブームを牽引してきた澤村伊智さん。本書では、「怪談会」、「学校の怪談」、「呪いの物件」、「恐怖小説」など、古今紡がれてきた怪談の数々を著者流にアップデートしつつ、インターネットで何でも検索できる現代を逆手に取った、新しい形の怪談も生み出しました。
 謎めいた語りが恐怖と驚愕を生み、奇妙で不穏な空気と意外な結末に嫌な汗が滲みだす、大どんでん返し恐怖短編集!
 著者ならではの技巧により、想像力を軽々と飛び越えてくる一冊を是非お楽しみください。大森望さんによる「解説」ならぬ「怪説」にも注目です!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2025年06月15日   今月の1冊


 若き日より幻想文学に耽溺してきた、英文学者・小説家の南條竹則さんが満を持して手がけた、ラヴクラフト作品の編訳シリーズは、2019年刊行の『インスマスの影―クトゥルー神話傑作選―』から始まりました。
 刊行直後、新潮文庫からラヴクラフト作品が刊行されたことについて大きな反響があり、また訳文も高い評価を得て、たちまち増刷。ご好評にお答えするかたちで、『狂気の山脈にて―クトゥルー神話傑作選―』『アウトサイダー―クトゥルー神話傑作選―』を刊行してきました。
 今回の選集の表題作「チャールズ・デクスター・ウォード事件」はクトゥルー神話の系譜に位置づけられるものです。そして、並録されている「戸口にいたもの」は「インスマスの影」の後日譚にあたる短編です。
 主人公が地底に足を踏み下ろしてゆく――そこには出会ってはいけない存在が蠢いている。ラヴクラフトが終生抱いていたヴィジョン。今回の新刊に収録された作品群にもそんな幻想が色濃く投影されています。
 そして、ヨーロッパの古都への憧憬も――。
 古今東西の読者を虜にしてきた〈闇の巨匠〉ラヴクラフト、その作品世界を彼の魂を深く覗き込んだ南條竹則さん渾身の新訳にてお届けします。

 それからしばらく音信が途絶え、十月にウォード夫妻はチェコスロヴァキアのプラハから来た絵葉書を受け取った。それによると、チャールズはある非常な高齢の人物――中世のいとも興味深い知識を有する最後の生存者といわれる――と面談をする目的で、この古都にいるのだという。

(「チャールズ・デクスター・ウォード事件」より)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2025年05月15日   今月の1冊


 江戸のメディア王蔦屋重三郎と近代日本の先駆者と評されるも毀誉褒貶の激しい老中田沼意次。NHK大河ドラマ「べらぼう」で話題の二人に、日本のダ・ヴィンチ平賀源内も登場。『放浪大名 水野勝成―信長、秀吉、家康に仕えた男―』『ふたりの本多―家康を支えた忠勝と正信―』『高虎と天海』などの歴史小説で高い評価を受ける歴史作家早見俊が、田沼意次が権力の絶頂にあった天明4年(1784)から6年までの二年間を中心に、その権力基盤がもろくも崩れ去る姿と蔦屋重三郎が情報ネットワークを駆使して情報収集に奔走する姿を描きます。

 幼くして両親と別れ遊郭の街新吉原の茶屋蔦屋に養子に入った蔦屋重三郎は、新吉原五十間道に書店を開業。出版した吉原遊郭の案内書「吉原細見」はベストセラーになり、一躍出版界の寵児となった蔦重は、江戸の神保町ともいえる日本橋通油町に進出します。
 そんな蔦重の躍進を支えたのは、時の老中田沼意次の革新的ともいえる政治でした。
 わずか600石の旗本の家に生まれながら5万7000石の大名、老中となるという異例の昇進を遂げた田沼意次。食料の備蓄も少なく天変地異が多発し財政難に苦しむ幕府のため、様々な政策を実施した意次は、その一環として、蝦夷地(北海道)に眠る鉱山に着目し、平賀源内を北の大地に派遣します。
 博物学者、地質学者、医者、画家、戯作者、エレキテルの紹介者といった万能の天才・平賀源内は、口論からの殺人事件で入牢し、獄死したと世間で噂されていましたが、その才を惜しんだ意次の屋敷に匿われていたのです。
 一方、御三卿田安家に生まれ将軍候補と目されながら白河松平家に養子に出された八代将軍吉宗の孫松平定信は、田安家を相続できず将軍になれなかったのは意次の策謀のためと考えて、御三卿の一橋治済と手を組み、意次失脚を狙い暗躍します。

 様々な思惑が渦巻く中、田沼意次を江戸の庶民文化を理解する稀有な政治家と高く評価する蔦重は、文人たちや貸本業を通じて作り上げた大名屋敷の武士たちとの情報ネットワークを駆使して田沼のための情報収集に奔走することに。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2025年05月15日   今月の1冊


 本作『擬傷の鳥はつかまらない』で新潮ミステリー大賞を受賞しデビュー。2作目『ループ・オブ・ザ・コード』(2022/新潮社)で山本周五郎賞候補、3作目『不夜島』(2023/祥伝社)で日本推理作家協会賞受賞、そして4作目『飽くなき地景』(2024/KADOKAWA)が直木賞候補ノミネート、そして吉川英治文学賞新人賞を受賞しました。刊行した全ての作品が何かの文学賞にノミネート、もしくは受賞しており、荻堂顕は今最も注目されている作家と言えます。

 今回はそんな荻堂さんのデビュー作『擬傷の鳥はつかまらない』が文庫化されました。本作の主人公は、訳ありの依頼者の身分を偽装し、別人としての人生を与える「嘘の仕立て屋」を生業とするサチ。ある日、そんな彼女のもとを訪れてきた大金を持った二人組の少女。条件で折り合いがつかずその日は帰っていきましたが、その数日後、片方の少女が謎の死を遂げます。残された少女を守るべく、事件の鍵を握る男を探し始めるサチは、嘘と裏切りにまみれたあまりにも切実な真相にたどり着きます。果たして彼女が見つけたものとは。文章もストーリーもキャラクターも全てが規格外。ミステリ界を牽引する若き鬼才の、衝撃のデビュー作をこの機会に是非。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2025年04月15日   今月の1冊