私たちの日常は「今しかない美しさ」に満ち満ちている──映画化もされた『日日是好日』続編が、増補加筆して待望の文庫化!
今年は12月22日が冬至です。昼の時間が一年で一番短い日であり、ゆず湯に入ったり、かぼちゃを食べたりという方も多いでしょう。
この冬至を出発点に、一年を二十四の季節に分けたのが二十四節気です。小寒、大寒、立春と続き、夏至、秋分、立冬など経てふたたび立冬に戻るというもので、かつては農作業の目安などにも使われていまいました。ただし現代ではなじみが薄くなり、春分など代表的なものしか知らないという人がほとんどなのでは。
そんな二十四節気が現在でも息づいているのが、茶道の世界です。エッセイストの森下典子さんは二十歳からお茶を習い始めました。当初は茶道のことを行儀作法だと思っていたという森下さんですが、これが新たな世界の始まりで以来40年以上にわたりお茶を続けています。そして、茶道をとおしての気づきや感動を綴った『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ―』は70万部を突破するベストセラーとなり、黒木華さん、樹木希林さんらの出演で映画化されたことでも話題になりました。今回文庫化された『好日日記─季節のように生きる─』はその続編にあたる作品で、森下さんが茶道をとおして気がついた「季節の美しさ」が綴られています。そんな本書から、「まえがき」の抜粋をご紹介しましょう。
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四十代の終わり頃から、私は稽古から帰った後、日記をつけるようになった。ある時、その日記を読み返して、はっと気づいたことがある。同じ季節のページには、別の年のその季節と同じ匂い、音、手ざわり、そしてその季節だけの思いや気づきが記され、中には、一言一句違わぬ言葉もあった。これはある一年間の稽古の日記だ。私たちが見過ごして気づかない二十四の季節の、音と匂いと肌ざわりの記録である。
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「立春」には冷たい風の中に梅の香りが漂い始め、梅雨が明けた「大暑」には炎天下に蝉の声が響き、「秋分」になると彼岸花が咲いて赤とんぼが飛び、「立冬」の木々の葉は色とりどりに染まる......そんな森下さんが感じた二十四の季節の美しさを、ぜひ本書をとおし、みなさんも味わってみてください。ちなみに、本作は2018年に単行本として出版されましたが、森下さんは今回の文庫を「完全版」とするためさまざまに加筆し、新パートも増補しています。また、小林聡美さんによる文庫解説もお見逃しなく!
2025年12月15日 今月の1冊

































