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〈新発見〉井上靖 中国行軍日記

新潮 2009年12月号

(毎月7日発行)

特別定価1,047円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2009/11/07

発売日 2009/11/07
JANコード 4910049011294
定価 特別定価1,047円(税込)

◆高く手を振る日(180枚)/黒井千次
妻の亡き後、老年の「行き止り」を生きていた浩平は、懐かしい女性と再会する。それは古い時間の味がする、最後の恋の始まりだった。

◆この世は二人組ではできあがらない(220枚)/山崎ナオコーラ
この世を構成する一番すごい要素は「マナザシ」ではないか。「二人ぼっち」の同棲生活を経て、小説家志望の「私」が得たものとは……。

◆実験(130枚)/田中慎弥
小説のために他者の生を奪うのか? 創作という業に肉薄する気鋭力作!

◆草屈(くさかまり)/藤沢 周

◆紙の肉体、裏切りの耳/金井美恵子

■連載小説
・慈雨の音(五)/宮本 輝
・俺俺(五)/星野智幸
・還れぬ家(九)/佐伯一麦
・ネバーランド(十二)/藤野千夜
・幸福の森(二十四)/加賀乙彦

■新潮
・カマキリの青春/康本雅子
・永遠のポルト・リガト/飯塚朝美
・映画「ジェイン・オースティン」のこと/鹿島田真希

◆第42回《新潮新人賞》応募規定

■ 新発見 ■井上靖 中国行軍日記/解説 曾根博義
「気を強く持たぬと死んで了ふ」「神様! 一日も早く帰して下さい」。国民的作家が黙し続けた戦地体験を初めて詳らかにする超一級資料を全文公開。

【大型企画】日本小説技術史 第五回/渡部直己

■追悼 原田康子/小島千加子

■聞こえてくることばと、それを書く言語――池澤夏樹『カデナ』のこと/黒川 創

■歴史化される六八年――小熊英二『1968』を読む/小林敏明

■島尾敏雄 終戦後日記(五) 昭和二十一年五月一日―七月三十一日

■生き延びるためのアメリカ文学(二十二)/都甲幸治
 ミニマルな青春――タオ・リン『アメリカンアパレルで万引』

■四方田犬彦の月に吠える(最終回)[文化月評]/四方田犬彦

■見えない音、聴こえない絵(七十)/大竹伸朗

■本
・西村賢太『瘡瘢旅行』/赤染晶子
・戌井昭人『まずいスープ』/いしいしんじ
・金原ひとみ『憂鬱たち』/斎藤 環
・リュドミラ・ウリツカヤ『通訳ダニエル・シュタイン(上・下)』/豊崎由美
・中村文則『掏摸(スリ)』/松永美穂

■連載評論・エッセイ
・屋根裏プラハ(五)/田中長徳
・随想(十二)/蓮實重彦
・残夢整理(十二)/多田富雄
・高畠素之の亡霊(二十三)/佐藤 優
・明治の表象空間(四十)/松浦寿輝

編集長から

新発見
井上靖 中国行軍日記
 井上靖氏(明治40~平成3)は日中戦争開始直後の昭和十二年(入隊時30歳)より物資輸送を担当する輜重隊員として中国北部に駐屯した。だが生涯を通じ、井上氏が戦地体験を詳細に語ることはなかった。今回発表する「井上靖 中国行軍日記」は、小振りの予定帖にびっしりと記された約半年間の日記を完全収録したものだ。召集令状の到着より、入隊、中国での過酷な行軍、身体不調、戦地での入院、帰国までの過程をつぶさに描く氏の筆は、過度なイデオロギーや文学中心主義から遠く、死と近い場所で〈この一日を生きている〉人間の精神を浮き彫りにする。
「気を強く持たぬと死んで了ふ」「神様! 一日も早く帰して下さい」「人間は消耗品なりと、戦争は悲惨の極だ」「死ぬも生きるも時の運といふが、時の運ではなく既に生れるとき定つた運命であろう」
 国民的作家の未知の肉声を伝える「新発見」だ。

新潮編集長 矢野 優

バックナンバー

雑誌バックナンバーの販売は「発売号」と「その前の号」のみとなります。ご了承ください。

雑誌から生まれた本

新潮とは?

文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。

■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。

■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。

■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。

雑誌主催・共催・発表誌の文学賞