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川上未映子「苺ジャムから苺をひけば」(240枚)

新潮 2015年9月号

(毎月7日発行)

特別定価998円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2015/08/07

発売日 2015/08/07
JANコード 4910049010952
定価 特別定価998円(税込)
苺ジャムから苺をひけば[240枚]/川上未映子
知ってしまったお父さんの秘密。それはわたしに関わりのある秘密。襲いかかる過去と対峙する少女は、少年と二人だけの冒険に出る。

籠の鸚鵡[新連載]/辻原 登
町役場の出納室長に、女からの色情狂めいた手紙が次々舞い込む。忍び寄る欲望の陥穽。

光の犬[新連載]/松家仁之
北海道犬と共に生きた、道東の家族三世代。その私史と背後に広がる時代を豊かに描く。

「孤独の讃歌」あるいは、カストロの尻/金井美恵子

■■ 連載小説 ■■

荒れ野にて(九)/重松 清

ペインレス(十一)/天童荒太

薄情(十三)/絲山秋子

長流の畔(十四)/宮本 輝

名誉と恍惚(十四)/松浦寿輝

■新潮
・クローデル、マラルメ、そして日本/渡邊守章
・四人姉妹の三番目/伊藤朱里
・見ることとうつすこと/鈴木理策

◆第48回《新潮新人賞》応募規定

■■ 発見と検証 ■■
「政治家」(全集未収録)/小林秀雄  解説 斎藤理生
終戦直後の「政治」に向けられた批評精神は、七十年後の今、私たちに鋭く警鐘を鳴らす。

■■ 大型評論 ■■
大泉黒石と表現主義の見果てぬ夢
――幻の溝口健二『血と霊』の挫折/四方田犬彦
忘れられた流行作家と、後の巨匠監督の一度限りの実験。失われた日本初の前衛映画とは。

往復書簡
――『失われた時を求めて』を「編訳」して
/芳川泰久 角田光代

ノーマン・メイラーふたたび/川本 直

ジャン=リュック・ゴダール、3、2、1、 [最終回]/佐々木敦

石川啄木[第十五回]/ドナルド・キーン  角地幸男・訳

小林秀雄[第二十五回]/大澤信亮

島尾ミホ伝 『死の棘』の謎[第二十八回]/梯 久美子

見えない音、聴こえない絵/大竹伸朗
 第一三二回・クレヨン以前レコード以後

■本
・河野多惠子『考えられないこと』/菅野昭正
・M・ミッチェル 鴻巣友季子・訳『風と共に去りぬ』/小沼純一
・上田岳弘『私の恋人』/杉田俊介
・古井由吉『雨の裾』/浜崎洋介
・椹木野衣・会田誠『戦争画とニッポン』/ミヤギフトシ
・桐野夏生『抱く女』/村田沙耶香
 

編集長から

小説の恩寵の時

◎優れた小説は、限られた時間の出来事を描いたとしても、その作品世界には登場人物の現在のみならず、過去も未来さえも豊かに潜在しているのだと思う◎川上未映子「苺ジャムから苺をひけば」(240枚)の主人公は小学六年生の少女。彼女は自分や親や学校の仲間たちの現在に向け、曇りのない視線をぶつける。その幸福のみならず、過酷さに対しても。そして彼女の視線は、その強度ゆえに、隠されていた過去さえも眼前に招き寄せてしまうのだ。たとえば、父親の血縁の秘密を。ほぼ記憶にない亡き母親の存在を。だが、本作がもっとも飛翔したのは、彼女が直視した現在と過去が、その純度によって沸騰し、十二歳の彼女自身を未来へ、この物語の最終頁から始まる時間へと押し出した一瞬ではないか。少女に訪れたそんな恩寵の時を、私たちは「成長」と呼ぶのだ◎二つの新連載、辻原登「籠の鸚鵡」、松家仁之「光の犬」を開始できることを喜びたい。ここにも小説の特別な時間が充ちているはずだ。

新潮編集長 矢野 優

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

新潮とは?

文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。

■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。

■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。

■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。

雑誌主催・共催・発表誌の文学賞