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胡蝶とビューティフル・ドリーマー

 目つきは悪いが気は優しい料理上手の高校生になって、手に乗るほど小柄なツンデレ美少女と微妙な恋愛関係になりたいひで山です。こんにちは。
 暦も三月に入りまして、しばらく眠りこけていた僕僕先生も、ついに本格始動。僕僕先生第三弾『胡蝶の失くし物 僕僕先生』が三月十九日に、そして元祖『僕僕先生』文庫版が三月二十八日に発売されます。僕僕ワールドに限界なし!
 さて、今回のタイトルにある“胡蝶”という言葉。昔から大好きなんですよね。はじめて知ったのは、「荘子」を読んでいる時でした。中国古代の偉大な哲学者でいらっしゃる荘子こと荘周さんが、うとうととまどろんでいる時に見た夢。ちょうちょになってふわふわと楽しく飛んで、目が覚めるとこう思うわけです。

「蝶になって飛んでいる自分と、蝶の夢を見ていた自分と、どちらが本当の自分なんだろう」
 これを読んだ瞬間、もうぞぞりと背中に鳥肌が立ったことを思い出します。幼い頃から漠然と不安に思っていた存在のはかなさみたいなものを、ピタリと言葉にされたような気がしたものです。
 そんな現実と非現実の曖昧な境を鋭く映像作品にしているのが、映画監督押井守。うる星やつらの劇場版第二弾「ビューティフル・ドリーマー」、そして最近では「イノセンス」や「スカイ・クロラ」。これらの作品で描かれる現実世界の危うさは、深い淵を覗き込むような怖さがあるのにどこか心地いい。現代における胡蝶の夢であります。一回見てわかりにくいと投げるのはあまりにもったいない。何回も繰り返して見るほどに、中毒性が染み出してきますよ。
 さらに、胡蝶といえばこれを忘れるわけにはいかない、司馬遼太郎の幕末長編小説『胡蝶の夢』(新潮文庫)。激動の時代を熱い魂で駆け抜けたのは、何も新撰組や攘夷志士や緋村剣心だけではないのです。そしてタイトルに込められた意味とは。文庫版は全四巻で発売されておりますが、一気に読めます。激しくオススメ!
 もちろん、「胡蝶の夢」のあとには「胡蝶の失くし物」でよろしくお願いいたします。

2009年3月12日