ホーム > 書籍詳細:リーガルーキーズ!―半熟法律家の事件簿―

リーガルーキーズ!―半熟法律家の事件簿―

織守きょうや/著

825円(税込)

発売日:2023/05/29

  • 文庫
  • 電子書籍あり

走り出せ、法律家の卵たち! 司法修習生たちの成長を描く、爽快なリーガル青春ミステリ。

法律のプロである弁護士や検事や裁判官……になる一歩手前の「法律家の卵」、それが司法修習生。初々しい新人たちがそれぞれの熱い想いを胸に過ごす、一年間の研修の日々。理想と現実の狭間で葛藤し、恋と青春の苦悩を乗り越え、さまざまな謎を解き明かしながら成長してゆく。さあ明日から法律家デビュー! 元弁護士の著者による爽快なリーガル青春ミステリ。『朝焼けにファンファーレ』改題。

目次
第一章 人は見かけによらない
第二章 ガールズトーク
第三章 うつくしい名前
第四章 朝焼けにファンファーレ
解説 新川帆立

書誌情報

読み仮名 リーガルーキーズハンジュクホウリツカノジケンボ
シリーズ名 新潮文庫
装幀 平沢下戸/カバー装画、新潮社装幀室/デザイン
雑誌から生まれた本 小説新潮から生まれた本
発行形態 文庫、電子書籍
判型 新潮文庫
頁数 432ページ
ISBN 978-4-10-104581-8
C-CODE 0193
整理番号 お-114-1
定価 825円
電子書籍 価格 825円
電子書籍 配信開始日 2023/05/29

書評

胸に刻まれる朝焼け

有栖川有栖

累計50万部を超える〈記憶屋〉シリーズを手掛ける現役弁護士の織守きょうやさんが、法曹を目指す若者たちのリアルな姿を描いたリーガル青春小説『朝焼けにファンファーレ』(文庫化にあたり『リーガルーキーズ!―半熟法律家の事件簿―』と改題)を刊行。コロナ禍の憂さを振り払ってくれる一級のエンターテインメント作品と絶賛する作家の有栖川有栖さんが本作の読みどころを語る。

 ***

 新型コロナウイルスとの闘いが続き、二〇二〇年はどうにも重苦しい一年になった。こんな時だからこそ、コロナ禍の憂さを振り払ってくれる本、元気を与えてくれる小説が読みたい――という方にぴったりの一冊が『朝焼けにファンファーレ』だ。
 作者の織守きょうやさんは、ホラーからミステリまでエンターテインメントの広い領域で健筆をふるっているが、現役の弁護士でもある。司法修習生たちと彼らを育てようとする先輩たちを描いた『朝焼けにファンファーレ』は、そんな作者だからこそ書けた最上質の〈お仕事小説〉だ。
 いや、ちょっと違うな。司法試験に合格したばかりの彼ら(中には十九歳の少年もいる)は法曹界に入るべく研鑽中のヒヨコだから、〈見習い小説〉と呼ぶべきか。
 法律家の世界の舞台裏を見せてもらうのは興味深いし、成長の過程にある初々しい人は応援したくなるのが人情。読み始めるなり、たちまち物語の世界に引き込まれてしまう。
 本作は四章から成り、第一章でフィーチャーされる修習生は〈遊び人のお坊ちゃま〉にも見える茶髪の藤掛千尋。弁護修習で彼の指導にあたるのは澤田花。花は依頼人の女性から深刻でデリケートな相談を持ち掛けられて対応に悩むが――。
 第二章は、二件の少年審判をめぐるエピソード。「少年事件における法律家の役割」について考え込む修習生・松枝侑李を、裁判所書記官の朝香夏美が見守る。
 第三章でスポットライトが当たる柳祥真は、十代で司法試験に合格して、天才少年の異名を持つ。彼は試験に強いだけではなく、名探偵のごとき頭脳の冴えを見せて――。
 修習も大詰めとなり、第四章で舞台は司法研修所に移る。最後の関門を突破するため勉強に励む彼らの間で、なんと思いもかけない事件が――。
 章ごとに視点人物が変わる構成も巧みで、ただ「愉快な奴だな」と思ったキャラクターが別の人物の目を通して見たらぐっと厚みや陰影を増し、鮮やかな立体感を持ちだす。
 この小説では、誰もが人生の主人公として生きている。修習生たちも、彼らを指導するプロフェッショナルたちも。その点において、個性的なキャラクターを面白おかしく配置しただけの小説と一線を画す。
 研修のために派遣された弁護士事務所や司法研修所で起きるハプニング(はっきり事件性を持つものもある)に修習生たちはどう対処し、自分が進む道――裁判官・検事・弁護士のいずれを選ぶかは研修の終わりに決まる――をどう選び、法律家としてどのような自覚を持つようになるのか?
「司法試験だの法律家の世界だの、自分には縁がない」と思う方がいるかもしれないが、法律と無縁で生きている人間はいない。「法律はその精神に照らしてこのようなものであるべき。法律家にはこうあってほしい」という理想を、私たちは抱いていい。この作品を読んで、そんなことを考えた。
 といっても堅苦しい小説ではなく、それどころかストーリーテリングの妙とキャラクターの魅力でするすると読める一級のエンターテインメントだ。ミステリとしても随所で楽しめて、何重にもおいしい。
 彼らが奮闘するのは、朝焼けを間近にした薄明の頃。日の出の気配が漂い始め、ひっそりとして清々しく、胸が静かに高鳴る時間だ。
 物語の最後に訪れる朝焼けの美しさは、読者の胸に深く刻まれるだろう。

(ありすがわ・ありす 作家)
「Book Bang -ブックバン-」2020年12月29日
単行本刊行時掲載

インタビュー/対談/エッセイ

法廷に謎は持ち込まない

織守きょうや

現役弁護士でもある著者が描く、法曹を目指す若者たちのリアルな姿。ベールに包まれた司法修習の裏側とは。

――織守さんがリーガルものをお書きになるのは久しぶりな印象ですが、『朝焼けにファンファーレ』で司法修習生を描かれたのはどんなきっかけがあったのですか?

 法律を使ったどんでん返しとかトリックはそうそう考えつかないので難しいなあと思っていたのですが、厳密にはリーガルミステリでなくてもいいので法曹界を舞台にした作品を、と編集さんに言われて考えました。確か、修習生ものというのも提案されたのだったと思います。司法研修所ではみんな忙しくて何か事件が起きてもそれに関わっている場合ではないから、実務修習の期間から書いていくのであればどうにかなるかも、という話も打合せでした記憶があります。

――謎を書きたいお気持ちは常にあるんですか?

 ずっとミステリが好きで読んできて、自分の中で「面白い=謎」という意識があって。最後にひっくり返るようなお話が好きなんですよね。だから、何か書こうとすると、謎とか隠されていた真実とか設定しがちですね。

――実際、修習生ものを書かれてみていかがでしたか?

 埼玉県和光市の研修所や寮については、自分がいた場所なので、建物の中の距離感やガランとした部屋の雰囲気など知っている場所なだけに書きやすかったです。とはいえ、私が修習生だったのはもう十年以上前のことで、今も同じなのかはやや不安でした。だから、現役の修習生に確認してみたり、今回校閲さんからの指摘で最新の事情を知って慌てて修正したこともありました。

――作中で修習生が同期と信頼関係を築いているところがいいなあと思ったのですが、実際にもあんな感じですか?

 そうですね。修習生は誰かが落ちたら誰かが受かるというものでもないし、あまり順位も関係ないので、割と和気藹々としています。裁判官や検事を目指す人はちょっと事情が違うのですが、基本的には同じ釜の飯を食った仲、みたいな。作中でもありましたが、私の同期でも恋愛に発展するパターンもありました。
 集合修習になると忙しいのですが、私も実務修習中は時間があったので、友達と遊びに行ったり、修習先の弁護士さんに美味しいご飯をご馳走になったり、結構楽しんでいました。検察庁とか裁判所の定時は夕方五時なので、その後の時間が長いんですよね。実務修習中は結構優雅に過ごせるので、「仕事が始まったら大変だから、今しかこんなにゆっくり過ごせることはないよ」とみんなに言われていて。今作を書くにあたっても、実務修習中であれば勉強以外にも色々外に出る時期なので、物語を作りやすいなと思っていました。

――修習中の体験で印象的だったことはありますか?

 弁護修習先の事務所が刑事事件に強いところだったので、見せてもらった刑事事件のほとんどが殺人事件だったんですよね。他の事務所ではそんなことはあり得ないので、かなり珍しいことなんです。そこで被疑者にも会ったりして、刑事弁護ってどんなものなのかを実際に初めて見たので、とても印象に残っています。その後自分が弁護士になってからの仕事にも影響があるかもしれないと思いますね。

――織守さんは弁護士と作家という二つのお仕事を両立されていますが、何か共通点はあるのでしょうか。

 当事者の言葉が足りない部分をこちらが想像して補って裁判官に説明できるように組み立てたり、情報を整理して分かりやすく見せる部分は似ているかもしれません。あと、関係者の証言を陳述書として提出するのですが、小説を書いているおかげで臨場感たっぷりに書けます! 本人の使いそうな言葉も織り交ぜながら書くので、これは本人がこの通り言っているんだろうな、と説得力もあるんじゃないかと思います。

――現役の小説家に書いてもらえるなんて、贅沢ですね。ちなみに、本作では大小取り混ぜて様々な謎が描かれていますが、弁護士業の中で謎を追うこともあるんでしょうか。

 うーん、それは意外に少ないかもしれません。刑事でも民事でも、「この人は何でこんなことをしたのだろう」という謎がある場合、必ずしも裁判中に真実が解き明かされるとは限らないんです。どうしても時間の制限がありますしね。でも、自分の中で理解できていないことがあると怖いので、謎を残さないようにできるだけ調べて、当事者の話を聞いて、主張に沿ったストーリーを矛盾なく説明できるようにして裁判に臨むようにはしています。作中では模擬裁判の中でサプライズがありますが、実際にあんなことがあると、もう大変なことになってしまうので(笑)。現実にも十分ありえる展開なんですが、でもやっぱり大変です。弁護士業の方では、なるべく謎には直面したくないですね。

(おりがみ・きょうや 作家)
波 2020年12月号より
単行本刊行時掲載

著者プロフィール

織守きょうや

オリガミ・キョウヤ

1980年、ロンドン生れ。元弁護士(休業中)。2013年『霊感検定』でデビュー。2015年「記憶屋」で日本ホラー小説大賞読者賞を受賞。他の作品に『リーガルーキーズ! 半熟法律家の事件簿』『隣人を疑うなかれ』『彼女はそこにいる』などがある。

判型違い(単行本)

この本へのご意見・ご感想をお待ちしております。

感想を送る

新刊お知らせメール

織守きょうや
登録

書籍の分類