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盗賊

三島由紀夫/著

539円(税込)

発売日:1954/05/04

書誌情報

読み仮名 トウゾク
シリーズ名 新潮文庫
装幀 Pando Hall/カバー写真、Getty Images/カバー写真、新潮社装幀室/デザイン
発行形態 文庫
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-105004-1
C-CODE 0193
整理番号 み-3-4
ジャンル 文芸作品
定価 539円

愛よりも強い欲望でふたりは結ばれていた――。

内省的で繊細な青年・明秀は避暑地で出会った奔放な娘・美子に失恋し、死を決意する。思い詰めた明秀の前に現れた少女・清子もまた恋に破れ、自殺を考えていた。ふたりは若く瑞々しい恋人同士に擬態しながら、「ただ一つの目的」に向かって周到に共謀する。親や友人たちの無邪気な祝福を受け、結婚式当日を迎えるが……。青春の秘密と美を精緻に描く心理小説。

目次
第一章 物語の発端
第二章 決心とその不思議な効果
第三章 出会
第四章 周到な共謀(上)
第五章 周到な共謀(下)
第六章 実行――短き大団円
解説 武田泰淳

どういう本?

タイトロジー(タイトルを読む)

 美子は顔をあげてはじめてまじまじとこの類いまれな美貌の青年を見詰めた。二人の目が傍目には甘美に出会った。しかし目を合わせた途端に、二対の瞳は暗澹とみひらかれ、何か人には知られない怖ろしい荒廃をお互いの顔に見出だしでもしたかのように、お互いに相手の視線から必死にのがれようとし、この醜悪な予感が彼らの目から彼らの頬へと移行し、その頬を夜明けの海のような暗い青みがかった色調で覆い、その唇を死灰の色と味わいで充たすのに任せたまま、しばらくは恐怖に縛められて立ちすくんでいた。美子のほうが先に、戦慄しながら、辛うじて二歩三歩後ずさりした。
 二人は同時に声をあげてこの怖ろしい発見を人々の前に語りたい衝動にさえ駆られていた。今こそ二人は、真に美なるもの、永遠に若きものが、二人の中から誰か巧みな盗賊によって根こそぎ盗み去られているのを知った。(本書206〜207ページ)

著者プロフィール

三島由紀夫

ミシマ・ユキオ

(1925-1970)東京生れ。本名、平岡公威(きみたけ)。1947(昭和22)年東大法学部を卒業後、大蔵省に勤務するも9ヶ月で退職、執筆生活に入る。1949年、最初の書き下ろし長編『仮面の告白』を刊行、作家としての地位を確立。主な著書に、1954年『潮騒』(新潮社文学賞)、1956年『金閣寺』(読売文学賞)、1965年『サド侯爵夫人』(芸術祭賞)等。1970年11月25日、『豊饒の海』第四巻「天人五衰」の最終回原稿を書き上げた後、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決。ミシマ文学は諸外国語に翻訳され、全世界で愛読される。

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