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獣の戯れ

三島由紀夫/著

497円(税込)

本の仕様

発売日:1966/07/12

読み仮名 ケモノノタワムレ
シリーズ名 新潮文庫
発行形態 文庫
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-105012-6
C-CODE 0193
整理番号 み-3-12
ジャンル 文芸作品
定価 497円

西洋陶器店でアルバイトをする大学生の幸二は、店主の逸平から、決して嫉妬しない妻の優子を嫉妬させるために情事に忙しい、と打ち明けられる。その時以来、優子に同情し、愛するようになった幸二は、夫婦間の失われた愛の復活を願って、優子を逸平の浮気の現場に連れて行くが……。〈死」への共感と信頼によって結びつけられた三人の男女が構築した〈愛(エロス)〉の共同体。

どういう本?

タイトロジー
(タイトルを読む)
 草門家はあんたの中のからっぽな洞穴を中心にして廻りはじめた。座敷のまんなかに深い空井戸が口をあけている家というものを想像してみるといい。空っぽな穴。世界を呑み込んでしまうほど大きな穴。あんたはそれを大事に護り、そればかりか、穴のまわりに優子と俺をうまい具合に配置して、誰も考えつきそうもない新らしい『家庭』を作り出そうという気になった。空井戸を中心にしたすてきな理想的な家庭。あんたが俺の隣りへ寝室を移したときに、『家庭』はいよいよ完成に近づきだしていたわけだ。やがて三つの空っぽな穴、三つの空井戸が出来上り、それらが傍もうらやむ仲の良い幸福な家庭を築き上げる。それには俺も誘惑を感じる。すんでのところで手を貸したくなったりもする。やろうと思えば事は簡単だからだ。俺たちが苦悩を捨て、自分たちの中にもあんたと同じ寸法の穴をうがち、あんたの見ている前で、俺と優子が、何の煩らいもなく、獣の戯れみたいに一緒に寝ればそれですむんだから。あんたの見ている前で、快楽の呻きをあげ、のたうちまわり、あげくのはては鼾をかいて眠ってしまえばいいのだから。
 しかし、俺にはそれはできない。優子もできない。わかるか? あんたの思う壺にはまって、幸福な獣になるのが怖いから、俺たちには決してできない。しかも、いやらしいことに、あんたはそれを知っているんだ。(本書170〜171ページ)

著者プロフィール

三島由紀夫 ミシマ・ユキオ

(1925-1970)東京生れ。本名、平岡公威(きみたけ)。1947(昭和22)年東大法学部を卒業後、大蔵省に勤務するも9ヶ月で退職、執筆生活に入る。1949年、最初の書き下ろし長編『仮面の告白』を刊行、作家としての地位を確立。主な著書に、1954年『潮騒』(新潮社文学賞)、1956年『金閣寺』(読売文学賞)、1965年『サド侯爵夫人』(芸術祭賞)等。1970年11月25日、『豊饒の海』第四巻「天人五衰」の最終回原稿を書き上げた後、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決。ミシマ文学は諸外国語に翻訳され、全世界で愛読される。

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