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編笠十兵衛〔下〕

池波正太郎/著

825円(税込)

発売日:1988/04/22

書誌情報

読み仮名 アミガサジュウベエ2
シリーズ名 新潮文庫
発行形態 文庫、電子書籍
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-115647-7
C-CODE 0193
整理番号 い-16-47
ジャンル 文芸作品、歴史・時代小説、文学賞受賞作家
定価 825円
電子書籍 価格 737円
電子書籍 配信開始日 2012/05/01

幕府の命を受け、諸大名監視の任にある月森十兵衛は、赤穂浪士の吉良邸討入りに加勢。公儀の歪みを正す熱血漢を描く忠臣蔵外伝。

コラム 新潮文庫で歩く日本の町

宮崎香蓮

 いま放送中の土曜時代劇「忠臣蔵の恋 四十八人目の忠臣」(NHK総合/毎週土曜午後六時十分~)で、浅野内匠頭の正室・阿久利の侍女つま役で出演しています。
 私たちの世代だと、あまり忠臣蔵について詳しくないかもしれません。私は堀部安兵衛が決闘した土地にある大学へ通っていることもあって、ぼんやりとした知識は持っていましたが、兄はピンと来ていませんでした。父は嬉しそうに電話してきて、「堀部安兵衛の子孫って、うち(島原市です)の近所に住んでるんだぞ」。
 事件の背景や時代色をもっと知るために手に取ったのが『編笠十兵衛』。綱吉が生類憐みの令を出した時代で、犬斬りが現れる……というところから始まり、やがて浅野内匠頭が吉良上野介に斬りかかって切腹、赤穂城あけ渡し、お家断絶、浅野家への同情、何を考えているかわからない大石内蔵助、と続くのですが、これを見ているのが編笠をかぶった浪人・月森十兵衛です。
 十兵衛は柳生十兵衛の血をひき、将軍家から〔御意簡牘〕という鑑札を与えられていて、これは幕府政道の過ちを正すという役目。彼が、綱吉が喧嘩両成敗をしなかった過ちを正すために、赤穂浪士の討入りをひそかに応援していく物語です。
 池波さんの小説ですからいつものことですが、面白い! 奥田孫太夫や堀部安兵衛が通った実在(ネットで調べました)の堀内道場に十兵衛も通わせて、虚実をない交ぜにしながら小説を膨らませていきます。
 語り口も「その理由も、この一連の物語を語りすすむうちには、おのずから解けてゆくことであろう」といった感じで、こんな余裕のある口調が読者を安心させ、くいくい読み進んでしまいます。
 そして十兵衛さまのズルイくらいの最強ぶりと、酒を嗜み、妻子を愛する格好良さには、池波さんの狙い通り、まんまと嵌りましたよ。十兵衛は、何十歳か年をとるとそのまま『剣客商売』の秋山小兵衛になりそう。
 小兵衛もおはるの肉体に溺れて後添いにしましたが、この十兵衛にも女性の体に我を忘れる出来事が起きます。大石内蔵助がどんな男か調べるため、江戸に現れた内蔵助を尾行すると、船宿〔熊野や〕で踊り子を相手にします。そこで十兵衛も、早速その踊り子・千弥を呼んで抱くのですが、あれこれ訊ねるうちに、「(おれにも、大石内蔵助という男……わからなくなってきた)」。
 しかし、しばらくすると、「いま、十兵衛は大石内蔵助という人物が、/(半分ほどは、のみこめたような……)/おもいがしていた。/あれから三度。/月森十兵衛ともあろうものが、踊り子・千弥を抱いている。/(ばかなことを……)/と、おもいつつも、こらえきれずに〔熊野や〕へ通ったのだ」という成り行きになります。
「尋常の人物ではない」内蔵助を伝えるのに、巧みで色っぽい手段だなあと感嘆しました。十兵衛の、スーパーヒーローにとどまらない、人間くささも出ています。
 ふいに、もう何年も前、ある作品で〈内蔵助の隠し子〉役のオーディションを受けたことを思い出しました。忠臣蔵と縁があるのかなあ。今度、久しぶりに堀部安兵衛の決闘跡を通って大学へ行ってみようと思います。


(みやざき・かれん 女優)
波 2016年11月号より

著者プロフィール

池波正太郎

イケナミ・ショウタロウ

(1923-1990)東京・浅草生れ。下谷・西町小学校を卒業後、茅場町の株式仲買店に勤める。戦後、東京都の職員となり、下谷区役所等に勤務。長谷川伸の門下に入り、新国劇の脚本・演出を担当。1960(昭和35)年、「錯乱」で直木賞受賞。「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」の3大シリーズをはじめとする膨大な作品群が絶大な人気を博しているなか、急性白血病で永眠。

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