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私的読食録

堀江敏幸/著 、角田光代/著

693円(税込)

発売日:2020/11/30

  • 文庫
  • 電子書籍あり

本をいちばん美味しく味わう秘密とは? 読むことでしか食べられない、秘蔵の書物たち。

たとえば、物語の中で少女が食べる「甘パン」。あるいは、殺し屋が飲む一杯の「珈琲」。小説、エッセイ、日記……と、作品に登場する様々な「食」を、二人の作家はあらゆる角度から食べ、味わい、読み尽くす。その言葉が届くとき、あなたの読書体験は、眼前の本の味は、まったく新しいものに変わる。読むことで味を知る、味を知ることで読みたくなる。すべての本好きに贈る、極上の散文集。

目次
1 向田邦子の、ふつうのごはん革命 向田邦子『父の詫び状』
2 うまい、まづいは別として、うまい 内田百閒『御馳走帖』
3 味を語る怪物――。執念か、と思うほどの凄絶な味覚描写 開高健『最後の晩餐』
4 今日はゆかりご飯 青山光二「妻恋いの宿」
5 台所が欲しい――。生きることが生み出す矛盾 檀一雄『火宅の人』
6 ショウガパンとジンジャーブレッド ランダル・ジャレル『はしれ! ショウガパンうさぎ』
7 気品に満ちて野蛮。真剣に、豪快に、食と向き合う女たち 江國香織「ねぎを刻む」
8 ミルクのはいったおまんじゅう 寺田寅彦「銀座アルプス」
9 食べることは、こんなにも愉快なこと! 鴨居羊子『カモイクッキング』
10 ストロベリー・クリーム・ソーダ ソーントン・ワイルダー『わが町』
11 読むことでしか味わえないもの バーネット『小公女』
12 夕闇の放物線 芥川龍之介「蜜柑」
13 なんでもない日々が、ささやかな波乱に満ちる 武田百合子『富士日記』
14 記憶の珠を結ぶ 高村光太郎「梅酒」
15 日常食を描き続けるという徹底 東海林さだお『タケノコの丸かじり』
16 食べ飽きるまで、いてもらいたい よしもとばなな『チエちゃんと私』
17 そこは学校であり、修業の場である 山口瞳『行きつけの店』
18 その洋食屋の名は 池波正太郎『チキンライスと旅の空』
19 食へのちいさな葛藤、すなわちダンディズム 吉行淳之介『ダンディな食卓』
20 空腹は満たさなければならない ローレンス・ブロック『殺し屋』
21 味の余韻というもの 伊集院静「クレープ」
22 「ス」のはいっていない言葉 長田弘『食卓一期一会』
23 五感のすべてで覚えた寿司の味 志賀直哉『小僧の神様』
24 卵焼きと金平牛蒡 太宰治「冬の花火」
25 なんだかまずくて、冷たそう 太宰治『斜陽』
26 餅なしの雑煮をつくる 沼野恭子『ロシア文学の食卓』
27 飲食という、生のきらめき ヘミングウェイ『武器よさらば』
28 チャイヴとベーグル的真理 スチュアート・カミンスキー『刑事エイブ・リーバーマン 裏切りの銃弾』
29 食べさせないで味わわせる レイモンド・カーヴァー「メヌード」
30 雨期こそ、ジャムの月 太田愛人『辺境の食卓』
31 食べものが連れていく、未知 アストリッド・リンドグレーン『長くつ下のピッピ』
32 何て惜しいことをするんです 尾崎翠「アップルパイの午後」
33 他家のにおいと、お呼ばれの味 田辺聖子『ジョゼと虎と魚たち』
34 墓のような味 リチャード・ブローティガン「コーヒー」
35 病むためでなく健やかであるために食べる 池澤夏樹『きみのためのバラ』
36 酒壜が立って待つ 若山牧水『若山牧水歌集』
37 不気味でグロテスクな日常のディナー
 パトリシア・ハイスミス「ドアの鍵が開いていて、いつもあなたを歓迎してくれる場所」
38 金魚の天ぷらいがいなら 与那原恵『わたぶんぶん わたしの「料理沖縄物語」』
39 食べるのでなく、見ることで 梶井基次郎『檸檬』
40 それは私が作ったスープかもしれない 吉田篤弘『それからはスープのことばかり考えて暮らした』
41 味覚の共有と、愛について ジュンパ・ラヒリ「地獄/天国」
42 青空のように冷たい笑み 片岡義男「ハンバーガーの土曜日」
43 運命の転換点としての正餐 イアン・マキューアン『初夜』
44 鍵を下さい 林芙美子「牛肉」
45 湯豆腐、おでん、ビール、熱燗 川上弘美『センセイの鞄』
46 句読点のない、いびつな蕎麦 夏目漱石『坊っちゃん』
47 キャベツの味噌汁からはじまる夢 藤子不二雄(A)『まんが道』
48 酒を呑まないで書くと心がふるえる 国木田独歩「酒中日記」
49 幸福は、ひどくシンプル 宮本輝『骸骨ビルの庭』
50 あぶらげの朝 松下竜一『豆腐屋の四季 ある青春の記録』
51 そうか、お好み焼きはいかがわしいからおいしいのか 田辺聖子「お好み焼き無情」
52 江戸前トンカツ千鳥足 坂口安吾「ニューフェイス」
53 無駄なことなどひとつもない ウーヴェ・ティム『カレーソーセージをめぐるレーナの物語』
54 鉱石の苦み 東海林さだお「ゴーヤの丸かじり」
55 日常から逃げおおせる トルーマン・カポーティ『ティファニーで朝食を』
56 これでいいのだ 庄野潤三「お裾分け」
57 ポテトサラダの熱情 平安寿子「きみよ、幸せに」
58 きょうは鶴鍋をやります 久生十蘭「鶴鍋」
59 どんな暴力シーンよりも震え上がる 梁石日『血と骨』
60 ピザはピザでしかなかった L・T・フォークス『ピザマンの事件簿 デリバリーは命がけ』
61 やっぱりあの、澄んだ酒が飲みたくなる 吉田健一「酒宴」
62 哺乳類としては原始的である 中村和恵『地上の飯 皿めぐり航海記』
63 人生ほどに個性的 タイ・トレッドウェル、ミッシェル・バーノン『死刑囚 最後の晩餐』
64 水餃子を食べると、あの日のことを思い出す 井上荒野「父の水餃子」
65 ひとりの味、二人の味 織田作之助『夫婦善哉』
66 鮨を食べるときに関係のないこと 岡本かの子「鮨」
67 食べる官能、作る解放 姫野カオルコ『喪失記』
68 黒い立派な葡萄酒 宮沢賢治「葡萄水」
69 他家の食卓という異様 田中小実昌「鮟鱇の足」
70 間違いのない乗り方 吉田健一「海坊主」
71 孤独がいちばん似合う飲みもの レイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ』
72 無くても済む物 内田百閒『阿房列車 内田百閒集成1』
73 うどんは、最後の純然たる幸福だった 村上春樹『海辺のカフカ』
74 鼠と炒飯 堀田善衞『堀田善衞 上海日記 滬上天下一九四五』
75 色あせない料理本 向田和子『向田邦子の手料理』
76 さあ、おまえさんは幸せになったんだよ エミール・ゾラ『居酒屋』
77 すき焼きじゃなきゃ、こうはいかなかったろうな 山田太一『異人たちとの夏』
78 人が山のように集まる味 高見順『如何なる星の下に』
79 滑りやすいスパゲッチをフォークに巻きつける 安岡章太郎「悪い仲間」
80 弁当半分の空白 山川方夫「煙突」
81 希望の味、絶望の味 開高健『ロマネ・コンティ・一九三五年 六つの短篇小説』
82 おきまりの甘藍汁 ゴーゴリ「外套」
83 酒飲みになったからではない(と思う) 中島らも『今夜、すべてのバーで』
84 偽者ばかりが世の中にいる 梅崎春生「蜆」
85 いのちをくるんでいる卵 川上未映子『乳と卵』
86 コーヒー牛乳のあとの餃子 片岡義男『洋食屋から歩いて5分』
87 私たちのスイーツ原点 中川李枝子(文)/大村百合子(絵)『ぐりとぐら』
88 特別献立もおなじだった 庄野英二『象とカレーライスの島』
89 肉なしで生きられるのか? 国木田独歩「牛肉と馬鈴薯」
90 あまづら入れて 清少納言『枕草子』
91 それは誠意のかたまりである 平松洋子『サンドウィッチは銀座で』
92 心の住処 久保田万太郎「三の酉」
93 一編ずつ、ゆっくりと飲む ロアルド・ダール「味」
94 折り詰めの行方 阿川弘之「鮨」
95 飲まずにいられない 太宰治『津軽』
96 テイクアウトの熱い正宗 谷崎潤一郎「蘆刈」
97 土曜日の昼、リコッタ・チーズ入りのラヴィオリを作る アントニオ・タブッキ「土曜日の午後」
98 絶叫中華のすすめ 田中英光「野狐」
99 この幸福に手出しはできまい スタインベック「朝めし」
100 竹串で打つ 車谷長吉『赤目四十八瀧心中未遂』
百回記念対談 「読んで食べる」ゆえの「何でもあり」
文庫化記念対談 本の中にしかない味がある

書誌情報

読み仮名 シテキドクショクロク
シリーズ名 新潮文庫
装幀 間芝勇輔/カバー装画、新潮社装幀室/デザイン
発行形態 文庫、電子書籍
判型 新潮文庫
頁数 352ページ
ISBN 978-4-10-129478-0
C-CODE 0195
整理番号 ほ-16-31
ジャンル 文学賞受賞作家、本・図書館、人文・思想・宗教
定価 693円
電子書籍 価格 693円
電子書籍 配信開始日 2020/11/30

著者プロフィール

堀江敏幸

ホリエ・トシユキ

1964(昭和39)年、岐阜県生れ。1999(平成11)年『おぱらばん』で三島由紀夫賞、2001年「熊の敷石」で芥川賞、2003年「スタンス・ドット」で川端康成文学賞、2004年同作収録の『雪沼とその周辺』で谷崎潤一郎賞、木山捷平文学賞、2006年『河岸忘日抄』、2010年『正弦曲線』で読売文学賞、2012年『なずな』で伊藤整文学賞、2016年『その姿の消し方』で野間文芸賞、ほか受賞多数。著書に、『郊外へ』『書かれる手』『いつか王子駅で』『めぐらし屋』『バン・マリーへの手紙』『アイロンと朝の詩人 回送電車III』『未見坂』『彼女のいる背表紙』『燃焼のための習作』『音の糸』『曇天記』ほか。

角田光代

カクタ・ミツヨ

1967年神奈川県生れ。1990年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。1996年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞、2003年『空中庭園』で婦人公論文芸賞、2005年『対岸の彼女』で直木賞、2006年「ロック母」で川端康成文学賞、2007年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞、2011年『ツリーハウス』で伊藤整文学賞、2012年『紙の月』で柴田錬三郎賞、『かなたの子』で泉鏡花文学賞、2014年『私のなかの彼女』で河合隼雄物語賞、2021年『源氏物語』(全3巻)訳で読売文学賞(研究・翻訳賞)を受賞。著書に『キッドナップ・ツアー』『くまちゃん』『笹の舟で海をわたる』『坂の途中の家』『タラント』他、エッセイなど多数。

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