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人・自然・こども――たくさん話しました。

虫眼とアニ眼

養老孟司/著 、宮崎駿/著

562円(税込)

本の仕様

発売日:2008/02/01

読み仮名 ムシメトアニメ
シリーズ名 新潮文庫
発行形態 文庫
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-134051-7
C-CODE 0195
整理番号 み-39-1
ジャンル 評論・文学研究、芸能・エンターテインメント
定価 562円

小さな虫の動きも逃さず捉えて感動できる「虫眼の人」養老孟司と、日本を代表する「アニメ(眼)の人」宮崎駿が、宮崎作品を通して自然と人間のことを考え、若者や子供への思いを語る。自分を好きになろう、人間を好きになろう、自然と生きるものすべてを好きになろうという前向きで感動的な言葉の数々は、時代に流されがちな私たちの胸に真摯に響く。カラーイラスト多数掲載。

著者プロフィール

養老孟司 ヨウロウ・タケシ

1937(昭和12)年、神奈川県鎌倉市生まれ。1962年東京大学医学部卒業後、解剖学教室に入る。1995年東京大学医学部教授を退官し、2017年11月現在東京大学名誉教授。著書に『からだの見方』『形を読む』『唯脳論』『バカの壁』『養老孟司の大言論I〜III』など多数。

宮崎駿 ミヤザキ・ハヤオ

1941(昭和16)年東京都生れ。学習院大学卒業後、東映動画(現・東映アニメーション)入社。日本アニメーションなどを経て、スタジオジブリ設立に参加。作品に『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』『魔女の宅急便』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』など。

書評

巨匠と呼ばれる二人の少年

加藤登紀子

 尽きることがない! 果てることがない!
 巨匠と呼ばれる二人の少年の、とめどなく続く対話の森。
 信じがたいほどの博識。笑ってしまうほどのディテールへのこだわり。どこまでも入りこんでいく好奇心……。
 そばで私も話を聞いていたかったなあ、と思いながら、読ませていただきました。
 宮崎駿さんとは、一九九二年『紅の豚』の時からのご縁でジブリにも何度かお訪ねしています。
 アトリエの一角に、『馬鹿っ』という私の書が、立派な額になって飾られていて、ちょっとドッキリ。
『紅の豚』で、危うく死にかけたポルコ・ロッソに電話口からしかりつけるジーナのこのセリフ、画面を見ながらセリフを録音するアフレコの時、なかなかOKが出なくて何十回もやり直したのでした。
「男ってものは、全く本当にどうしようもない馬鹿なんで、そのどうしようもなさに対しての何十年、何百年もつもりつもった思いをこめて、思いっきり言ってやって下さい」
 ほかのセリフはほとんどファーストテイクOKだったのに、このセリフだけは、宮崎さんのこだわりがすごかった。
 この本のテーマになっている『もののけ姫』でも『千と千尋の神隠し』でも描きこまれている背景や登場人物の顔や建物のディテールへのこだわりが半端じゃないことと、結局、「女の子が正しい」という共通項があるようだ。
「女は、男をふるいたたせる魅力を持ち、いざとなったら男を助けに行くくらい強い」
「それじゃ、宮崎さん、女に頼りすぎじゃないの?」というのが私の感想でもあるけれど、去年はじめてお逢いして対談させていただいた養老孟司さんもどうも同じ持論らしい。
「女の子はねえ、全く心配ないんです。男の子が心配です」
 対談の時、しきりにおっしゃってた。多分、養老さんにとって、女は少し「虫」に近い生きもので、宮崎さんにとっては「もののけ」に所属しているのでしょう。
 免疫学で有名な多田富雄さんの名言に、
「女は実体で、男は現象だ」という言葉がある。
 サルトルは著書『存在と無』の中で、
「女は即自存在で男は対自存在」だと書いていて、男と女の違いがよくわからなかった学生時代の私は、大いに悩んだことがあった。女体験をたっぷりさせてもらった今は、深くうなずける。
 お二人の対談、そして数ある作品から伝わってくること。
「世界は『得体の知れないモノ』で溢れている。そのことが面白くてたまらない」(養老)。そのディテールをひたすら無視し、面白くなくしてしまっているのが今の時代。
「つまりそれは虫でしょ」とか「大切なのは愛ですよね」とか、そんなに簡単に言っちゃいけないんだ、と。
 まっすぐな線ばかりで街をつくり、実体のない言葉で語り、過剰なまでに人間を気にしすぎ、どんどんと「人間嫌い」になってしまう今の時代。
「現代人の身体感覚がこんなにも希薄になっていいのか」と人体の標本を展覧会に出した養老さん。
「(今の子供たちは)信じられないくらいに、生きていく武装に欠けている。(中略)世界のことを予見する知恵とか、当座の困難を手先で切り抜ける方法とか」(宮崎)
 人間を脳ミソのお化けにしないために、自然のディテールと向き合って、ドキドキしたり、ジタバタしたり、オロオロしたり、降参したり、混乱しながら行けばいいんですよね。
「先はどうなるかわからない、それこそが生きるってことですよね。(中略)そんなに先のことが見えないと生きられないのか問いたいですね」(宮崎)
「『お先まっ暗』でいいじゃないですか。だからこの世は面白いんですよ」(養老)
 世の中が高度になればなるほど「男」は単細胞化し、「何があっても大丈夫」なはずの「女」もどんどん「もののけ」から遠ざかり、男と同じ脳ミソのお化けになりつつある。
 気を付けなくっちゃね!!

(かとう・ときこ 歌手)
波 2008年2月号より

目次

養老さんと話して、ぼくが思ったこと  宮崎駿
『もののけ姫』の向こうに見えるもの
対談1 1997
みんな「人間嫌い」になっている/あまった「感性」が人間に向いた/生きていくための武装に欠けている/日本は自然に助けられてきた/お先真っ暗だから面白い
対談2 1998
理屈じゃなしに通じる宮崎作品/固定しているものも動いているという意味/ジタバタしているときに立ち込めるエネルギーの匂い/戦争に負けて抵抗の少ないほうへ行った/濡れ場があるとかないとかは最低のこと/混ざって生きていくしか対応しようがない/ブルーカラーがどこかで働いている/あの子を楽しませたい
『千と千尋の神隠し』をめぐって
対談3 2001
「懐かしさ」という感覚をめぐって/日本の建物を描く/言葉と情報/アニメーションはリアリズム/子どもたちの心によりそった映画を作りたい/電車のシーンを描けてよかった
見えない時代を生き抜く――宮崎アニメ私論 養老孟司
文庫版あとがき 宮崎駿

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